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【32.4%】 不況期だからこそわかる、F君が売れる理由(1)

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 この時期の週末、新聞の折り込み広告を見ると、カーディーラーや家電店の決算セールのチラシが溢れていますね。まぁ、例年のことなんですが、その実態はといえば、今年はちょっと様相が違うようです。特に自動車販売の低迷は、極端な状態に陥っていますね。

  • 日本自動車販売協会連合会(自販連)が2009年3月2日発表した2月の登録車新車販売台数(特殊車、トレーラー等を除くナンバーベース)は、合計で21万8212台で、前年同月比【32.4%】の減少となった。
    2月の販売台数、減少率としては第1次石油危機の1974年以来35年ぶりの低水準。前年同期比割れは7カ月連続。減少率は1月の27.9%減を上回り、販売減に歯止めがからない状況が続いている。

     日経トレンディネット 3月2日付け記事より一部引用

 まさに付け入る隙のないような厳しい状況、といった感じです。自動車販売は、景気変動のバロメータのひとつであり、自動車産業に関わる人にとってはもちろんのこと、そうでない人々にとっても、他人事ではありません。以前のエントリー (【4,500億円】 トヨタにインサイトは作れない…んだろうか)でも書いた通り、私のいる名古屋地域にとっては、特に深刻です。

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 今月初めの週末、クルマの点検でなじみのディーラーを訪れたときのこと。店に入ると、決算セールで慌ただしく…はなく、予想外(予想通り?)に落ち着いた空気が漂っています。(これも前に記事(【27.3%】 景気がいいと判らないけど、不景気だとよく判ること)で紹介した、スーパー営業マンF君に会ったわけですが、彼の表情はとても明るく、いつものように元気いっぱいでした。聞けば、この2月の販売台数が、前年同月の実績台数を超えたというではないですか。それは本当にすごい。F君の実績からすれば、すでに店で一番の販売台数実績を誇り、一番高い目標を掲げているはずです。新人ならともかく、彼くらいの実績を持っている営業が、今年の状況下で、前年同月比で実績を上回ることは、かなり至難の業だと、シロウトの私でも推測できます。

 この環境下で、なぜ、売れるのか。自分自身、どう思っているのか。F君に単刀直入に聞いてみました。すると彼は照れながら、こんな話をしてくれました。

 「営業として、やらなければならない仕事を整理すると、大きく4つに分類できると思っています。それは、

  1. 絶対にやらなければならない業務
    …商談中のお客さんへの提案や、受注済みのお客さんの納品対応、それらに伴う社内手続きなどの事務作業ですね
  2. できるだけ時間を割いてやった方がいい業務
    …買い換え時が近い顧客へのフォロー、営業提案やニーズヒアリングなどです
  3. 1・2をこなした上で、余裕があればやった方がいい業務
    …お客さんとのコミュニケーションを増やすこと、商品知識を増やすことなどです
  4. 優先順位が低い、どうでもいい仕事
    …あるんですよ、そんな仕事が。どうでもいいならやらなくていいんですが、その判断をしないといけないですね

 1.は当然として。会社は、売れない時ほど、2.をちゃんとやりなさいと言います。早い話、お客さんを訪問しなさいと。お客さんの懐に飛び込めと。今は待っていては売れないぞって。現場第一ってのは、もちろん正解ですよ。でも僕が一番大事にしていることは、実は3.なんです。正直、やってることは、世間話をしてるだけなんですけどね。

 売りたくてギラギラした営業が、こっちの都合でお客さんに押しかけても、お客さんが受け入れてくれ、新車を注文してくれるほど甘くないと思うんですよね。しかも、この時期はどこのディーラーも必死ですから、同じような状態になる。こうなると、多くのお客さんは引いてしまいます」

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 なるほどね。でも、世間話しましょうって言ったらお客さんが乗ってくるほど簡単じゃないですよね。それこそ、甘くない。F君はどうやって世間話をする機会を作っているんでしょうか?

 ということで、次回はF君流2.の実践方法を明かしてしまいましょう・・・

  【1,000円】 不況期だからこそわかる、F君が売れる理由(2)へ続く
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