オルタナティブ・ブログ > 読むBizワクチン ~一読すれば身に付く体験、防げる危険~ >

商社マンの営業として33年間(うち海外生活21年間)、国内外で様々な体験をした。更に、アイデアマラソンのノートには、思いつきを書き続けて27年間、読者の参考になるエピソードや体験がたくさんある。今まで3年半、ITmediaのビジネスコラム「樋口健夫の笑うアイデア動かす発想」で毎週コラムを書き続けてきたが、私の体験や発想をさらに広く提供することが読者の参考になるはずと思い、ブログを開設することにした。一読されれば「読むワクチン」として、効果があるだろう。

恐怖のダダ漏れ飛行機

»
飛行機珍体験集 その5 
            恐怖のダダ漏れ飛行機


 サウジアラビア時代に、家族で休暇を取りケニアのサファリに出かけた。
1983年のことだ。1週間以上、有名な自然公園を車で周り、素晴らしい動物たちをたくさん観た後、ケニアの東海岸のモンバサへ。美しい海を堪能した。 
数日間モンバサで過ごして、モンバサーナイロビージェッダと、乗り換えでサウジアラビアに戻る予定であった。

 モンバサからナイロビまでは、問題はなかった。ナイロビの空港で出国手続きをして、サウジアラビアのジェッダ行きのケニア航空に乗るために、広いゲートで待ち始めた。
搭乗予定時間を過ぎても、アナウンスが無い。出発時間を半時間ほど過ぎたら、やはり誰もが心配になる。ゲートのカウンターにいる係官に問い合わせたら、「エンジンの調子が悪いので、機長が調整中だ」という。確か、ボーイング727だったと記憶しているが、間違っているかもしれない。

「まいった。こんな飛行機に乗るのか」
3時間ほど遅れが生じている。これはもう空港の中で泊まりになるかと思った時、突然、アナウンスがあって、
「エンジンが掛りましたので、急ぎ搭乗してください」と係官が叫んだ。みんな掛け足で搭乗した。席に座って、「さあ、行くぞ」とシートベルトを掛けて、待っていたが、また1時間も経過した。
「技術的問題が解決していないので、もう一度、降りてください」と、アナウンスがあって、乗客全員がもう一度、ロビーに戻った。午後4時ころ出発する予定だったのが、もう辺りは暗くなってきていた。
我々の落胆は大きかった。(これは相当の長丁場だ)私の家族にとっては、三男がまだ赤子だったから、オムツの替えが足らなくなってしまうのが、問題だった。

 ロビーに座って数十分したら、またまた係員が、大声で「エンジンが掛りましたので、急いで搭乗願います」と、叫び、どたばたと難民が乗るトラック並みの忙しさで、全員(?)が飛行機に飛び乗った。
 
やれやれ、エンストを起こしたバスをみんなで押して、エンジンが掛ったからさあ、乗ろうという感じだ。飛行機で、こんなのありか?
 
我が家族は5名(赤子を含んだ子供が3人とヨメサン)だったから、最前列を横一列に座った。私たちの前は搭乗したドアとトイレとスチュワーデスの座席とギャレーがあった。ギャレーの手前はカーテンが掛っていた。

乗客全員が着席して、ドアが閉められ、飛行機がタラップから外れて滑走路に向けて動き始めた時は、そんなに異常はなかった。ヨメサンは三男の面倒を見て、私は長男と二男の面倒を見ているが、子供たちはもう疲れて、座席に付いた途端に寝始めた。
飛行機が、滑走路を走りだした途端に、何か違った。

「これは一体何だ」と、その飛行機が普通ではないことに気が付いた。それは機内というか、私たちの座っているところの前で、とほうもない轟音がするのだ。
「ゴー」という音がする。信じられないほどの大きな音だった。ヨメサンと話が聞こえないほど大きな音。それでも、飛行機は無事に上昇していった。
シートベルト着用のサインが消えたので、私はおそるおそる、ギャレーのカーテンを覗いて、

「この音は一体何ですか」と、スチュワーデスに尋ねたら、
「ああ、ドアの隙間から、空気が漏れている音です。ただ、同じ量の空気をコンプレッサーで取り入れていますから、機内は大丈夫です。
「はあ、そうなんですか。そんなものですか」と、理由を聞いて席に戻ったが、がっくりときた。空気がダダ漏れの飛行機なんてあるのか。
「大変な飛行機に乗ってしまった」とヨメサンに話したが、
「気にしないで、寝た方がよいわよ。もうどうしようもないじゃない。乗ったんだから」と、堂々たるものだ。男に生まれてくればよい度胸だ。「私ね、さっき、ロビーで待っている間に食べたから、何も食べないでとにかく寝ます。起こさないでね」とさっさと寝てしまった。子供たちも、もう寝ている。

私一人がどうしようもなく、おろおろしていた。
「ええい、こうなったら」と、ギャレーに行って、スチュワーデスに「食事は要りません。寝ますが、その前に、ウイスキーのミニチュアボトルを4本ください。飲みます」と頼んだ。「氷は要りません。ミネラルウォーターだけです」と、貰ってきて、グビグビと飲んだら、今日一日の疲れがどどどっと出てきて、私は寝込んだ。起きたら、早朝のジェッダに到着していた。
禁酒の国に、若干二日酔いで到着した。

あの轟音を立てて飛んでいたケニア航空、これも私の関心の高い航空会社であったが、2000年1月に、アフリカの西部海岸のアイボリーコーストの首都アビジャンで、離陸直後に墜落して、169名が全員亡くなっている。同じ機種かどうかは知らない。(ケニア航空は2007年にもボーイング737が、カメルーンで空中爆発墜落しているが、これはなにやら謀略臭い感じがする)

教訓 飛行機に乗るのも、本当に心して、乗る航空会社や飛行機を吟味することだ。
Comment(0)