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日々の「ハッ、そうなのか!」を書き留める職遊渾然blog

ワシも考えた:「ライブドアのデザインがYahoo!と似ている件について」

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新野さんの「ライブドアのデザインがYahoo!と似ている件について」を読みました。
ライブドアのWebサイトのデザインの件については詳しくないのですが、経営戦略上「真似」は古くて新しい話題で考えどころも多いので、「真似」というトピックでメモしておこうと思います。

ぜ真似されるとイヤなのか

「先行投資者の利益が損ねられるから」と説明されるのが一般的なようです。
ざっくり売上とコストに分けて考えると、こんな感じでしょうか。

  • コストをかけて開発した(デザインや機能の)優位性を、後発がコスト無しで獲得するのは先行者にとって損
  • その優位性によって期待していた売上の増加分を、真似した後発がかすめ取っていくのは先行者にとって損

ところでビジネスの世界では「模倣戦略」というのは普通の戦略です。
模倣戦略を採る側の論理はこんな感じでしょうか。

  • 先行者が守りたいと思うものは法的に守っておくべき。ゲームのルールに則っている限りにおいては、模倣は戦略オプションの一つである
  • 模倣者による市場拡大効果を考えれば、模倣者が現れてくれた方がメリットが大きい
  • 模倣に厳しい規制をかけるよりも、互いに模倣(共有)し合うことで循環的な成長を促した方が業界、ひいては経済の発展に寄与する

模倣と共有とは同じではないのでちょっと乱暴なまとめですが…。

似は防げない

個人的には、
「真似を防ぐことに労力を費やすべきではない」と考えます。
なぜなら、法的に保護可能なものを別にすれば、
「長期的には、真似が可能なもの(で顧客価値のあるもの)はすべて真似される」
と考えるからです。
(知財戦略のようなものを否定しているわけではありません、念のため)

では何に労力を費やすべきか。それは、
自社が顧客に提供できる価値をストレートに追求していくこと。
うまくいけば、それが結果として
真似したくなる、けど完全には真似できない
競争優位をもたらしてくれます。

10年前、楽天市場のようなショッピングサイトを構想する起業家は
とても多かったし、実際に試した個人や組織も数多くありました。
互いに互いを真似し合いつつ競争してきました。
しかし簡単に真似できるのはサイトの表面だけです。
「固有の価値」とはオペレーションやマーケティングや顧客サービス、
財務面の手当などをきちんとやり遂げる実行力にあり、
事業として成功した企業はごくわずかです。

「ITエンジニア向けに技術解説を蓄積していく」という価値を
ストレートに追求してきた、Randomwalk新野さんの@ITも、
「真似できそうでできない」価値を積み上げてきました。
「フリーペーパーのWeb版を作ればいいんだろう」と
口で言うのは簡単ですが、
それでメシが食えている企業がいったい何社あるか。
(↑実際の@ITの事業ドメインはもっと広く深いです、念のため)

似されるのがイヤな本当の理由

真似されるのがイヤな本当の理由は、
自社(自分)の固有性が侵されるから」だと考えます。

デザインでいえば、真似されてイヤなのは、「お金をかけたから」だけではなく、
本質的には「そのデザインで表現しようとした自社(自分)の
アイデンティティが侵されるから」だということです。

たとえばA社のショッピングサイトのデザインをB社が真似したとしても、
それはデザインだけの話。
しかしB社が、見た目を似せることにより、
A社が築いて きた市場からの信頼に乗っかろうというのは、これは許せません。
なぜならA社が信頼を勝ち得た原因は
(サービスの品質とか顧客に対する姿勢などの)A社固 有の強みであり、
顧客のショッピング体験としてみれば、
A社で買うかB社で買うかには大きな違いがある(はずだ)からです。

A社が、自社の強みに自信があれば、長期的には心配ないはずです。
とはいえ、B社が(実際にはできないのに)A社並みのサービス品質をうたい、
顧客を集め、結局失望させてしまったとしたらどうでしょう。
上で書いたような、
「模倣によって先行者にもメリットがある」というような論理は
ぶっとんでしまいます。

一般的には、特定の企業がいつも一方的に先行者ということはなく、
お互いに先行したり模倣したりを繰り返して競争しています。
ということは、模倣戦略を仕掛けるときには、
単に先行者に迷惑をかける結果に終わらせないだけの
節度や真剣さを持つべき
だと考えます。

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