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エンジニアも考えておきたいセカンド・キャリア

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セカンド・キャリアについて、何歳から考え始め、どのような準備が必要なのだろうか。

「人生100年時代」のセカンド・キャリア論

 エンジニアの皆様は、ご自分の「セカンド・キャリア」について、どのようにお考えだろうか。セカンド・キャリアとは、「定年」前後で会社を離れた後の仕事の仕方を指す言葉だが、寿命の延長と共に、近年、その重要性がより注目されるようになっている。

 現在、20代、30代くらいの方だと、まだセカンド・キャリアに対するイメージを持ちにくいかも知れないが、この世代では、「平均的な自分の寿命は90歳くらい、長寿の場合は十分100歳超えがあり得る」という前提で将来を考える必要があるだろう。

 筆者は、現在、30代以上の方には「95歳位までの人生を想定して下さい」という前提で、仕事やお金のプランニングについて説明しているが、いわゆる定年を65歳と見ると、その後の「老後期間」が30年にもなり、率直に言って、時間と元気を持て余す一方で、働かなければお金が足りなくなる可能性が大きい。

 読者は、現在お勤めの会社の「定年」が何歳なのかを把握しておられるだろうか。一般に多いのは、60歳が「定年」で、65歳まで以前とは異なる条件で(年収が大幅にダウンして、管理職ではない場合が多い)「再雇用」される、という条件だ。

 さて、その後はどうするのだろうか? また、どのような準備が必要なのだろうか?

45歳から真剣に考えよ

 セカンド・キャリアについて「具体的に」考え始めるべき年齢をズバリ挙げるとすると、「45歳」だ。セカンド・キャリアへの準備には、かなり長い期間を要するのが普通だ。

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 セカンド・キャリアだけでなく、仕事一般に言える事だが、仕事をして稼ぐためには、自分に、(1)「スキル」と(2)「顧客」の二つが必要だ。ビジネスパーソンは、この2点に関しては、常に自己点検しておく必要がある。

 例えば、エンジニアであれば、その専門知識の基礎を大学ないし大学院で身につけた方が多いだろうが、10年、20年と時間が経過した時に、大学時代の知識をベースにしていて、新しいビジネスに対応できるか、という問題が生じる。自分をいかに再教育するかという問題は、昨今注目が集まる「人生100年時代」の議論にあっても、重要性が強調されている。

 「AIに仕事を奪われる」といった心配以前に、同一職種内で対人的な競争力を失う心配をしなければならないことが多かろう。

 アカデミックな知識が重要な職種であれば、会社で働くのと並行して、学会などの会員となってアカデミックな研究の動向をフォローしておくべきだろうし、自分の専門分野の専門誌や論文などを日頃から読み込んでおくことが重要だ。

 再教育というと、職を離れて大学や大学院に行ったり、会社の仕事をこなしながら社会人大学院に通ったりする状況をイメージするかも知れない。しかし、前者では、離職が人材価値の上でマイナスに働きやすいし、再び同様に職に就くことが難しくなる場合が多いので、リスキーだ。また、後者も、両方をこなすことが大変な割には、人材価値のアップにつながらないことが多い(社会人大学院卒の履歴書は、意地悪く読むと「本業が暇だった人」と解釈できる)。

 さて、セカンド・キャリアにあっても、自分の「スキル」に加えて、「顧客」が重要だ。会社に勤めているという状況では、会社が自分の顧客であり、上司なり同僚なりが自分の仕事を必要としてくれるなら問題はないが、セカンド・キャリアを考える上では、例えば「60代の自分が働く上で、必要なスキルと、自分の顧客になってくれるのは誰か」を想定し、時間を掛けて具体的に両方を獲得して行かなければならない。

 例えば、弁理士、社会保険労務士、税理士、といった資格が必要ないわゆる「士業」で独立を目指すのであれば、先ず、資格を取るために勉強して、試験に合格するまでの時間が必要だが、それだけでは全く不十分であり、将来の顧客を獲得しなければならない。

 近年は、弁護士や公認会計士といった、いわゆる大型資格を取っても、それだけでは働き口が無い場合がある「士業過剰時代」だ。また、会社員時代に、会社の仕事を通じてつながっていただけの相手との縁は、自分が会社を離れると消滅する場合が多い。「本当に顧客になってくれるような人との人間関係」を十分に作って行くには何年もの時間が掛かるのが普通だ。

 飲食店を経営したいとか、ペンションのオーナーになりたいといった、全く方向の異なる起業を目指す場合にも、新しい仕事に必要な知識やスキルを身につけなければならないし、入念なマーケティング調査が必要だし、顧客に対する目処を付けてから開業する必要がある。

 専門的な技術を発展途上国の企業に伝えるセカンド・キャリアを思い描くエンジニアもいらっしゃると思うが、この場合には、外国語の習得や外国生活に対する準備が必要だし、かなりの将来まで、自分のスキルの価値を保つ継続的な努力が必要だ。

 また、エンジニアのような専門職では、将来は、大学の先生をやりたいという方が少なくないと思うが、率直に言って大学の先生は「狭き門」だ。先ず、応募資格として博士号取得以上が条件になることが多いし、博士号を持っていても若い人も含めて希望者が殺到して、選考を通るのは大変だ。非常勤講師の仕事(待遇は良くない事が多い)などを引き受けつつ、大学関係者との人的パイプを作って、ポストが空いた時に備えるような、長期間に亘る営業活動が必要であり、それでも望むポストが得られるかどうかは不確実だ。

 こうして、具体的に考えてみると、「45歳から行動開始」が必ずしも早くないことがお分かり頂けよう。また、大きく分野を転換するような将来を考えているのであれば、30代のうちから準備に掛かる人がいても、全くおかしくない。

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 尚、60歳定年の後の65歳までの「再雇用」は、収入・権限(責任)・やり甲斐、の何れもが不足する場合が多く、概して不評だ。いきなり無収入になるよりはいいとしても、「65歳以降の仕事と収入」の問題は依然として残るし、スタートが遅くなることで、セカンド・キャリアとして想定できる仕事がより小さな物になってしまう可能性がある。「再雇用」に頼りながら、次を考える、という状況はできれば避けたい。

筆者のセカンド・キャリア戦略

 終わりに、一つの進行中の参考ケースとして、筆者のセカンド・キャリア戦略について、簡単に述べてみる。

 筆者がセカンド・キャリアを意識し始めたのは、42歳になる少し前くらいの時だった。早めに考えたのは、それまでに転職を繰り返していて、先のことを考える癖が付いていたからだろう。また、退職金や企業年金が期待できない、という将来に想定される状況も問題だった。

 当時は、外資系的なそこそこに高額な年俸制で、ある保険会社に勤めていて資産運用の仕事をしていたが、職場に不満を持っていた。外資系の運用会社にでも転職しようかとも思ったのだが、魅力的に思える運用会社が見つからなかったことと、60歳から先の仕事の見通しが立たないことで躊躇した。

 その時に考えたのは、一方でサラリーマンをやりながら、将来も継続できる仕事の形を作ることを並行して目指そう、ということだった。

 筆者のような凡人が、いきなりフリーランスとして独立したり、会社を作ったりするのは、リスクが大きいように思われたので、あるシンクタンクに「給料は低くていいから、時間と副業を自由にして欲しい」という条件で転職した。

 その後、別の会社にも同時に勤めたり、ベンチャーに関わったり、試行錯誤があったが、原稿や書籍の執筆、講演、テレビ出演など、評論家的な仕事が増え、時間も収入も評論家仕事の方が大きくなった。

 一方、「将来も続けられる仕事の環境」を考えると、仲間がいる方がいい。その後に、サラリーマンとしての居場所を、シンクタンクからネット専業の証券会社に移し、同時に友達と一緒に投資と投資教育のコンサルティング会社を標榜する小さな会社を作った。現在は、この会社を評論家活動の受け皿にもしながら、ビジネスをじわじわと育てたいと考えている。

 筆者のように、いきなり独立する勇気のないサラリーマンには、ご参考になるのではないかと思って敢えて自分の話をご紹介した次第だ。

 もっとも、現在はまだ「途中経過」に過ぎない話であって、こうすれば上手く行くという話ではないことを付け加えておく。

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