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【改訂版】朝ドラ"あまちゃん"の天野アキと水口琢磨の物語は、最終回までにどうなったのか?

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映画『探偵物語』の続きは実現したのか?

この記事は2013年8月末に書いた「朝ドラ「あまちゃん」東京編は、映画『探偵物語』のオマージュなのか?論 (追加あり)」の補足です。9月からの震災編で、天野アキとマネージャー・水口の関係はどうなったのかを確認しました。
※最終回に関する部分の一部と、紅白歌合戦内で放送された第157回の情報を加筆しました(記・2015年10月2日)。

参考:宮藤 官九郎『連続テレビ小説 あまちゃん Part1 (NHKドラマ・ガイド)

松田龍平さんが泣く場面

天野アキは東日本大震災から三ヶ月後、北三陸へ戻ることを決意します。水口琢磨は天野アキへの"恋心"があるらしきことをナレーションが明かしました。第135回です。

春子「アキ、あの子・・・岩手に帰りたいのよ」

春子N「社長の一言が・・・水口くんの背中に重くのしかかりました」

水口「・・・・・・」

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.526より引用)

この後、テレビ局の会議室で水口琢磨の心の内が春子のナレーションで明かされます。天野アキの取材中のセリフを飛ばして、水口に関する部分だけ一部を抜き出します。

春子N「『なぜ気づいてあげられなかったんだ・・・。』水口くんは自分を責めました。『タレントが今、何を考え何を欲しているのか、先回りして考えるのがマネージャーの仕事なのに・・・何やってるんだ俺はっ! 」

春子N「『違う。俺は目を背けていたんだ』」

春子N「『アキちゃんが岩手に帰ると言い出したら、今までの苦労が全て水の泡・・・だから気づかないふりをしていたんだ』」

春子N「水口、お前はどうしたいんだ」

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.526~527より引用)

アキの雑誌インタビュー中に、脳内で一人問答をしている水口です。しかしアキちゃんがインタビューの回答に詰まると、「笑って、アキちゃん笑顔」とマネージャーとしての仕事はきっちりしています。

無頼寿司の外で、水口は種市と会話をします。

水口「アキちゃんと、どうなったって聞いてんだよ、それぐらいわかれよ」

種市「どうって・・・一回キスをしただけです」

水口「(激怒)そんなこと聞いてない! 自慢すんじゃねーよ! つーか、自慢すんじゃねーよ」

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.528より引用)

水口は内心で、天野アキに恋愛感情を抱いていたことが伝わります。熊谷美寿々の時のような大人の恋愛ではなく、大人の男性が少女をいとおしく思う気持ちなのかもしれません。「アキちゃんを東京に留めたい」と思いつつ、GMT5との歌番組での共演をお膳立てします。

別れを決意した水口は番組収録中に涙ぐみました。荒巻太一の心配りによって、水口琢磨はスタジオの外に出て一人でむせび泣きます。かなり長めに松田龍平さんが泣いていた場面が流れました。

脚本だとかなりシンプルな描写で驚きました。

太巻「水口、泣くなら外で泣いてこい」

水口「はい」

堪らずスタジオを出る水口。

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.532より引用)

無言で泣く松田龍平さんの表情や存在感だけで、あれほど長い間が持つとは・・・。この場面は映画『探偵物語』のラストで松田優作さんがアメリカに発った薬師丸さんとの別れの後、空港で一人無言で泣いていた場面を連想させます。2つの場面には関係があると考えられます。

参考:探偵物語 ブルーレイ [Blu-ray]

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天野アキは北三陸へ戻り、水口は・・・・・・

天野アキは地元のためにできることをしようと芸能界の仕事はやめ、海女の活動を再開しました。水口は半年間、鈴鹿ひろ美のマネージャーをしましたが、「仕事が面白く無い」と天野春子 社長に空の辞表を提出し、北三陸で「潮騒のメモリーズ」復活をしたいことを打ち明けました。

水口は"スリーJプロダクション"の北三陸市社長という名目で東北に旅立ち、天野アキと北三陸で再会しました。小田勉とともに琥珀を掘りながら、今後、潮騒のメモリーズの活動をサポートしていくだろうことがうかがわれました。

無事、水口琢磨はヒロインとの別れの後、赤川次郎『探偵物語』(映画の原作)と同様、ヒロインを追って北三陸へ。2人は再会することができました。

参考:赤川 次郎『探偵物語―赤川次郎ベストセレクション〈6〉 (角川文庫)

9/27(金)の回で天野春子、鈴鹿ひろ美、安部小百合の披露宴の際、水口は一人で琥珀を掘ります。その事に気がついた天野アキは、水口琢磨のことを「いても気づかないのに、いないと気づくもんだな」と足立ユイに向かって発言していました。

語られない、その後

水口琢磨は最終回で恐竜の骨を発見するなど、個人としては北三陸でもマイペースに活動。

吉田「あー昨日、水口くんが拾ったヤヅだ」

水口「箸置きにちょうどいいんですよねー」

功「すごいじゃない、これ3大名物に登録しなきゃ、北鉄、北の海女、北の恐竜」

(中略)

勉「あの、僕が見つけたって事に、ならないよね」

水口「いやーそれは(笑)証人が居るし」

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.700より引用)

天野アキも足立ユイと潮騒のメモリーズを再結成。2人でトンネルを走り、海に向かって走り、物語は終わります。

アキ「んだ、明日も明後日も来年もある・・・今はここまでだけど、来年になったら、こっから先にもいけるんだ」

(中略)

二人、トンネルの置くを見つめる。

ユイ「行ってみよっか」

アキ「じぇじぇ!?」

ユイ「行こう、アキちゃん」

アキ「・・・・・・

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.702より引用)

この後、アキとユイが海に飛び込もうとジャンプしたのに、海には飛び込まないで「あまちゃん」最終話が終了しました。どこかの記事でNHKのプロデューサーさんがおっしゃっていたのですが、単なるハッピーエンドにならないように海に飛び込ませない演出にしたそうです。

曖昧な記憶ですが、

  • 海に飛び込むと視聴者はハッピーエンドだと思って見終わる。
  • しかし二人の未来がハッピーだとは限らない。
  • ユイが地元に縛られたまま、地元で悩むかもしれない。

など、アンハッピーな未来になる可能性もあり得る。そこで、アキとユイの未来がどちらにもうけとれるような終り方にした、とおっしゃっていた記憶でした。

潮騒のメモリーズが2人でトンネルの出口に向かって走るという演出は、「一人では超えられないところも2人なら超えられる」と解釈可能です。しかし、2人でも東京など北三陸よりも外へは出られないという解釈も可能です。

主人公が変わらず、周りが成長する物語だった『あまちゃん』。あまちゃんに影響を与えている赤川次郎『探偵物語』は幸福感あふれる2人の再会でした。主人公とヒロインがその後どうなったのかは読者の想像に委ねられています。

おわりに

北三陸駅・ホーム

春子N「『ついにこの日が来た! 』水口くんは興奮を隠しきれませんでした。潮騒のメモリーズの復活、明日の一面トップは貰った! 」

手をつないで乗り込むアキとユイ。

水口「しゅっぱあつ・・・」

(『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部』第156回 p.701より引用)

潮騒のメモリーズ復活にもイキイキとした笑顔を見せました。天野アキと水口琢磨の関係がこれからどうなるのか。宮藤さんが続編を描くことがあるのか、それとも読者の想像に委ねられたままなのか。

おそらくですが、天野アキの一番好きな人は足立ユイ。天野アキの恋愛対象は種市先輩のみ。ただし、今後、天野アキがどうなるのかは明かされません。

水口琢磨が天野アキに抱いた恋愛感情は、果たしてアイドルを育てたいという願いによって昇華されたのか。それとも天野アキに翻弄されたミズタクに意外な展開が起ったのか。想像は尽きません。

追記(2015年10月2日)

あまちゃんが放送された年の紅白歌合戦のスペシャルコーナーで、最終話・第156回の続きとして第157回目が放送されました。残念ながら第157回目にミズタク、太巻さん、美寿々さんは登場せず。

紅白歌合戦に潮騒のメモリーズやGMT5などが出演する設定だったので、ドラマには映らないけど彼らが袖にいたと思うと胸が熱くなりました。

「あまちゃん」最終話(第156回目)の後、ユイは地元にいるままなのか、それとも東京に出て歌う夢が叶うのかなど、視聴者が想像していた部分の一部がドラマ化されていました。第157回目については、個人ブログで紹介しました。もしよろしかったら、こちらもご参照くださいませ。

>>「【改訂版】朝ドラ「あまちゃん」私考 最終回を迎えて」に続く。

関連記事

  1. 朝ドラ「あまちゃん」私考(追加あり)(ITmedia)
  2. 朝ドラ「あまちゃん」東京編は、映画『探偵物語』のオマージュなのか?(追加あり)(ITmedia)
  3. 朝ドラ「あまちゃん」は壮大な"メタフィクション"である?論(ITmedia)
  4. 朝ドラ"あまちゃん"の天野アキと水口琢磨の物語は、最終回までにどうなったのか?(ITmedia)

参考文献

宮藤 官九郎『NHK連続テレビ小説「あまちゃん」完全シナリオ集 第2部


編集履歴:2013.12.09 21:38 「朝ドラ「あまちゃん」東京編は、映画『探偵物語』のオマージュなのか?(追加あり)」の「映画『探偵物語』の続きは実現したのか?」の部分を別記事として独立させました。2013.12.10 0:11 冒頭部分の「補足します」を「確認しました」に改めました。同日0:24 「語られないその後」「おわりに」の部分を追加しました。2014年1月29日23:22に内容を非表示にしました。2014.5.1 21:09 再公開しました。2015.10.02 22:15 シナリオ集からの引用を追加。「第135回です。」と、アキの雑誌インタビュー中に・・・」から「少女をいとおしく思う気持ちなのかもしれません。」、「脚本だとかなりシンプルな・・・」から「あれほど長い間が持つとは・・・。この場面は」までを追加。「水口琢磨が天野アキに抱いた恋愛感情は・・・」から追記までと、「アキとユイが海に飛び込もうとジャンプしたのに・・・」から「とおっしゃっていた記憶でした。」までを加筆。題名に【改訂版】を追加。2015.10.03 0:27 「種市先輩のみ」のあとの、「だったようです」を削除。同日0:35 「この後、」を追加。同日0:57 「あまちゃんに影響を与えている」「読者の」を追加。「が、」を削除。

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