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商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

緊急ブログ上程 第四弾 「ねむけおばけ」対策 ねむけ防止の重要課題は長距離列車の運転

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ねむけ防止の重要課題は長距離列車の運転

バス、船、車の居眠り問題を提示してきたが、残る交通機関の飛行機、列車も居眠りは大問題だ。

飛行機の操縦士が二人なのは、もちろん一人の判断の誤りをもう一人が気づくというためだけではないだろう。ねむけ対策のためだろうと思う。

リンドバーグの大西洋横断でも、最大の問題はねむけとの闘いだった。オートパイロットで飛行中なら、二人の内、一人は簡単な仮眠は許さるのだろうか。日本からニューヨークなどの十数時間の飛行で、眠くならないパイロットはいないだろう。老婆心ながら、仮眠は、交代できちんと取って欲しい。両人が同時に相談しないで、仲良く寝こまないで欲しいと切に祈って、私は飛行機に乗っている。

ネットで調べると、一般の路線の航空機の居眠り運転事例が何件か出てくる。ハワイでの目的地を飛び越えた飛行機のことも出ている。アメリカ本土でも、報告されている。オートパイロット運行で、機長と副操縦士の二人ともが、眠気との闘いを超えて、仲良く完全睡眠状態になって、目的地を飛び越えてしまったということ。

機長と副操縦士が同時にしっかりと寝ている状態。これはもう「複数運転者環境による同時熟睡状態」は、あまやかされた環境であり、もってのほかだ。管制塔や航空会社は、操縦席の画像監視を強化することも必要となる。あるいは、15分、半時間ごとに、起きているという確認信号を出すシステムなどが必要だ。

 さて、問題なのは列車の運転手の居眠りだ。
以前に、ある駅のプラットフォームの最前部に電車の運転手が交代要員で、待っていた。私しか近くにいなかったが、
「運転していて眠くなりませんか」と尋ねた。
「もちろんなります」
「そんな時はどうするのですか」
「まず、どんな寒い時でも、窓を開けます。そして、中腰に立ちます。そして、大きく指示を言って、指先指示をします」

 たしかに、顔を風に当てて、立ち上がって、大きく信号などの指示を言葉で言って、指先で指示をすることは、眠気を一時的にふっ飛ばす効果はある。それでも眠気が完全に消えるはずはない。

 全国の電車の運転手に、正直のアンケートを取ると分かるだろうが、ほとんどの電車の運転者は、眠気を感じたことがあると思う。つまり、この一つ前のブログ記事の車の運転で言えば、第二段階の居眠り運転状態になったことがあるということ。
 列車の分刻みのダイヤの中では、トイレに行くことも、顔を洗うことも、コーヒーを飲むことも一切できない。ミンツのタブレットを飲むことくらいはできるだろうが、それも乗客に見られてはいけない。列車の運転手は、絶対にかわいそうだ。

 列車の中では、デッドマンズペダルがあるはずで、眠くなって押しているペダルを外せば、列車は制動が掛るようになっている。それでもプロになれば、ペダルを押したままでも、居眠りも可能になるのではないだろうか。

 JR西日本の福知山線の大事故も居眠り運転の可能性もあったのではないか。最近起きたスイスの観光特急の脱線事故も、居眠り運転の可能性が非常に高い。
駅に停車中に短期の睡眠を取って発車時間を過ぎてしまうこともあるかもしれない。停車駅を通過してしまうと、全国紙にのる。事故でも起これば完全に責任を取らされる。新幹線でも運転手は、誰もが眠くなった経験があるはず。

列車でも、運転手が居眠り運転しているところを、一度でも乗客に見られたり、携帯で写真を撮られると、大変な非難を受け、これもネットで全世界に公開される。電車の運転手は、飛行機や車の運転よりも、動きが取れないだけ、はるかにきついと思う。

電車の運転手は、昔は二人乗っていた。いつか一人になり、現在は東京の地下鉄のように車掌もいなくなり、ワンマン運転をしている。
ATSが働いていても、居眠りが事故を起こす可能性は残っているなら、徹底的に自動化を図るべきで、ほぼ無人で運転するほどの緻密で高性能のシステムを組み上げる必要がある。人身事故や踏切事故、駅の転落事故、自然災害など、ありとあらゆる突発事件に、高速運転の自動制御はできないのではないか。

一定の長距離運行の列車に関しては、
(1)    複数運転手化復活
(2)    完全自動運行化
(3)    短時間運転手交代
(4)    運転手の運転状態の外部からのモニター
(5)    運転開始直前のプロセスに仮眠を組み入れる
(6)    運転手用の洗面・トイレ設備などの設置

これらはそれぞれが大きな問題をたくさん持っている。
今日のブログの私の提言の中でユニークなのは、各鉄道において、長距離運転直前の準備段階に、半時間程度の短時間の仮眠を勤務として組み入れることだ。つまり仮眠をとってから勤務する。これで居眠り運転を大幅に防止できるだろう。

今後は自動運行化が進んでいくのだろうが、そのためには、線路や駅における外部からの接触や侵入、交差が起こらないように、遮断や隔離が必要になってくる。
完全自動制御のもとに走行している列車の運転手は、完全に運転者というよりも、監督者となり、よけいに眠くなるのではないだろうか。

居眠りの事故の発生率は、もちろん自動車がだんとつだが、列車の事故は、途方もない規模の災害となることから、上記のシステムの最適な配置の発展が今後も進んでいくだろう。

例えば運転手が、15分仮眠を取れる状態、運行中にトイレに行ける、運転中にコーヒーを飲めるなど、車では一般的な居眠り防止は、今は不可能だ。だが、私たち乗客が生命をあずけている運転手が、ねむたい状態で、運転されている可能性があるとすれば、大問題だと思うし、安全に仮眠でもとってくださいなと思う。

いずれにしても、「眠くなる現象」を精神論で否定して進めると事故はなくならない。何か現実的な対応を取る必要がある。

教訓 完全自動化を進めることと、運転手の業務直前仮眠義務、列車によっては運転手のためのトイレ洗面所設置、一部の列車の複数運転手化も必要となるかもしれない。リニアは複数運転手だろうか?眠くなる前に到着してしまうのだろうが。

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