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ITILの変遷《DXに適応するITSM》

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ITILv3がリリースされたのは2007年、それから12年経ってITIL4が発表され、ITサービスマネジメントにもDX(Digital Transformation)の要素に触れられるようになりました。ビジネス側とIT側がお互いに働きかけることで価値創出を果たすことはITIL4のコアコンセプトでもあります。

そうした部分に着目し、『DX時代のITSM』という講演をSIAM - Service North 2021 JAPANで行ってきました。

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このテーマで私が触れたかったのは、デジタルトランスフォーメーションというキーワードの裏で、業務とITが一層不可分となり、サービスを実現するには手法も組織もそれに適した形に変容しなければならないということです。従来のITは「業務側の要望に応える」ことを意識することが多かったですが、DXに対応したITは「最終顧客の期待に応える」ことへの注目が不可欠です。なぜなら、ITはシステム単位で捉えるのではなく、顧客(この場合はサービスの利用者と同じ)が利用するサービスの単位で捉えなければ、顧客体験(Customer Experience)を高めることはできず、DX時代のITは顧客体験の良し悪しがKPIになるからです。

こうした変化は開発重視からサービス重視の姿勢に組織をシフトさせます。

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こうした変化を実現するのに鍵となるのが「顧客志向のプロダクトポートフォリオ」「新しい予算編成モデル」「プロダクト管理モデル」の導入です。

これまでのITILはシステムの単位でIT部門がどうあるべきかを論じておりIT部門が意識するのは業務部門が主でしたが、DX時代になると業務部門も含めたチームがプロダクト(顧客に提供するサービス)を提供する側に回ります。その結果、IT予算も業務側だけが管理させるのでは不十分で、ある程度の裁量をIT部門に認めて変化に対応する活動へのプロアクティブな取り組みが求められます。そうした変化に対応する新たな役割もチームには必要になります。

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特に重要なのはSREの存在です。このSREはGoogleが提唱した「Site Reliability Engineering」の概念と同じですが、サービスという単位をより意識して「Service Reliability Engineering」と表現することが望ましいでしょう。

SREには初級/中級/上級の役割があり、初級レベルが開発者相当のスキル、中級レベルがそれをレビューできるスキル、上級レベルが活動全体の方向性をコントロールできるスキルを備えます。SREは何でもできるスーパーエンジニアといったヒーローのような存在ではありません。コンセプトは「開発者が運用をしたらどうなるか?」であり、自動化と安定化のバランスを常に模索します。常に現実的な選択を迫られますが、「よりよい状況を実現する」ことへの熱意は絶やしません。

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SREはサービス内の品質・効率向上案件の単位でアサインされ、その活動の適切性はサービス全体を仕切るプロダクトリーダーが認めます。プロダクトリーダーは顧客からの評価を意識する立場であり、言い換えれば、顧客の期待に応える活動を優先的に支援することになります。

いつの時代も顧客の期待に応えるのがITの役割でした。DX時代ではそれをより直接的に関与できるようになり、ゆえにサービスマネジメントも顧客を一層意識した管理が求められます。IT部門内の満足度はもちろん重要ですが、もっと直接的に顧客との接点を持ち、またフィードバックを受ける頻度を増やして積極的に変化できれば、DXという時代のフロントランナーになれるでしょう。

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