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自己満足か隠し味か?聴こえない難所

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先週、「アマオケでブラームスが人気なのは...じゃあブルックナーもどう?」というエントリで、聴いて面白い、やって面白い楽曲が人気だというような趣旨のことを書いた。「弾き応え」というのは、弾いてそれなりによく聴こえるから気持ちがいいのであって、一向に目立ってこないとこれは成り立たない。

しかし、オーケストラ人というのは、全員がソリストではなく、裏方を好んで引き受ける人種でもあり、目立たないけど重要な役回りを率先して引き受けるものだ。

ベルリオーズの「幻想交響曲」も、アマオケに人気の曲目のひとつだが、これの第1楽章のクライマックスには、いわくつきの裏方業がある。MIDI音源で恐縮だが、問題の箇所がどんな感じか、フルスコアを入力したのでこちらから聴いてもらいたい。

ここで問題となるのは、管楽器を中心としたシンコペーションのメロディではなく、ヴァイオリンの速いパッセージだ。弦楽器パートはこんな感じになっている(楽譜の各パートの箇所をクリックするとそのパートだけの演奏を聴けます)。

ちょっと省略した記譜になっているが、たいてい、ファーストヴァイオリンとセカンドヴァイオリンの右側に座っている人が1段目、左に座っている人が2段目を弾く。全体としてつなげると8分音符の連続なのだが、妙に2パートに分断されているので、リズムも面倒なものになっている。

2パートがヴァイオリン全体で混在するため、別に空間的に右、左と音が飛び交う効果は生まれない。ほぼ半分ずつ弾いているのだから、単純に計算すると音量は半分。あまり効果があるとは思えない。実際合奏すると、こんなかんじに普通につながって聴こえる。

このあと、このやっかいな分奏はなくなり、全員でクライマックスに近づいていく。 主旋律とも同期していい感じだ。しかし最後でなぜかまた、半分ずつの面倒な分奏になり、ヴィオラもこれに加わる。

最大音量部分で、国会の自民党議員分ぐらいの弦楽器群が、半小節ごとに休んだり弾いたりを交互にやるのだ。う~ん、なんの意味があるのだ?

確実にいえることは、これによって難易度が上がっていることだ。感動的な映画のクライマックスで、突然推理小説ばりのクイズを出されたようなものだ。やはり試練なのか。ベルリオーズは理解しがたい。

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