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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

YouTubeショートクリップ時代の終焉、YouTubeのライブ中継はUSTREAMへの対抗ではなく見逃し放送時代への対処と予測される理由

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<序文>

 

 前回も書きましたが20106月ににはいってYouTubeによるライブ中継が盛んです。YouTubeの場合にはツイッターからコメント投稿する方式をとっています。

そしてYouTubeがライブ中継に活発になった謎が明らかになり始めています。それはYouTubeショートクリップ時代が確実に終焉し、これからは見逃し放送や映画などフルレングスのビデオ提供が主流になる時代が始まるからです。見逃し放送や映画などはドラマ1本なんぼの世界=マイクロ取引と呼ばれる(PPVと言う言い方もある)新しい収益モデルです。

 

グーグルとしても何時までも広告モデル(広告で収益を上げてすべての情報やアップスをフリー提供するフリーモデル)にしがみ付くのは限界があると感じ始めているためです。

 

YouTubeショートクリップ時代終焉の証拠>

 

 

下記のブログにも引用していますが、米国のマーケティング調査企業emarketer のリポートによれば2010年には18歳以上の米国インターネット参加者の33%がフルレングスのビデオを見始めています。この数字は米国の人口比では24%、インターネットでビデオを視聴する人々全体の割合では50%を超えます。判りやすく言えば、インターネットで動画を楽しむ人々の半数がYouTube型の短いビデオクリップ視聴からフルレングスのドラマや映画などのプロの作品(映画やテレビなどが放送用に製作した工業製品)を見始めた事を意味します。

 

そしてフルレングスのドラマや映画などのプロの作品を楽しむ米国の方々の数は以下のように増加すると言う予測が出ています。

 

2008年  4,110万人

2009年  4,960万人

2010年  5,890万人

2011年  7,220万人

 

 ★★ YouTube型の短いビデオクリップ視聴中心時代の終焉

 引用

The days when online video was just for “fast-food” YouTube clips are over.

 引用終わり

Emarketer116168

Emarketer116184

<出所:eMarketer資料>

<変わる欧米の視聴スタイル、タイムシフト、ロケーションシフト>

 

 2010年ロンドンで行われたコネクト・テレビサミットではソニーの発表の中で以下の数字が示され、欧州は日米よりも見逃し放送が普及していると言う話がありました。

■ソニーのテレビ・ブラビアのパソコン接続割合

 欧州 49

 米国 15

 日本 12

 

また米国で20101月に販売されたテレビの約27.5%が何らかの形でのインターネット接続型であると発表されています。(isuppli調査)

 

 ★ More than a Quarter of U.S. Televisions Purchased in January Linked to Internet

 


 

これは米国で見逃し放送が当たり前に普及している結果です。

 

判りやすく申し上げればテレビの視聴がテレビの前の定時視聴型からタイムシフト型へと変化している結果と考えられます。

 

見逃し放送はインターネット経由が多いのでテレビをインターネットに接続するニーズが高まっています。

 

タイムシフトの結果、インターネット経由の番組をテレビで見たいと言うニーズが高まり、コネクトテレビやアンドロイドテレビの話が盛り上がっています。またスマートフォンやiPadなどのタブレットの普及により、ロケーションシフトも具体的な議論が始まっています。YouTubeはアンドロイドテレビ時代には、ショートクリップもさることながら、映画やドラマの(今後の)有料販売に対処できると言うことを示す必要があります。

 

こう言う状況下で最初に提示した数字が現れてYouTubeショートクリップ時代が終焉したと言う議論が高まっている訳です。

 

YouTubeのライブ中継は見逃し放送のための宣伝が狙いだろう>

 

20106月には既にYouTubeは、オバマ大統領のBPによるオイル漏れ対策の演説、南アフリカワールドカップの音楽前夜祭、E3のライブ放送など3回もライブ中継に出ています。当然、大きなイベントの場合には大きな広告主が付きます。しかし同時に参加者の1割がライブ中継に参加した場合、約2割程度のコストが増加すると言うマーシャブルの試算もあります。

 

結論から言えば筆者は「YouTubeのライブ中継は見逃し放送のための宣伝が狙いだろう」と見ています。ライブ放送はYouTubeに「見逃し放送や映画などフルレングスのビデオ提供能力がある」と言うことを宣伝する効果があります。また「見逃し放送や映画などフルレングスのビデオ」は基本、パブリックなソーシャル視聴ではなく、物理的な知り合いの数人が視聴パーティを組むプライベートな「マイクロコミュニティ」形式をとります。(詳細は筆者の著書「Ustreamと超テレビの時代 ~ユーザーライブ中継の威力~ 」の中のHuluの事例を参照願います。)この方式であれば、23人に同時にフルレングスのドラマが流れてもYouTubeにはほとんどコスト増の影響はありません。

 

YouTubeショートクリップ時代は終焉しました。そして今後のコネクトテレビ(特にアンドロイドテレビ)を意識したYouTubeの動きが非常に注目されます。

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