○人、○%、○億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう
トヨタ自動車、赤字転落へ…この報道がなされたのは、昨年のクリスマス直前。確かにインパクトありましたね。今回の景気変動のものすごさを象徴する事件として、日本はもちろん世界中のメディアが一斉に報道。結果的に、世界中で株価が下がり、いわゆる「トヨタショック」が走りました。以来、日本も米国も欧州も、その激震から立ち直ることができずに今日に至っています。
2009年3月期の連結営業損益が【4,500億円】の赤字に陥るというトヨタ自動車ですが、先に発表された来期の新しい経営布陣では、創業家一族の豊田章男副社長が社長に昇格。まれに見る厳しい局面を打開する陣頭指揮に立ちます。
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そのトヨタが、今度は1兆円のコスト低減に挑むという記事が出ています。
トヨタ、来期1兆円のコスト低減に挑む〜世界販売700万台での利益体質へ〜
元々、日本でも有数の高利益体質を誇るトヨタが、赤字脱出のために挑むのは、売上や市場の拡大策ではなく、やっぱりコスト低減になるのでしょうか。「乾いた雑巾をさらに絞る」と評されてきたトヨタ方式、まだ絞れるというのでしょうか。
2月6日に開かれたトヨタの第3四半期決算発表の席で、木下副社長が語った収益改善の方向性は、「固定費の10%削減」と「徹底的な原価低減」というものでした。先の日経ビジネスON LINE記事によれば、「固定費の10%削減」とは、設備投資の抑制による減価償却費の低減+人件費抑制であり、これで約5,000億円。そして「徹底的な原価低減」とは、原材料費や部品調達コストの削減で、これで5,000億円。トータルで1兆円という計算です。
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前提として、年間700万台にまで落ち込んでしまった生産規模が、簡単には拡大しないであろうという予測があります。また今期の赤字の根源とも言える為替変動リスクについては、先の1兆円には何も反映されていません。従って、仮にトヨタが目標通りコスト1兆円削減を達成したとしても、生産台数のさらなる減少や為替差損の状況によって利益額は大きく変動することになります。もちろん逆もあり得るわけですが。
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私が住む名古屋は、文字通りトヨタのお膝元。自動車産業は実に裾野が広い産業であり、近隣にはトヨタ関係企業はもちろん、トヨタを取引先とする企業が多数あります。通勤していても、道路の混み具合で、工場の稼働日が判ります。また私の友人知人にもトヨタ関係者がたくさんいます。私の前職では、トヨタ様が最大のクライアントでした。現職では、多くの学生がトヨタ関連企業に就職しています。トヨタとのつながりは、とにかく深いのです。トヨタがくしゃみをすれば、風邪を引いてしまうような人が、私の周りにはたくさんいるのです。
そんなトヨタが利益創出に取り組むとき、忘れて欲しくないのは、トヨタを支える、本当に、本当に多くの人たちのことです。乾いたタオルをさらに絞るとき、支える人たちに犠牲を強いるようなことだけは絶対にして欲しくないなぁと。
そして、言うまでもなく、ユーザーに利益がもたらされるコスト低減であって欲しい。そのためには、コスト削減という守りの作戦だけでなく、利益を生み出すための、攻めの戦略をもっともっと表明してもらいたいです。その昔、トヨタの作るクルマは、売れるだろうけど、おもしろくないクルマと言われました。機械としての、道具としての完成度は高いけど、クルマが提供する価値は、今やそれだけじゃありません。原価低減で、トヨタ得意の共通化を推し進めれば、一歩間違うと面白みに欠けるクルマばかりになってしまいかねません。金太郎飴は、ユーザーに受け入れられないはずです。
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要は、何のためのコスト削減なのか、という話だと思います。ホンダのインサイトは、徹底したコスト削減で、200万を切るハイブリッドカーとして蘇り、予定をはるかに上回る売上げを記録しています。コスト削減は、その活かし方で、ユーザーに受け入れられかどうかが決まるのです。トヨタがもし、原価を下げる目的を、自社の利益確保という内なる視点で考えているとすれば、それは世の中に受け入れられるでしょうか。トヨタが今、見なくちゃいけないのは、「インサイド」ではなく、「インサイト」のはずです。
これまでにプリンタ、テレビ、ミニノートなど、これまで低価格をキーワードにした話題を取り上げてきました。先のインサイトを例に挙げるまでもなく、クルマの世界でも低価格化の流れは止めることができないように思います。高い技術力があれば、高くても売れるという時代ではないのです。技術も高くて、低価格で、その上で、いかにユーザーが喜ぶクルマを送り出すのか。トヨタが背負う高い期待値は、それこそトップメーカーの宿命なのでしょう。。。
Special
- PR -| JRX | 2009/02/27 10:39 |
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> トヨタがもし、原価を下げる目的を、 過去の行動パターンを振り返れば、「自社の利益確保のためには手段を選ばない」というのが、同社のDNAですから、転換はなかなか難しいのではないかと思います。 今日、「ソーシャル・エンタープライズ」に関する講演を聞く予定ですが、欧州では「『未来を生きる人々』がちゃんと生活できる環境を維持する」ということを本気で考える人々や企業、あるいはそうした価値観やモチベーションが本当にドミナントなものになりつつあるようです。 欧州では、「持続可能な成長」といった無理を承知の言葉遊びではなく、SCP(Sustainable Consumption and Production)すなわち「持続可能な消費・生産」はいかにすれば可能か、といった精密な議論が根気よく進められつつあるそうです。 | |
| 中村昭典 | 2009/02/28 17:58 |
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JRXさん、ありがとうございます。 | |
| JRX | 2009/02/28 21:04 |
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中村さん ご返事ありがとうございます。 > 逆にやると言ったことはちゃんと実現する力を持っています。 そうですね。それについての実力(乾いたタオルを絞る力)は正に世界一ではないでしょうか。 これからのビジネスに求められるのは、社会における「次のルール」は何であるのかを知る感受性、あるいは、それがどういうものであるべきかを考えることができるコンセプト力であると思いました。 インサイトというクルマがヒットしたのは、消費者がそうした「Insight」を感じとった結果なのかもしれませんね。 | |
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