オルタナティブ・ブログ > 読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~ >

商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

緊急ブログ上程 第二弾 「ねむけおばけ」対策 海は広いな大きいな 船の運航も眠い

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海は広いな、大きいな 船の運航も眠い!

 私が大学生の時、オーストラリアに船で留学した。
 お金が無かったので、船会社に頼んで、巨大な石炭運搬船に載せてもらった。名古屋港から出港する時に、南の方に台風が近づいていたので、船はできるだけ東側に抜けて南に進んだが、なんのなんの台風の暴風雨を突っ切り、無茶苦茶揺れた。全長が150メートルもある船だ。前後に揺れると、船首が上に上がり、空気を下に抱えて降りると、「どーん」とものすごい音と、振動がする。生きた心地がしなかった。

 不思議に私は酔わず、真夜中に、寝ているベッドからドスンと落ちた後、操舵室に上っていった。夜中の2時ころだった。船はまだ大揺れしていた。
 操舵室に入って驚いた。一等航海士か、二等航海士か、忘れたが、うつぶせになって寝ていた。

 たった一人のワッチ(当番をワッチという)で、夜中の12時から朝の6時までのことを地獄のワッチというが、見事にうつぶせになって寝ていた。他には誰もいなかった。

 私は驚いて、
「大丈夫ですか」と声を掛けたら、
「ああ、君か、船酔いがひどくて...、悪いがレーダーを見てくれ」
「は、はい」と私がレーダーを覗いた。「何もきらきら光っていません」
「そ、そうか。悪いが前で見張っていてくれ」
「誰か呼びましょうか」
「いや大丈夫だ。少しだけ寝る」

 それで私はその夜は、2時間ほどワッチに立った。もちろん前方はまっくらで、波が船首に当たってドドドと砕けて、何にも見えないが必死になってみていたのをおぼえている。生涯にたった一度の何万トンの石炭運搬船の見張り役で、運転を任されたのだ。私は正面の窓とレーダーとの間を、うろうろしていた。

 こんなものだろうか。世界中の海を走り回っている船もきっと、眠たい症の人たちでいっぱいなのだろう。一人でワッチをしていれば、ほぼ99%ねむくなっているはず。
 海上の事故も、居眠り運航で起こることがある。漁船のように人員が少ないと、ほぼ徹夜はねむいはず。どうしているのだろうか?
 海は実に広い。だから居眠り運航でも事故が少ないのだろう。
 
教訓 船のように24時間の運転では、複数のワッチの人員配置をするだけではだめだ。椅子に座って、一緒に寝てしまう恐れがある。人員の一人が、交代ででも短期の仮眠を自在に、希望に応じて取れるように、仕組みを考える必要がある。現在の配置で言えば、二人の要員を配置すれば、二人は絶対に寝てはいけないとすれば、眠くなる。
 一人が眠気を感じれば、短時間(たとえば15分でも30分)でも、その勤務時間内に仮眠を取り、もう一人がその時間に起こす仕組みが良いとおもう。
 船の単独ワッチの場合は、半時間ごとに、非居眠り証明の作業を入れることも必要かもしれない。つまり、寝ていたら、記録を残せないような手順を、入れるようなことだ。

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