「従業員」という発明とその寿命
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ちょっと長い引用を。
実をいうと、「エンプロイー(従業員)」という概念は近代になって生み出されたもので、時代を超越した社会慣行ではない。強い意志を持つ人間を従順な従業員に変えるために、二〇世紀初頭にどれほど大規模な努力がなされ、それがどれほど成功したかを見ると、マルクス主義者でなくてもぞっとさせられる。近代工業化社会の職場が求めるものを満たすためには、人間の習慣や価値観を徹底的につくり変える必要があった。生産物ではなく時間を売ること、仕事のペースを時計に合わせること、厳密に定められた間隔で食事をし、睡眠をとること、同じ単純作業を一日中際限なく繰り返すこと―― これらのどれ一つとして人間の自然な本能ではなかった(もちろん、今もそうではない)。したがって、「従業員」という概念が――また、近代経営管理の教義の他のどの概念であれ――永遠の真実という揺るぎないものに根ざしていると思い込むのは危険である。(p163)
― ゲイリー ハメル 『経営の未来』 日本経済新聞出版社 2008年
僕なんか気が弱いものだから、こういう文章を読んで皆がハッとしてしまうと、社会秩序が崩れてしまうのではないかと心配になってしまいます。自分はひとりカンパニーでやっているくせにどこかずるいなあと、そこにまたハッとしたり。
従業員も管理職もない、あるいは誰もが従業員であり管理職である組織とは、世の中とは、どんなものか。この本にある事例などを参考にあれこれ考えるのは楽しいことです。
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