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Apple M1マシンでIntel版Windowsは動かないのか?

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昨年発表され、その省電力性と高性能さで大きな話題になっているAppleのM1チップですが、その上でWindows動作させるためのVMware FusionやParallels Desktopのような仮想化環境は未だ正式にはサポートされていません。昨年末にParallelsのプレビュー版が公開されていましたが、実際に使ってみたというレポートがちらほら出始めました。

M1搭載Mac用「Parallelsプレビュー版」で分かった高い互換性、MacのWindows環境は安泰

私は、弥生会計やBecky!など、いくつかどうしても捨てられないWindowsアプリがあり、以前はIntel MacにVMware Fusion+Windows10をインストールして使っていました。(今はWindowsラップトップを使っています)

弥生会計はクラウド版があるし、メールクライアントもいくらでも別の選択肢はあるのですが、人間、歳をとると新しいことを覚えられなくなります。いろいろ試してみた結果、やはり使い慣れたものが一番、となってしまいました。リモートデスクトップという考えもあるのですが、ネット接続が必須なのとパフォーマンスへの不安でなかなか踏み切れません。

ということで、Windows環境が使えないことが私にとってM1 Macへの移行の大きな障害になっていた(コロナによるテレワークで、そもそもノートPCが必要無くなってしまった、という側面もありますが)のですが、Parallelsが動いてMac上でWindowsアプリを実用的なパフォーマンスで使えるようになるのであれば、最大の障害は取り除かれることになります。

kamen_warui_businessman.pngしかし、記事を読んでいて「あれ?」と思いました。以下の部分です。

今回は、このParallels DesktopのM1版に、実際にARM版Windows 10とARM版Linux(Ubuntsu)をインストールして使ってみた。それがどれだけ簡単だったかをレポートする。

「ARM版Windows 10 !?」なるほど、そういうの、ありましたね。調べてみると、Parallelsを使ってみたという記事では、皆Arm版Windowsを使っています。しかし、私はParallels+Rosetta2の上で「Intel版Windows」が動くものと、勝手に思い込んでいました。それは、多分こんな記事を読んでいたからだと思います。

Apple M1 チップを搭載した Mac への Parallels Desktop 対応状況について

この記事の中で、昨年6月のWWDCでのAppleのYouTube動画へのリンクが張ってあるのですが、その動画ではParallelsの上でLinuxを動かすデモを行っています。このLinuxがIntel版なのかArm版なのかは説明されていないのですが、このデモが行われたのはRosetta2の紹介コーナーの中なので、当然Intel版のLinuxが動いているのだと思っていました。そこからの連想で、Windowsがサポートされるのであれば「当然Intel版Windowsだろう」と思ってしまったのでしょうね。実際はどうなのかわかりませんが、Intel版のParallelsが動いていますよ、というだけのデモだったのかも知れません。でも、そうするとParallelsの上で動いていたLinuxは、Arm版なのでしょうか?よくわかりません。。

いや、ちょっと待って下さい。最初の記事の中で動作確認したのは「ARM版のParallels Desktop」と書いてあります。そうすると、M1の上でArm版ParallelsにArm版Windowsを載せて動かしているということでしょうか?ということは、Rosetta2は関係ないじゃないですか。(複雑すぎ!)

それでは、M1 Macの上でIntel版Windowsを動かすことはできないのでしょうか?Rosetta2があれだけの互換性を実現できているのですから、何らかの形でこれを使うことができれば、Intel版Windowsを動かすことも不可能では無さそうに思えます。最初の記事でも、テクニカルプレビュー版の制限に「仮想マシン上でx86(つまりインテル系)のOSは実行できない」と書いてあることを受け、

これらの制限の最初のもの(x86は不可)は、M1チップ搭載のMacでは、当然のことと思われるものだろう。ただし、テクニカルプレビュー版の制限として挙げられているということは、もしかすると製品版では、インテルCPU用のOSの実行も可能になるのではないかという憶測も生む。

と書いています。かなり無理筋な期待なのかも知れませんが、そうあって欲しいです。

「M1はArmなんだから、Arm版Windowsでいいのでは?」という考えもあるでしょうが、私がIntel版に拘るのには理由があります。それは、Arm版Windowsの出来についてあまり良い情報が無いことです。最初の記事にも、Arm版Windowsはx86/x64アプリを実行可能とあり、互換性は確保できているようです。しかし以前書いたように、その実行速度はそれほど期待できるものでは無さそうなのです。そしてなにより、MicrosoftがArm版Windowsを一般向けに販売するかどうかという点が確定していません。それであれば、Arm版Windowsではなくて、Intel版WindowsをそのままRosetta2を使って動かせば速いのでは?と思えるからです。

しかし、チップが異なるのにバイナリをそのまま動かすだけでも相当なオーバーヘッドがかかるはずなのに、そこに仮想化を掛け合わせてさらに正常かつ高速に動作させる、というのは、想像以上に大変なことなのかも知れません。OS側の機能に依存する部分も多いと言うことです。いずれにせよ、こちらとしては待つ他は無いわけですが。。

 

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