Klout スコアがグレードアップ。今後の展開も考えてみた
先月,web担当者Forumで「Kloutスコア: あなたのソーシャルメディア上の影響力がわかる決定版指標」を寄稿させて頂きました。その後,新たな展開があったので,アップデートします。
■Kloutとは何か?
Kloutスコアをご存じない方のために,簡単に紹介します。(詳細は,前出の記事を参照ください)
Kloutスコアとは,ソーシャルメディアアカウントのインフルエンス力(ネット上の影響力)をKlout社(米国)独自の算出手法により1-100の値に定量化したものです。例えば、インフルエンス力の高い有名人アカウントは高いスコアになりますし,発信ツイートが少なかったり,フォロワーが少なかった場合には.インフルエンス力が少ないと評価され,低いスコアになります。例えば孫正義さん(@masason)は85,ダルビッシュ投手(@faridyu)は75です。放射線のモニタリングデータを毎日10件程度更新しているフォロワー5万人の文科省(@mextjapan)は63。5/7以降更新をしていないフォロワー数370人の経済産業省の英語版アカウント(@openmeti_e)は24です。
■機能増強 その1 Linkedin対応
Kloutスコアは,もともとTwitterアカウントのみをもとに影響力を算出していましたが,昨年Facebookアカウントも連携させることも可能になりました。更にこの度,Linkedinアカウントが対象に加わりました。
図は,私のKloutスコアが接続アカウントの種類によってどのように変化しているのかを纏めた図です。
Twitterアカウント(@Koji_Fukuda)だけのスコアは47。Facebookアカウント(koji.fukuda)を加えると52になります。Linkedinアカウントを追加してもスコア自体は変化ありませんでした。KloutスコアはNetwork Influence(ネットワークの潜在能力),Amplification Probability(コンテンツのバイラル実績),True Reach(ネットワークの実効規模)という3つの評価指標より求められます。私のケースで接続による各評価指標の変化をみてみましょう。Facebookアカウントを接続するとNetwork Influence(ネットワークの潜在能力)が4ポイント,Amplification Probability(コンテンツのバイラル実績)が1ポイント上昇しています。True Reach(ネットワークの実効規模)に変化はなく,私のfacebookとLinkedinのネットワークの実効規模は,Twitterのそれと比べて無視できるレベルであるということでしょうか?ちなみに、私のFacebookアカウントの友人数は275人,Twitterのフォロワー数は2560人程度です。
Facebookを加算したスコア/Twitterのみのスコア「5/47」と
Facebookの友人数/Twitterのフォロワー数「275/2560」
の比率が近いので,友人数がそのままスコアい反映されている結果となっています。
私のLinkedinのアカウントのconnections(友人数に相当)は20名程度ですので,Linedinを接続した影響は程んどないと踏んでいましたが,予想通り,スコアに変化はみられませんでした。全世界で1億人の利用者を擁するLinkedinですが,国内ではこれからです。日本の提携企業デジタルガレージが年内に日本語版を立ち上げる発表をされたのも,先月のことです。
ちなみに,プロフィールの設定画面にはfoursquareのアカウントとの接続設定を想定したアイコンも存在します。今月になってユーザー数1,000万人を達成したFoursquareですが,億単位の利用者を競うTwitter,Facebook,Linkedinと比べると,インフルエンス力を1つの数値に集約するKloutスコアで同様に評価する意味はあまりないように思います。
■機能増強 その2 +K
+Kという指標を新たに設けています。昨日を簡単に説明します。
・アカウント別に「topics」というを影響力のあるキーワードを10件掲載されます。(Klout側が独自のアルゴリズムで抽出してきます。)
図はLadyGagaのアカウントの例ですが,「music」「fashion」「celebrities」「entertainment」「lady gaga」「unicorns」「itunes」など確かに馴染みの有りそうなキーワードが並びます。
・ユーザは,自分が影響を受けた「topics」に投票します。投票は1日あたり5票。図は私が「music」「fashion」に投票したところです。
他の人に票を振り替えたいときは,これまでの投票をキャンセルすることも可能です。
・ユーザは,同じ相手の同じ「topics」に投票するのは1週間に1回だけです。
Kloutのオフィシャルブログによると,インフルエンス力は
「人々に行動を起こさせる可能性であり,一過性のものである」
という考えから,+Kを準備したとあります。尚、Kloutが強制的に提供する「topics」は,本人が削除する(読者が投票できないように非表示にする)機能も用意しています。
これは,本人が自らのアカウントで影響を及ぼしたくない「topics」を指定できることを意味します。つまり,その行為により,本人がネガティブととらえている「topics」もKloutは知ることが出来るのです。
ちなみに,現状+KはKloutスコアには影響を与えることはありません。
■機能増強 その3 involverとの連携
6/22にFacebookページ構築支援ツールのinvolverとKloutの連携が始まりました。
利用した企業(Facebookページを運営する企業)は,インフルエンス力の高い人に限定してノベリティなど、特別なサービスを提供できるキャンペーンが可能になります。早速インフルエンス・ゲート 或いはKloutゲートとも言われ始めています。実施方法によっては,排他的で批判を集める手法になりそうです。しかし,インフルエンス力の高い人だけが参加するfacebookページであれば,効率的なプロモーション実施が可能になるかもしれません。リタラシーの高く、ネット上の影響力に関心が高いユーザならウオールを開放しても「荒れる」リスクが少ないかもしれません。involver側にはアプリの幅を拡げるメリットは少なからずありそうです。
Kloutにとっても,facebook内での認知向上,Kloutスコアを高めたいというインセンティブを持ってもらえるのは歓迎すべきことでしょう。
採用第一号は,audiのFacebookページです。Kloutアイコンが表示されているタブを選択し,Kloutスコアを計算すれば,かっこいいAudi Le Mansの壁紙がダウンロードで出来ます。Kloutスコアによるゲートは設定されていませんので,誰でも参加できます。
■これらの機能増強から見えてくる今後の展開
Kloutはこれまでも,継続的に機能拡充を進めてきています。今回も上記3件以外にも,操作性を向上させる機能改修・デザイン変更が見受けられます。この原稿を書いている途中にもグローバルタブに「Friends」という項目が追加されました。アカウントに紐づいているフォロワー(Twitter)や友人(Facebook)のKloutスコアを一覧で参照できる機能です(下図)。図の中でtwitterアカウントとの連携を設定している人は65ポイントになっていますが,残りの人は10ポイント以下です。つまり,この結果を見る限り,Facebook単体でKloutスコアを求めた場合には最大10ポイントになることが分かります。
今回の追加した機能は,次のような今後のKloutスコアの方向性を示唆しているように思います。
・Twitter基盤からの開放
Kloutスコアでは,Twitterアカウントが評価の基盤に採用されています。プロフィール画面で,現状FacebookとLinkedinのアカウントはリンクを外すことが可能ですが,Twitterアカウントだけはできません。しかし,米国においてTwitterを利用している人は8%との調査結果もあります。国内においても利用者の頭打ち・減少傾向にある模様です。Facebookの躍進を考えると,Twitterをネット上の影響力を評価する基盤とすることに,不自然さが高まっているように思われます。それぞれのソーシャルメディア・アカウントの関係性を見直し始めていると考えられます。そのためには,facebookにおける認知向上と,Linkedin対応は,不可欠な要件でしょう。
・評価数値算定にユーザの直接評価を導入
現在の指標は,35種類を越えるパラメーターから計算されていますが,基本的にアカウントの属性(フォロワー数,リスト数等)とソーシャルメディアでの発言とそれに対する反応(リツイート数,いいね数等)をもとにしています。また,Twitterのようにプロフィールやフォロワー数など評価指標やツイート自体が基本公開されているサービスと違い,FacebookやLinkedinではログインせずに参照できる個人情報は,大きく制限されます。これらサービスの影響力の測定精度を高めるには,ユーザ当人がログインした状態で得られる情報が不可欠です。従来の計算式を大きく見直す必要があると思われます。見直しの一環として+Kで志向している「ユーザー自身に関心のあるアカウントと話題をヒモ付けて指定してもらう」アイディアは,Kloutのインフルエンス力の考え方に沿うものであるため,Kloutスコアの評価指標に加えることになると思われます。
そうなった場合,より多くの「+K」を収集するためにソーシャルプラグイン展開も考えられますね。