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ケンブリッジ語録#27 「抽象化」はコンサルタントの基本動作と心得よ

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僕が勤めるコンサルティング会社、ケンブリッジには、厳しいプロジェクトの現場で生まれてきた「語録」がある。
今回はこれ。

「抽象化」はコンサルタントの基本動作と心得よ

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7年ほど前、プロジェクトの現状調査結果をExcelにまとめていた時に言われた言葉。

ここで言う「抽象化」とは、りんご→果物、車→移動手段、といった感じで1段くくりを上げること。当時プロジェクトマネージャーにこう言われたのだが、正直、最初はピンと来なかった。その時のやり取りがこんな感じだ。

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「榊巻さん、調査結果まとめてくれたんだね。でもこのExcel表、タイトルついてないね」

「あ、すみません」

「タイトルはちゃんと付けて欲しい」

「はい。でも、急いでいて・・・。タイトルなんかより中身を作る方が優先ですよね?」

「なるほど・・・」プロジェクトマネージャーは少し考えてから。こう切り出した。

「・・・それは少し違うね。タイトルを最初に意識することが仕事の精度を上げることになつながるんだ。タイトルを軽視してはダメだ」

正直僕はピンとこなかった。

「・・・うーん。まぁタイトルは付けた方がいいと思うのですが・・・。あんまりピンと来ません・・・」

「タイトルというからピンと来づらいのかもしれない。言い換えると"抽象化する"ことが大事なんだ」

「抽象化ですか??」

「タイトルを付けるということは、Excelの表を一言で言い表すということだ。抽象度を1段高めて、一つ高いレイヤーから俯瞰して眺めるイメージなんだ」

「うーん。まぁそれはなんとなくイメージつきます。グルーピングするようなイメージですよね」

「そうそう。一つ上のレベルで括ることを"抽象化"と言うんだ」

「なるほど、それはまぁイメージつきましたけど、正直"抽象化"しなくたって仕事には困りませんけど・・・」

恥ずかしながら本当に分からなかった。タイトルがあった方がいいのは間違いない。無いよりあった方がいい。グルーピングもした方がいい。なんとなくまとまっている印象を与えられるし。
でも無いとなぜダメなのか、何が問題になるのかピンとこなかった。その時のプロジェクトマネージャーは根気よく、こんな説明してくれた。


「・・・。いくつも大事なことがあるんだよ。例えば、抽象化して一言でまとめられないと、抜け漏れがチェックできない」

「どういうことですか?」

「いいかい?さっき榊巻さんがExcelでやってたみたいに情報を列挙してみる。例えば、ポンプ車、はしご車、化学消防車、消防指揮車両・・・と挙げたとするだろう?この状態で部下に『抜け漏れありますか?この情報で良いですか?』と聞かれたらどう?」

・・・何も言えません。なぜなら、これは単なる情報の羅列で、これで何をしたいのか、これが何なのかわからないから・・・

「だろうね。そこで抽象化して括ってみる。これらを一言で言うと"消防署にある車両"かな?

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「そうですね」

「じゃあ、『"消防署にある車両"としてポンプ車、はしご車・・・と幾つかの情報を挙げたんですが抜け漏れありますか?』と部下に聞かれたらどうだろうか?」

「・・・! コメントできますね・・・」この瞬間、頭のなかで何かが繋がった気がした。


「そうだろう?"消防署にある車両"という視点で、漏れの有無や、間違いを探すことができるようになる。あ、救急車が漏れてる・・・、という感じで。タイトルを付けただけなのに」

「・・・」

「こんな風に抽象化して括ることで、情報がまとめられ、意味を持つようになる。そうなるとまとめた意味合いに中身が合致しているかどうかセルフチェックすることができる。抽象化して括らないとこれはできない。コンサルタントとして仕事の品質を担保するためには最低限必要な動きだと思う」

「うーむ・・・そういうことですか」

「もう一つ大きなメリットは、括ると1段視点が引き上がるということだ。"消防署にある車両"と抽象化すると、抽象化した塊で考えやすくなる」

「どういうことかというと、例えば 『消防署にある車両の話をしているけど、設備の話はしなくていいんだっけ?』とか、『そもそも、なぜ今、消防署にある車両の話をしているんだっけ』というといった感じで、車両一台一台を考えていた時には見えづらかった物が見るようになる」

「そういうことですか・・・だいぶ分かって来た気がします・・・。パワーポイントの1スライドを作るのに必死になってる時に、『そもそもこの資料何のために作ってるんだっけ?』なんて先輩コンサルタントに言われてハッとする・・・。あの感覚ですね・・・あれも抽象化して捉えることができていれば自分で気付けるかもしれないということなんですね」

「その通り。抽象化の大事さ分かった?タイトルの話に戻ると、タイトルを付けるのは抽象化することの代表例なんだ。こう考えるとタイトルって大事でしょ?」

「はい・・・」

「抽象化は、コンサルタントとしての基本動作と言ってもいい。これが出来ないようじゃ、単なる作業者から抜け出せないよ」

「ですね。腹落ちました!」
~~~~


5分か10分くらいのやり取りだったが、これはガツンときた。そしてこれを強烈に意識するようになって、文字通り視点が1段引き上がった。

抽象化しようと思うと、常に1段上の視点でモノを考えなくてはならない。1段上の視点で考え抽象化してみると、自然と「あれ?そもそも何のためにこれやってるんだっけ?」という思考が働くようになった。これが加速度的な成長をもたらしてくれた気がする。

上司や先輩からこんな風にいわれる時には大抵抽象化が不足している時だ。
 ・最初に全体感を示せ
 ・結局何が言いたいの?
 ・このスライドで言いたいことを一言でいうと?
 ・これでほんとに漏れないの?
 ・そもそも、これって何のためにやってるんだっけ?
 ・・・

身に覚えのある方は、常に1段上の抽象度で語ることを意識しよう。

~コンサルタントFさんのコメント~

亮さんの語録に乗っかります。

「抽象化って大事だよね」は、分かっていても難しいですよね。
ケンブリッジに入社して7年、今も修行中の身ではありますが当時よりは随分とできるようになったと実感しています。

自分の経験を振り返ると「得意になるには、ひたすら練習するしかない」という身も蓋もない答えしかないように思います。
こういった筋トレ系は、いかに練習を忘れないようにするか、あるいは、苦にならない(楽してやれる)ように工夫するかがキモ。
ダイエットと同じですね。

こんなエピーソードを読みました。
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ウォシュレットの広告コピー「おしりだって洗ってほしい」で知られるコピーライター仲畑貴志さんは、まず原稿用紙の1行目に「早い話が」と書く。
続けて「早い話がなんとかかんとか」とコピーを書き、最後に「早い話が」と書かれた部分をハサミで切り捨てる。
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良い工夫ですよね。
パワポ資料を作る際、アウトライン(タイトルとキーメッセージ)だけ書き出したり、絵コンテから書くとかいったやり方と同じ。
工夫の仕方は人それぞれ、自分に合ったやり方を見つけられるといいですね。

もう7年も前の話だが、いま見返してもこれが一つのブレイクスルーになったと思う。


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