上司と部下という上下関係がもたらす弊害。あるいは上下関係から補完関係へのシフト
「あなた上司・僕は部下」の線引きが利己主義を生む
以前から、「上司と部下」の関係性がなんとも害悪を生み出しているように感じている。極端に言うと、上司・部下という考え方自体、前時代的な過去の遺物なんじゃないかと思うのだ。
もちろん大きな組織を動かす上で指揮命令系統は大事だし、その上での「上司」という役割が必要なのは理解できる。上司と部下を全否定するつもりはない。だが、一方で、上司と部下という関係性がもたらす弊害もすごい。例えば、役割があてがわれると、上司としての振る舞いをしよう。部下としての振る舞いをしよう。という暗黙の力が働く。そして、相手にも、上司としての振る舞いを期待してしまう。
「上司が」働きやすい職場を作ってくれるはず
「部下が」思うように動いてくれるはず
でも実際はそうならない。そして、自分が思い描く「あるべき上司像・部下像」と合致しないとイライラする。
上司は部下のことを対等と見ていない。自分の駒だとでも思っているのか。言ったことをやれない。気が利かない。言い訳が多い。使い勝手のいい優秀なコマが欲しいな・・・なんて。部下は部下で、上司がなんでもやってくれると勘違いしているんじゃないか。上司が悪い、経営が悪い。私たちは被害者だ・・・なんて。
ちょっと極端な言い方をしているかもしれないが、程度の差はあれど、こういうマインドが見え隠れする人が多い気がしてならない。根底にあるのは、「相手がxxすべき」という思い込みだ。組織のヒエラルキーに立脚した、完全に他責のマインドである。本当に恐ろしい。
上司だからxxできて当然。 部下だからxxして当然。
これは私の仕事じゃない。 これは相手の問題であって、私は悪くない。
こうなると自分の立場でしかモノを考えなくなる。自分の主張しかしなくなる。「xxは課長の仕事。私はヒラなんだからそれは私の仕事じゃない」「こんなに職場環境が悪いのは上司のせい。私は職場を作る立場にないから、上司が作ってくれるのを待っているのに、本当に無能」という思考が生まれてしまう。
役職で呼び合う組織では、こうした心理的な壁が暗黙のうちに作られていくんじゃないだろうか。そして自己欺瞞、利己的思考で溢れた職場になっていくのではないか。(少々極論かもしれないけど)
余談だけど、ウチの代表である鈴木さんは「社長」と呼ばれるのを死ぬほど嫌う。きっとこれは、ヒエラルキーの意識によって生まれる壁を嫌っているんじゃないかと思う。
◆仕事は上下でやるんじゃない。チームでやるんだ。
そもそも、なんなんだ「上司」と「部下」って。
上司、部下である前に、私たちは「ひとりのビジネスパーソン」であるはず。ビジネスなのだから、一緒に仕事をする人はすべからく、「仕事上のパートナー」という関係になるはずだ。
もっというと「チーム」である。
対等なチームメイト、ビジネスパートナーに対して、「相手が何かしてくれない。だからあいつが悪い」とか・・・。「相手がうまく動いてくれない」「やれやれ、なんて無能なんだ」とか・・・。何かおかしい。共通の目的に向かって力を合わせるんじゃないのか?
例えばケンブリッジのプロジェクトチームは「お客さんに満足してもらう」「いい仕事をして約束を果たす」という共通目的を持った仲間達の集まりだ。
そこに上下関係は存在しない。もちろん役職では呼ばない。ひとりのプロとして、年次や役職に関係なく「さん」で呼ぶ。若いメンバーが、「PMの考えはおかしい」と面と向かって反論する。「こうした方がいい。この方がチームとして上手く行く!」と主張する。
そこには、お互いの力を最大限に引き出し、気持ちよく働くためのルールがあり、習慣があるだけ。上下関係ではなく、補完関係なのだ。
プロジェクトの働き方が特別なわけじゃなくて、普通の組織でも同じはず。
◆補完関係を作り出す3つのポイント
補完関係を作り出すためには3つのことを気を付けるといい。
①目的の共通化
②上下関係でなく、補完関係という理解(上司が弱さをさらけ出す)
③部下の意見をバンバン採用する
ここからは主に上司目線で書いてみる。
①目的を共通化する
部下らしく、上司らしくなんて意味がない。結局チームがどんな状態になればいいのだろうか?その状態が作れるなら上司も部下も関係ない。これが組織の存在目的になるはずで、全員が強烈に目的を意識できていれば、自然とその状態が作れるように動くはず。
よくある勘違いは、組織としての目標や価値の出し方を全く理解せず、個人の仕事だけ果たせば良い。と考えるケースだ。個人の事だけ考えると途端に「あなた上司。わたし部下」のパラダイムになる。
プロジェクトチームだとわかりやすいけど、普通の会社組織でも同じ。例えば、ケンブリッジのバックオフィスのチームの目的は「コンサルが煩わしいことから解放されて、安心して顧客へのサービスに集中できる状態を作ること」これが共通の目的になる。これが果たせるなら誰が何をやっても自由。逆にこれが果たせないなら、果たせるように全員が必死に動く必要がある。
②強みを持ち寄って戦うチームだと理解する
これを成り立たせるには、上司が弱さをさらけ出すといい。上司が上司らしく?振る舞うとダメだ。万能の賢者のように振る舞うと、部下たちは途端にモノを言わなくなる。チーム感がゼロになる。そうではなく、上司は自分の弱いところを隠さず積極的にさらす方が良い。部下に助けを求める姿勢が大事だ。そして部下から学ぶ姿勢、部下の意見を求める姿勢を見せなければならない。要するに上下ではなく、対等な立場の人間として接することが大事。ということだ。
③徹底的に部下の意見を採用する
「君が上司だったらどうする?」「今、何が足りない?」「具体的にどうしたらいい?」と聞く。そして徹底的に部下の意見を採用する。
こうなると、部下は文句が言えなくなってくる。被害者意識を変えて、当事者意識を持ってもらうのだ。
この3つがうまくできると、言われた事だけをやる組織から、共通の目的のためにエンパワーされた集団に変わる。いや・・・変わるきっかけが「つかみやすくなるかもしれない」くらいかもしれない。
それでも、こういう考え方ができないと、いつまで経っても「上の命令に従うだけの組織」から抜け出せない。いつまで経っても「自律的に考えて行動できる人材」は育たないと思うのだ。上司と部下の関係を完全に取っ払わなくてもいい。部下が自律性を保ってくれればいいのだ。上司が独善的にならなければ良いのだ。
書いて読み返してみると、なんだかティールっぽい話になってきた。うちの会社は昔からこういうスタイルだから、たまたまティールの概念と合致するところが多かっただけなのだが、やっぱり素直に本質を追求すると同じところにたどり着くのだろうか。
これからの「組織のあり方」がどうなっていくのか、実に興味深い。
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズに所属するコンサルタント榊巻(さかまき)がお送りするブロク。
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