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JR東海の「プラレール訓練」に見るタンジブル思考

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プラレールと言えば子供のおもちゃですよね。青いプラスチックレールをいくつも繋げて線路を作り、 その上を電池で動くプラスチック製の電車がガタガタ動くアレです。ですが、そんなおもちゃを会議室に広げ、 真剣な顔で向かい合っている会社があります。それはJR東海です。

JR東海といえば、東海道新幹線という重要路線を抱える鉄道会社。まじめな会社ですから、 社内で子供のおもちゃで遊んでいたら普通は怒られます。なのに、どうして会議室にプラレールを広げて大人が取り囲んでいるのか。

実は「プラレール訓練」というものだそうです。

asahi.comでこのような記事が紹介されていました。
http://www.asahi.com/national/update/0827/TKY200708270109.html

『ベテランの荒木敏弘運転士が無線で聞きながら、 レール上の700系新幹線のおもちゃを右手でゆっくり前に進める。前方にある別の新幹線にたどり着くと、「連結器はありませんが、 これで連結しました」。一同から笑みがこぼれた。 故障で止まった新幹線を、名古屋駅にいた別の新幹線が救援する想定だった。

(中略)

プラレール訓練は06年7月に始まった。発案者は、 東京第1運輸所の大島善次副所長。「技術進歩で、トラブルを経験する乗務員が減った。 実際の車両を使った訓練では個々が全体状況を把握しにくい。この歯がゆさを、手頃な予算で解決できた」と、大島さんはいう。』


この発想の転換は素晴らしいと思いました。鉄道のような重厚長大な産業で、その基幹業務に係る訓練を行うとなれば、 自然と大規模でなかなか実施できないモノを想定しがちです。それを、プラレールという身近で安価なアイテムを用いることで、 手軽に実現することができています。


近年、BCP(事業継続性計画)というキーワードが注目を集めるこの業界。BCPを一言で説明すると、 システムにどのような障害が起ころうとも業務サービスを提供し続けるための計画です。

例えば、銀行のATMが停止したとしましょう。ほとんどの銀行では、代わりに窓口で預け入れや引き出し、 振り替えなどをスムーズに行うことができます。これは、ATMが停止した際の業務手順が予め定義されているからです。

じゃあ、計画だけ立てれば十分でしょうか?

ムリです、実際に代替手段を使って訓練しなければ、有事の際には役に立たないでしょう。上記例で言えば、 ATM停止時のアナウンス方法や窓口への誘導、窓口内でのオペレーションについて、行員が訓練を行っている必要があります。

でも、最初に述べたように、影響の大きい障害ほど訓練するのが困難だったりします。

ATM停止時の訓練なら人を集めるだけで済みますが、先の新幹線の例で言えば、 実際の線路上で新幹線を停止させて牽引訓練を行うなんて、ダイヤの調整や車体、人員の確保、その他リソースの消費など、 無視できないコストが積みあがるでしょう。

これらの問題を、JR東海は「プラレール訓練」という方法で解決しました。これっていろいろ応用できそうですね。例えば・・・

○警察の交通規制の訓練
 →ミニカーでシミュレーション

○港湾管理における水先案内の訓練
 →ラジコンの船とプールでシミュレーション

○航空管制業務の訓練
 →ゲームの「ぼくは航空管制官」でシミュレーション


コンピュータ上のバーチャル画面でやる方法(Web Based Training)もありますが、 複数人での体験共有という点で考えると効果はイマイチだと思います。体験に勝るものはありません。

あ、これってタンジブルという考えにつながるのかな・・・と思って調べたら、こんなものがありました。

「タンジブル防災シミュレータ」(NTTコムウェア)
http://www.nttcom.co.jp/solution/case/experiment/tangible/tangible.html

これです、これ。多分、これからはタンジブルがキーワードですよ。

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