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クラウドビジネス再入門(4)クラウドエコシステム形成のための5つのプロセス

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クラウドビジネスを考える上で重要となるのが、「クラウドエコシステム」です。

エコシステムとは、本来は、自然界の生物と食物連鎖などの異質な環境要素によって良好な環境を維持する循環系システムとしての「生態系(Ecosystem)」を意味する科学用語です。

この本来の言葉から派生し、複数の事業者がサービス開発などにおいてパートナーシップを組み、相互の技術や資本を生かし、業界の枠を超えた開発事業者や販売代理店など多種多様な構成員により、国境を越え広く共存共栄し、健全に収益の循環を生み出すモデルとして位置づけられています。

クラウドエコシステムは、クラウドをベースに多くの関係事業者やグループを集約するプラットフォームとしての役割を担い、多くの関係事業者が集まることにより、外部ネットワークとの連携効果を生み出し、競争と共創を繰り返しスケーラビリティの高い自律分散協調型の環境が生まれ、新しいビジネスの機会を創出する環境をつくります。

クラウドエコシステムの形成にあたっては、5つの段階で整理をしてみたいと思います。

1.Cloud ProviderとCloud Consumerとのシンプルな取引

Cloud Consumerが、Cloud Enablerの提供によって構築されたCloud Providerが提供するサービスを利用するシンプルな取引形態です。クラウドサービスの提供時の多くはこのモデルから始まります。

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2.Cloud Communityによるクラウド・エコシステムの組成

クラウド・エコシステムの形成には、該当するクラウドサービスを中心としたサードパーティが情報交換や連携を目的とするコミュニティや組織づくりが契機となります。組織やコミュニティの活動が活発なほど、該当のクラウドビジネスの潜在的な成長性は高いと言えます。

代表的なクラウドのコミュニティは、Amazon Web Services(AWS) User Groups、Japan Windows Azure User Group、OpenStackユーザ会、CloudStackユーザ会などがあります。

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3.Cloud BrokerやCloud Integratorの仲介・支援

該当のサービスの普及が進むと、運用管理や付加価値サービスなど高度なニーズが出てきます。そのため、Cloud Consumer とCloudService Provider 間の契約締結を仲介し、サービス同士のマッシュアップや付加価値をつけて再販するCloud Brokerの役割が大きくなります。Cloud Consumer のオンプレミスのシステムからクラウドへマイグレーションをするといった導入支援を行うCloud Integratorのニーズも高まってくるでしょう。

代表的なCloud Brokerは、クラウドのマネジメントプラットフォームを提供するRightSacleなどがあります。Cloud Integratorは、AWSの場合、アイレット社の「cloudpack」やサーバーワークス社などが該当すると考えられます。

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4.Cloud Auditorによるクラウドサービスの安全性・信頼性向上

クラウドの普及が進み、エンタープライズ系の基幹システムまで導入されるようになると、クラウドサービスの運用やパフォーマンスや、セキュリティなどの、クラウドサービスの安全性や信頼性が問われるようになります。

Cloud Providerは、Cloud Auditorを通じてセキュリティなどの認証取得をし、Cloud Consumer にその認証結果を公開することで、Cloud Consumerからの信頼を獲得し、普及を加速させていくことになります。

日本国内では、国内業界団体の金融情報システムセンター(FISC)が策定した「金融機関等コンピュータシステムの安全対策基準・解説書」(FISC安対基準)にAWSが適合したというのも大きな動きの一つです。

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5.Cloud Carrierを介したInter-Cloudへ

Cloud Communityによるコミュニティ、Cloud BrokerやCloud Integratorによる仲介・支援、そしてCloud Auditorによる安全性・信頼性向上を通じて、Cloud Providerは次第にネットワークを提供するCloud Carrierにより、ネットワークでクラウド間がつながるInterCloudを形成していくことになります。

その代表的な動きが、ネットワークをソフトウェアでプログラマブルで管理・制御するSDN(Software Defined Network)による仮想ネットワークです。クラウドは仮想マシンやストレージだけでなく、ネットワークを含めて、オンデマンドリソース管理・制御を実現することで、InterCloudを通じた巨大なバリューチェーンを形成していくことができるでしょう。

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