機械がおもてなしの心を手にする日は来るのか: 書評 - ソーシャルマシン
あらゆる機器がソーシャルネットワークにアクセスする世界が実現されつつある。そのときに、どのようなサービスを提供すれば事業者として生き残れるか。そんな視点でIoTを解説しているのが今回紹介する「ソーシャルマシン」。
先日、訳者である小林啓倫 様より本書をいただきました。この場を借りてお礼を申し上げます。こういうとき、オルタナブロガーで良かったと感じます。ものにつられてごめんなさい。
あらゆるものがインターネットに接続し、利用者の日々の行動を記録、分析する。分析したデータをもとに情報を、サービスを、そしてコミュニケーションをも電子デバイスが提供するようになる。
そうなるとSNS上では、自分が会話している相手が人間とは限らなくなってくるのです。
様々な行動を分析し、適切なタイミングで適切なサービスを提供するというのはかつて、人間の仕事だった。コミュニケーションを通じて、もしくは経験による気付きをもとに先手を取り、快適で最適な対応をすることは、機械にはとてもできなかったこと。
その、いわばおもてなしを、IoTによって機械が実現できるようになります。
本書の中には、ソーシャルマシンを作成する、そしてそれを活かしてビジネスを構築するヒントが盛り込まれているので、これからの商売を考えるには最適な本かもしれない。
ここまで見ると、非IT企業にとっては関連が薄いと感じるかもしれない。でも、ソーシャルマシンは否応なく生活に、ビジネスに食い込んでくるのです。とても無視して置けるような状況ではありません。
では、ビジネスはすべて技術者に支配されるか、といえばそうではないはず。
人間にも求められるものはあります。
それは他でもない、人間であることだと僕は考えます。
ソーシャルマシンが完全に浸透し切るまでの間、過渡期には人間と機械の狭間で様々な問題が起こるでしょう。おそらく、拒否反応を起こす人の数は相当なものになるのではないでしょうか。
そういった時にはやはり人間が間を取り持つことになります。
消費者が機器の檻に閉じ込められないよう、適切な使い方、プライバシーの守り方、機械との接し方を、誰かが必ずサポートする必要があります。
その役割を果たすためには技術者である必要はないでしょう。ただし、ソーシャルマシンが何たるかを知らなければ、提供するサービスが的外れになる可能性が高まるのです。
本書は、このようなリスクを避けるための入門書として最適であると言えます。
技術的なものよりも事例や概念に関する記述が多いので、ソーシャルマシンの利用される状況をイメージで捉えることができます。
技術ではないアプローチでソーシャルマシンのはびこる世界に飛び込むならば、読んでおいて損はない一冊であると感じました。
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
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