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仕事に絡んだ四方山話などを徒然にと思いつつも、読んで興味深かった本ネタが多くなりそうでもあります。

【ブックトーク】サッカーのある風景 / 『フットボールの犬』

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 先月(2013年6月)は、サッカー日本代表の「ワールドカップ最終予選突破」、「コンフェデレーション杯での善戦(特にイタリア戦)」などの心躍るトピックが多く、一年後のブラジル・ワールドカップへの楽しみが積み重なった一ヶ月でした。といいつつも、スタジアムには1-2度足を運んだことはあるものの、大概は代表選、たまに衛星でユーロを見るくらいという、本当にお好きな方々からは「にわか」とも呼ばれてしまうような感じなのですが(汗

 そんな中で、ふと「サッカーのある日常」なんてフレーズを思い出させてくれたのが、こちらです。

 『フットボールの犬』(宇都宮徹壱/幻冬舎文庫)

 ここには、著者・宇都宮さんのサッカーすべてへの「愛」がつまっています。すべてとは、、プレイだけではなく、選手だけではなく、サッカーをとりまく、文字通りの「すべて」。

 どんな場所であっても、サッカーを求めて躊躇なく踏み込んでいくその在り様に、ただ、震えました。

 始まりは1999年のスコットランド、そこから2009年のロシアまでの10年、ひたすら日常と結びついたサッカーの風景を探して欧州を流離った記録となります。ユーゴスラヴィア、イタリア、オランダ、フェロー諸島、D.D.R、マルタ、ロシアなど、、その場所も規模も、そして危険をもいとわずに。

 ちなみに、題名にもある「犬」とは、地を這う視線で「サッカー(フットボール)」の匂いがする場所を求める、との想いを投影されているとのことです。それだけに、単純にフィールド内でのプレーに限定することなく、政治的な背景や金銭、宗教等々、いろいろと生臭く感じる部分にまで踏み込んで描かれていることもしばしば。受取る人によっては「雑音」と感じてしまう部分もあると思います。

 久々の再読でしたが、以前と同様に興味深く読めました。それは、喜びも、悲しみも、愛しさも、、人の営みの全てがこめられた、「人間」と結びついたサッカーを感じることができるからだと、思います。なんとなく、日本での夏の高校野球のように、文化として、そして生活の一部として、欧州ではサッカーが溶け込んでいるのかなぁ、、とも。

 そして、今でも変わらずに染み入ってくるものがあるのは、自分自身が「岐路」を見つめようとしているからかも知れません。文章だけではなく、折々で添えられた印象的な写真も相まってか、総体として忘れられない色合いを与えてくれる、そんな一冊です。


【あわせて読んでみたい、かもな一冊。】
 『SHUNSUKE』(アルフレード・ペドゥッラ/朝日文庫)
 『NAKATA』(ステーファノ・ボルドリーニ/朝日文庫)
 『龍時』(野沢尚/文春文庫)
 『ゲームのルール』(ピエルルイジ・コッリーナ/NHK出版)
 『日本代表の冒険』(宇都宮徹壱/光文社新書)


【補足】
 ちなみにこちら、普段お世話になっている「東京朝活読書会(エビカツ読書会)」にて、【テーマ:犬にまつわる本】の回で紹介しました。一口に「犬」と言っても、みなさん様々なアプローチをお持ちで、楽しく拝聴&刺激をいただきました。

 ご興味を持たれましたら、こちらから覗いてみてください~

  >>> エビカツ!~東京朝活読書会の本棚(ブクログ)


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