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「きずなと思いやりが日本をダメにする」長谷川眞理子・山岸俊男 著 糸井重里も惚れた山岸論

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これは、日本マーケティング協会の月刊HORIZONの2017年第二号(特集「突き詰めたい」)に寄稿したものです。

書評 「きずなと思いやりが日本をダメにする」長谷川眞理子・山岸俊男 著、集英社インターナショナル

 本号の特集「突き詰めたい」では、なかなかそうできない組織・文化とのジレンマも語られた。

 本書は「突き詰めたい」に直接の答えを示さないが、「心と社会」をテーマに、社会心理学者の山岸俊男と進化生物学者の長谷川眞理子の両博士が、盲信されがちな言わば古い常識へチャレンジし、「突き詰めたい」背後にある組織や社会について新鮮な視点を与えてくれる。

 山岸氏は、「日本人の心の中には独自の価値観や欲求があって、それによって日本の伝統文化や日本的な社会が作られていると思い込んでいる人が多い。」と語り、日本人の美徳は状況の産物に過ぎなかったと喝破する。

 例えば、和を重んじる心、日本的雇用など、日本の良さと思われてきた点に斬り込み、それにとらわれることの問題を示している。

 6章「日本人は変われるのか」では、グローバリゼーションを恐れる日本人や価値観の混乱を指摘する。そして、身内しか信じないマグレブ商人とオープンなネットワークを作ったジェノバ商人の例は、いまの日本大企業への警鐘ともとれる。

 びくびくする日本人、いい子であることを強制する日本社会など、日本における組織心理の問題を指摘し、山岸氏は、「幕末や維新のように社会的な流動性が高まった時代では「空気を読む」なんて通用しませんでした。今だって、本当は空気を読まない人の方が適応的であるはずです。」と語る。そして、みなが違っていいという多様性を受け入れることや信頼を勝ち得ることの大切さを唱える。

 対談形式の本書はダイジェスト的で、これらの要素をさっと読むことを可能にしているが、より深く理解したい方は、山岸俊男著『日本の「安心」はなぜ、消えたのか―社会心理学から見た現代日本の問題点』を読まれたい。武士道といった日本的な価値観にも斬り込み、転換期への基本的な視座についてヒントが得られる書だ。ちなみに、糸井重里氏は山岸氏著『信頼の構造』を「ほぼ日の母」と呼び、氏の著作を戦略の参考にしているという。

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