「組織のスキル」と「個人のスキル」〜AI時代の実務実践を支える2冊
このたび新著『【図解】コレ1枚でわかるAI戦略 ビジネスパーソンが主導権を握るための「知識と思考」』(技術評論社、11月11日 Amazon出荷)を上梓いたしました。このブログで連載しているAIについての解説は、本書の原稿を基に執筆しています。
本書は、今年6月に上梓した『AI実践ドリル30日チャレンジ』(日経BP)と対をなす1冊です。前著が、AIを使って新たなビジネス価値を生み出す「個人のスキル」を磨く本であるとすれば、本書は、企業がビジネスとしてAIプロジェクトに取り組む「組織のスキル」を磨く本です。どちらも、AIを解説することが目的ではありません。あなたの実務に、明日から役立つこと。それだけを考えて書きました。この2冊を、どんな思いで、誰に向けて書いたのか。少しお話しさせてください。
『【図解】コレ1枚でわかるAI戦略』〜「組織のスキル」を磨く
本書は、初心者向けの手引きでもなければ、エンジニアのための技術書でもありません。その中間に位置する、これまで誰も本格的に向き合ってこなかったテーマに挑んだ1冊です。
正直に申し上げれば、入門書ほど簡単ではありません。しかし、事業の収益や成長に責任を持つあなたが、AIプロジェクトの主導権を握ろうとするなら、この程度のことは知っておいていただきたい。そう考えて、何を知り、どう考えるべきかを整理し、豊富な図解とともに解説しました。
AIに限らず、ITに関わる取り組みは本来、事業に責任を持つビジネスパーソンが主導権を握って進めるべきものです。しかし現実には、技術の難しさを理由に、ITベンダーやSI事業者に任せきりにしてしまうプロジェクトが少なくありません。とりわけAIプロジェクトは、従来のITプロジェクトにはない特異性や技術の急速な進化もあって、「専門家への丸投げ」に陥りがちです。これでは、事業の成果に結びつけることはできません。
そこで本書では、AIプロジェクトの責任を託されたあなたが、専門家であるエンジニアと対等に議論し、プロジェクトの主導権を握れるように、AIに関わる技術を数式やプログラム・コードを使わず、概念として理解できるように解説しました。あわせて、AIプロジェクトに特有の法律や規制、プロジェクト管理といった実務実践に欠かせない知識も整理しています。
さらに、AIに関連する数学的知識をまとめた別冊(PDF版)と、本書の全図表(PPTX版・ロイヤリティ・フリー)を、オンラインからダウンロードいただけるようにいたしました。社内の勉強会や提案資料に、そのままお使いください。
また本書は、AIプロジェクトをユーザー企業に提案するITベンダーやSIerの皆さんにも、お役に立つはずです。人月ビジネスの前提が崩れつつあるいま、お客様の事業に寄り添う力はこれまでにも増して求められ、AIはそのための「前提」となりました。一方で、AIプロジェクトには従来のITプロジェクトにはない特徴があり、これを理解しないままに取り組めば、お客様をミスリードしかねません。そうならないための知識を、ぜひ本書から得てください。
『AI実践ドリル30日チャレンジ』〜「個人のスキル」を磨く
本書は、AIの使い方を教える本ではありません。「プロンプト集」でもありません。どれほど見事なプロンプトのテンプレートをかき集めても、「本当の仕事」には役立たないからです。ねらいは、「新規事業の立ち上げ」という、いままさに多くの企業で求められている課題を遂行するために必要な知識や考え方を、AIを使った実践を通じて体得していただくことにあります。
本書があなたに課すミッションは、「3億円の新規事業計画を作る」こと。素人には不可能に思えるこの課題に、1日1問、30日間のドリルで挑んでいただきます。自社の強みの発掘から、顧客の理解、市場・競合の分析、ビジネスモデルの構築、収益計画とリスクの検証、そして役員への提案プレゼンまで。事業企画のプロセスには、市場分析から収益化まで、あらゆるビジネスパーソンに必須の「総合力」が詰まっています。だからこそ、新規事業を題材に選びました。ここで身につく思考法は、新規事業の担当者だけでなく、あなたの普段の仕事の質を根底から変えるはずです。
世の中のAI入門書の多くは「How(どう使うか)」を教える手引きです。しかし、AIがメールを書き、資料を要約することが当たり前になった時代に、「How」だけを学んでも意味がありません。本当に必要なのは、「What(何を生み出すか)」に挑む実践の場です。本書は読んで満足する本ではなく、手を動かして解くドリルです。高度なテクニックは、あえて使っていません。シンプルな言葉だけでAIは仕事に十分すぎるほど使える。それを示すために、業務でそのまま使えるプロンプトのサンプルを30以上収録しました。
新規事業の大きな壁は、リサーチや資料作成といった「知的力仕事」の重い負荷でした。AIはこの壁を砕きます。残るのは、「何をやるか」を決める意思と情熱だけ。そこに集中できれば、誰でも新規事業を構想できる。本書は、そんな新しい可能性の地図を示します。
AIを「便利な道具」としてではなく、自らの感覚と知性を拡張する「知性の強化スーツ」として捉えてください。30日間のミッションを終えたとき、あなたの頭の中は、AIを前提とする社会にふさわしい思考回路へとアップデートされ、同時にAIを実務で使いこなすスキルも磨かれているはずです。AIに使われ、仕事を奪われる側ではなく、AIを使いこなして自分自身をアップグレードする側へ。これもまた、これまでにない視点の1冊です。
2冊をあわせて読んでほしい理由
AIは「使うと便利なもの」から「使うことが前提のもの」へと、その位置づけを変えました。そこで求められるのは、仕事の効率を上げる「個人のスキル」と、業績に貢献する「組織のスキル」の両方です。あなた一人がAIを使いこなせても、組織がプロジェクトを主導できなければ、事業の成果にはつながりません。組織に戦略があっても、現場のあなたにAIで考え抜く力がなければ、戦略は動きません。
既存の業務手順やビジネスモデルを前提に「AIで何ができるか」を考えるのではなく、AIを前提に既存を新しく作り直す、すなわち「AIでどう変わるか」という視点で実務実践に取り組むあなたを支えたい。2冊に共通するのは、そんな思いです。
AIは使っているものの、働き方が大きく変わった、会社が変わりつつある、そんな実感がなかなか持てない。もし、そんなモヤモヤしたものがあるのなら、まず自分の思考回路を更新したい方は『AI実践ドリル30日チャレンジ』を、組織としてAIプロジェクトの主導権を握りたい方は『【図解】コレ1枚でわかるAI戦略』を。そしてできれば、2冊をあわせて手に取ってください。あなたの明日の仕事が、きっと変わります。
『【図解】コレ1枚でわかるAI戦略』目次
第1章:AIの現在地〜人間とテクノロジーの役割を再定義する
- テーマ1:そもそも「モデル」とは何か?
- テーマ2:生成AIの根幹「基盤モデル(ファウンデーションモデル)」
- テーマ3:AI、機械学習、ディープラーニング、生成AIの「包含関係」
- テーマ4:ビジネスで必須となる2つのフェーズ:「学習」と「推論」
- コラム1:「AGI」とは何か?
- テーマ5:AI進化の歴史〜「識別型」から「生成型」、そして「自律型」から「AGI」へ
- コラム2:「身体性を持ったAGI」へのロードマップ
- テーマ6:AIの強みと限界
- テーマ7:AI開発で鎬を削る、巨大企業たち
- テーマ8:AIの現在地と、ビジネスにおける「AI」の再定義
- テーマ9:人間との協働モデル〜AIに任せてはいけないこと
- コラム3:「センス」と「利他の精神」が羅針盤
第2章:業務への組み込みと自律型AI(Agentic AI)の実装
- テーマ1:プロンプトエンジニアリングの本質は「指示の構造化」にある
- テーマ2:自社独自の知識をRAGでAIに付与する
- テーマ3:ファインチューニングによりモデルを「専門家化」する
- テーマ4:AIaaSによるスピード導入の定石
- コラム1:タスクを各モデルへ自動で割り振る「AIモデルルーター」
- テーマ5:自律型AI(Agentic AI)の出現と動作原理
- コラム2:4段階のAI×ビジネス活用
- テーマ6:複数エージェントの協働(マルチエージェント)と新標準規格MCP
- テーマ7:AI組み込みによる次世代ユーザー体験(UX)の設計思想
- テーマ8:ノーコード・ローコードAIツールの実務価値とセキュリティガバナンスの限界
第3章:第3章:開発最前線とAIインフラの進化
- テーマ1:Transformer(トランスフォーマー)はなにが革命的だったのか
- テーマ2:リーズニングモデル(推論強化モデル)の衝撃
- テーマ3:推論専用チップの台頭
- テーマ4:小規模言語モデル(SLM)とローカルモデル(AI > PC)がもたらす自律分散型インフラ
- テーマ5:バーティカルAI(特化型モデル)の選択基準
- テーマ6:E2Eマルチモーダルモデルによるリアルタイム対話の進化
- テーマ7:説明可能なAI(XAI)の実務上の要求
- テーマ8:現実世界の物理法則を予測・理解する「世界モデル」
- テーマ9:物理空間で自律駆動する「フィジカルAI(ロボティクス)」への接続
第4章:AIプロジェクトの企画と推進
- テーマ1:AIプロジェクトの全体像は、課題から逆算せよ
- テーマ2:自社の課題を発見する「業務機能別ユースケースの見取り図」
- テーマ3:AI推進チームに必要な3つの役割(ビジネス、データ、エンジニアリング)
- テーマ4:全社的なAIリテラシー向上のための「リスキリング戦略」
- テーマ5:死の谷に陥らないためのPoC(概念実証)の進め方
- テーマ6:RFP(提案依頼書)に絶対に盛り込むべきAI特有の要件
- テーマ7:AIプロジェクト特有のコスト構造とROIの正しい見積もり方
- コラム1:生成AIサービスの料金モデル:仕組みと賢い使い分け
- テーマ8:生成AI導入の4大アプローチとベンダー評価軸
- テーマ9:AIの精度を決める「良質なデータ」の条件とデータ・サプライチェーン
- テーマ10:開発手法のベストプラクティス(SaaS利用 vs API連携 vs > 独自モデル構築)
- テーマ11:システム開発を再定義する「AI駆動開発」と内製化モデル
- テーマ12:導入を成果に変える「定着マネジメント」〜 > 死の谷の先にある「定着の谷」
- テーマ13:AIプロジェクトの全体を俯瞰しその進め方を整理する
第5章:リスク回避のためのAIガバナンス
- テーマ1:企業として備えるべき基本のAIルール「社内AI利用ガイドライン」の作り方
- テーマ2:生成AIと著作権〜実務的な対処法
- テーマ3:情報漏洩リスクとセキュリティ対策〜クラウド利用とローカルモデルの使い分け
- テーマ4:AIのバイアスと公平性の問題〜企業のブランドリスクへの対応
- テーマ5:国内外のAI法規制の全体地図〜ルールを「設計要件」として読み解く
- テーマ6:ディープフェイクと偽情報〜「攻撃される側」のリスクへの防衛
- テーマ7:業務の効率化から「事業の再設計」へ〜AIが変えるビジネスモデル
- コラム1:AI主権とは何か
『AI実践ドリル30日チャレンジ』目次
STEP00 作戦開始 "知性の強化スーツ"を着用せよ!
STEP01 ターゲット設定 見えてなかった自社価値を探せ!
- DAY01 ロール付与×ビジネス案を3つ作らせる
- DAY02 特徴抽出×雑多な情報から強みを見いだす
- DAY03 PEST分析×コンサル手法で外部環境分析
- DAY04 マトリクス分析×有望市場のリストアップ
- DAY05 情報構造化×事業ロードマップを生成
STEP02 マーケティング 他社が知らない顧客の悲鳴を聞け!
- DAY06 ペルソナ分析×リアルな顧客の姿を実感
- DAY07 カスタマージャーニー×顧客の行動を時系列で理解
- DAY08 ロールプレー×AI顧客からニーズを聞き出す
- DAY09 仮想ブレスト×アイデアの洪水を作らせる
- DAY10 差異化分析×心に響く「価値」を探す
STEP03 市場・競合分析 AI調査と分析で勝てる戦略を作れ!
- DAY11 フェルミ推定×推論機能で疑似市場調査
- DAY12 Webリサーチ×競合リストアップと整理
- DAY13 口コミデータ分析×競合製品の弱点推測
- DAY14 ポジショニング設定×情報集約し独自性を言語化
- DAY15 ポジショニングマップ×製品の「勝ち筋」を視覚化
STEP04 ビジネスモデル構築 価値を届け、稼ぐ仕組みを見いだせ!
- DAY16 MVP定義×コア機能と不要機能の選別
- DAY17 マネタイズ設計×もうかるモデルを探し出す
- DAY18 エンゲージメント設計×購入後UXをシミュレーション
- DAY19 GTM戦略策定×初期顧客の獲得戦略を練る
- DAY20 リーンキャンバス作成×ビジネスモデルを整理
STEP05 収益計画・リスク検証 必要な資金とリスク、収益構造を見積もれ!
- DAY21 予算編成×金額感とリスクを網羅
- DAY22 価格プラン設計×行動経済学で「松・竹・梅」
- DAY23 収益計画×ゴールからシミュレーション
- DAY24 リスクマネジメント×AI仮想敵でリスクを洗い出す
- DAY25 撤退基準策定×「やめどき」を数字で確定
STEP06 提案プレゼン 役員の心に響くストーリーを紡げ!
- DAY26 構成設計×スライド編成を自動組み立て
- DAY27 ストーリー導出×プレゼン導入に情熱込める
- DAY28 メッセージ抽出×ストーリー要素を自動整理
- DAY29 Q&A想定問答作成×AI役員と仮想セッション
- DAY30 ポストプロダクション×プロ視点で瑕疵あぶり出し