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「残業ゼロ!」時代の仕事術

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昨今、労働時間に対する規制が厳格化し、残業制限を行う企業が多々ある。そのような時間制約下で実践できる仕事のコツを4つご紹介したい。

労働時間の管理が厳格化

 近年、徐々に、労働時間に対する行政の規制が厳格化する趨勢にある。長時間労働による過労死や自殺などの痛ましい事例が報道された影響もあるが、これまで大目に見られる場合が多かった専門職や、高給で遇されるプロフェッショナルにあっても、長時間の残業を法令通りに規制しようとする動きが出て来た。

 また、行政による強制だけでなく、企業の経営者側でも、社員を長時間働かせることは、社員の健康管理や法的リスクあるいは風評などの、さまざまなリスクや能率の観点から問題であるとの認識が生まれている。

 例えば、時差のある海外とのやり取りも多く、ハードワークで有名な大手総合商社のような業態でも、残業を事前届出制としたり、一定の時間に消灯を強制したりして、社員の残業を減らそうとする動きが出て来た(もっとも、この会社の場合、早朝出勤が奨励されているので甘くはない)。

 また、経営者は、残業の制限によって人件費を抑えることが出来る点にも着目している。残業時間の上限制限あるいは、もっと極端な場合、「残業ゼロを原則とする」といった施策が打ち出される可能性もある。

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 エンジニアである読者諸氏は、残業について、どうお考えだろうか。エンジニアには、効率を重んじる合理的な人物もいるのだろうが、それ以上に、時間を掛けてでも完成度の高い仕事をしたいと考える完全主義者が少なくないように思われる。こうした方の場合、残業代は一定以上要らないから、気が済むまで時間を使わせて欲しいと思うような場合もあるのではないだろうか。

 その気持ちは、筆者も分かる積もりだ。筆者は、金融業界で、アナリストやコンサルタントのような「アウトプット」(レポート、論文、プレゼンテーションなど)で評価される仕事をして来たので、使いたい時に時間を使って仕事が出来ることのありがたさがよく分かる。また、例えば、新しい仕事に慣れてスキルを上げようとする時に、少々能率が悪くとも長時間納得が行くまで仕事をすることの効用もしばしば感じてきた。

 しかし、時代は変わっている。

 残業には上限があるのが当たり前で、場合によっては、「我が社は残業ゼロを基本方針とする」と社長がいつ宣言してもおかしくない状況が直ぐそこまでやって来ている。

 こうした場合、「残業ゼロ」によって自分が自由に使える時間が増えるメリットに目を向けて、状況の変化に適応するのが賢いビジネスパーソンの道だろう。

時間制約下の仕事術

 さて、オフィスで仕事をする時間を制約された場合(この場合、外部からのリモート・ログインも遠からず制約される可能性が大きい)、どのように仕事をこなすといいのだろうか。

 もちろん、「大丈夫、任せろ!」とまでは言えないのだが、筆者なりに、長年時間の制限と戦って仕事をしてきたことで掴んだコツが4つほどあるので、ご紹介しようと思う。

【コツその1】「締め切り」を最大限に活用する。

 筆者は、近年、「締め切りこそが、人類の最大の発明だ」とつくづく思うに至っている。世の中に、締め切りというものがなければ、人々の仕事の能率はおそらく現在の半分に遙かに満たないのではないだろうか。

 人は締め切りがあればこそ、それまでに仕事を完成させようとして努力をするし、効率の良い努力のための段取りを頭の中で考えるものだ。

 例えば、単に筆者が怠惰で自己管理ができていないからなのかも知れないが、テーマも決まらないし、書く作業も大変だという原稿が、締め切りから逆算して、何とか書けるという時間からなぜか書き始めることが出来て完成する、という経験がしばしばある。これは、「締め切り様のおかげだ」と言うしかない。

 実は、現在、この原稿も、「締め切りまで、あと何時間(何日ではなく、何時間だ)」という条件下で書き始めることが出来た。

 読者も、受験生時代に、自宅で時間の制約なしに問題を解くよりも、時間の制約がある試験時間の中の方が効率良く問題を解くことが出来た、といった経験をお持ちではないだろうか。

 数多ある仕事のコツの中でも特別に有力なものの一つとして、仕事に、緊張が途絶えない程度の長さの時間の「締め切り」を設けることがある。上手に時間を区切って締め切りを作ることが出来ると、仕事の能率は少なくとも数十%増しになる。

 この方法の成否の鍵は、(1)仕事と締め切りの区切り方と、(2)締め切りの真剣度をいかに確保するか、の二点にある。

 締め切りとなる仕事の単位に対応する時間設定が長すぎても短すぎても上手く行かない。集中力が切れない程度の時間であって、集中によって時間を短縮できる程度の仕事と制限時間を設定できるといい。この加減には経験が要る。

 尚、「締め切り」の緊張感には小さくない効果があるが、緊張の効果を連続して取ろうとするのは愚策だ。一つの締め切りと、次の締め切りの間には、「遊び」(≒気分転換)が必要だ。こうした設定の具合は、仕事の能率に大いに影響する。たとえば、締め切りによって30%能率を改善したなら、意識的に10%に相当する時間くらいの休みを取ることが効果的な場合が多い。

 また、自分で設定した締め切りにも、それなりの有効性はあるのだが、自分で修正が可能なのでどうしても真剣味を欠くことが多い。

 理想的には、職場の上司が部下の能力と仕事の進捗状況を把握しながら、適切に「締め切り」と息抜きを設定できるといいのだが、これが的確に出来る優れた上司は少ないだろう。

 個々のビジネスパーソンは、自分と自分が上手に約束を結べるような工夫が必要だ。

【コツその2】やることの優先順位を先に決める

 できることが望ましい複数の仕事があって、同時に時間に厳しい制約がある場合、大事なのは、仮にすべての仕事が出来なかった場合でも、重要な仕事が出来ていて、出来なかった仕事のダメージが(許容範囲にはいるくらいに)小さいことだ。

 そのための方法ははっきりしている。優先度の高い仕事から手をつけることを自然だと思うように、自分をコントロールすることだ。

 一日、一週間、一カ月など、時間の単位は様々だが、それぞれの期間について、やらなければならない仕事が複数あるだろうが、例えばそれらをメモに書き出して、優先順位の番号を付けることが有益だ。

 組織で働く場合、「できたらやりたいけれども、できなくても何とかなる」という仕事が実は少なくないはずだ。

【コツその3】「期限前の80%は95点だ」と心得る

 仕事時間に制約が生じた場合に最も困るのは、仕事が予定通りに完成しないケースだ。大凡のプロトタイプは早めに出来ていたのだが、その後に納得の行く完成品にならなかったというような場合が「マズイ典型例」だろう。

 上司の立場から部下を見てみよう。任せた仕事に対して、どの程度の完成度で応えてくれるかは不確実だ。上司としては、部下の仕事の具合を早く把握して、完成度が不十分であれば、その後に対策を講じる余裕を持ちたい。

 エンジニア読者の間にもいらっしゃるのではないかと想像するのだが、真の制限時間ぎりぎりまで仕事が完成しない部下は、上司にとってありがたくない。

 仮に、完成度は80%であっても、予定よりも早く仕事の成果を出してくれる部下には、90点、いや、95点くらいの評価をしたいと思うのが上司にとっては現実なのだ。真の締め切りよりも早い時点で、完成に近い仕事の途中経過があるなら、なによりも安心だし、完成度に不足がある場合にも、完成度を上げる方策を講じることが出来る。

 「期限よりも前に余裕を持って出来た80%の仕事の評価は、95点なのだ!」と心得て時間を短縮する方法を考えよう。

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 エンジニア読者の中には、自己評価で「100%完成!」と思えなければ納得できない方が少なくないのではないか。しかし、締め切りギリギリに自分が思う100%の仕事よりも、締め切りのかなり前に提出した80%の出来の仕事の方が、上司にとっては価値があることを知っておくべきだ。

 この場合、先の【コツその2】とも関係するのだが、自分にとってどの仕事がどうしてもやらなければならない重要な仕事なのか、或いは完成できなくても構わない仕事なのかの見極めが重要になる。これは、反対方向から見ると、何を手抜きしていいかの判断をいかに上手く出来るかが重要になるということだ。もちろん、この点に関しても上司の役割が重要だ。

【コツその4】無意識の思考を味方につける

 仕事の能率を上げる上で「締め切り」が効果的なのは前述の通りなのだが、常に締め切りに追われる状態を作ることが効果的なのではない。当然、気分転換の時間は必要なのだが、すっかり仕事から離れる気分転換の時間を上手に使うことが必要だ。

 一日の中の休み時間や週末など、仕事を離れる時間を充実させることが大事なのだが、同時に、仕事を離れている時間にも、無意識の中で仕事を効率的に進めるための考察が進む事を意識的に利用できるといい。

 人間は、しばしば、自分が最も重要だと思っていることを、思考のバックグラウンドで考え続けているものだし、気分を変えて別のことをしている時にこそ、最も重要な問題の解決策を思いつく場合が多い。

 自分が無意識の間に考える能力を、有効に活用したい。

 時に迷惑な時間制約であるかも知れないが、「残業ゼロ」(ないし、残業時間の上限制約)は、ご自分の仕事の能率向上の契機になるかも知れないチャンスでもある。残業時間の制限に「無理だ!」と感じることがあるかも知れないが、その制約に適応することのプラス効果に大いに期待したい。

 人間は案外柔軟なものだ。

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