Beyond ITIL :日本仕様のITILに必要なこと、いらないこと
ITIL Managerという日本に300人弱しか持っていないITILの上位資格を持っているので、他のITIL Managerの方とITサービス管理についてディスカッションをする機会がしばしばあります。
先日、「今のITILでは日本の組織の良さを十分に活かしきれないところがある」、「日本仕様のITILが必要だよね」 という話をしてきたので、それについてちょっと触れたいと思います。
ITILとはITサービス管理のガイドブックみたいなものです。システムが提供する業務機能をITサービスとみなし、 これをうまく運用するための考え方なのですが、欧米でのIT運用状況を背景に書かれているため、 日本市場特有の事情などは勘案されていません。
ITILを利用する場合にはその点を強く留意し、自分達の現在のシステム運用状況との乖離が大きいほど、 その導入は慎重を期す必要があります。
例えば、マニュアル化されていない属人的な業務が多く発生している領域で、「マニュアル化はITILの重要なポイントだ。 全てのオペレーションをマニュアルにまとめよう」という取り組みを進めるとしましょう。
一見すると正しい取り組みに思えますが、 改善活動が盛んな日本のシステム運用の現場ではマニュアル化するよりもナレッジ管理データベースやWikiのような情報共有サイトを設けて、 そこで担当者が蓄積された業務内容を理解する形にした方が良い可能性が高いです。
これって欧米の組織ではこのレベルに達するのにかなり時間がかかることになるでしょう。ロール&レスポンシビリティが明確な国では、 ジョブディスクリプションに書かれていない仕事は基本的にやりませんからね。
他方、日本では日頃から物事をカイゼンしていくことに慣れた人が多く、 自らのロールで定義された業務を超えた作業を普通にやってのけるマインドがかなり一般的です。
こうした背景の違いを意識せずに闇雲にITILの教本に書かれていたやり方を強行すると、 場合によっては運用レベルが下がってしまうこともあり得るのです。
今のITILをさらに止揚した「Beyond ITIL」(勝手に命名)が日本には必要だと思う今日この頃です。