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P.ドラッカーも勧める「振り返り会」とは?

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四半期に一度、本業などで全く関係のない友人同士での「振り返り会」を実施するようになり、はやくも3年。今回は、この「振り返り会」の魅力と簡単な進め方をご紹介します。

Furikaeri

■今回の要旨

*そもそも「振り返り会」とは何か

*振り返り会で得られるメリットは「1:自分の直近の状況整理」「2:違う観点でのインプットによるマンネリや閉塞感の開放」「3:他の人の学びを学べる」「4:新たな発想が生まれる」の4点

*具体的な振り返りの実施ポイント

■振り返り会を始めるようになったきっかけ
このイベント、当初はドラッカーの「プロフェッショナルの条件 」にて、若き日のドラッカーが、自分の上司と定期的に「最もよかった成果」「最も期待はずれだった成果」について話し合い、その次の期間中の仕事のやり方を変化させていた、というストーリーに触発され、友人を誘い始めたのがきっかけでした。

実は、それ以前、2001年から一昨年まで、新卒で入社したP&G社の同期4-5人と、毎年年末に集まり、その年一年を振り返るということをやり続けていました。この営みも大変パワフルで、毎年この振り返りをすることで、翌年への活力としていましたが、この成功体験も、現在行っている「振り返り会」の原動力になっているのかもしれません。

当初は、1年に1回の開催だったのですが、それでは日々の変化が激しすぎて「1年前とでは状況が違いすぎるから。。。」となることが多く、四半期に一度、おおよそ3ヶ月を目処に開催するようになってきました。

■「振り返り会」とはざっくりどんなものか?
この「振り返り会」ですが、実施の方法は至ってシンプル。いつも概要としては、下記のような方法で実施しています。

Step1 対象となる振り返りの期間、つまり、前回の振り返り会実施後~今回の振り返り会開催日までについて、事前にパワーポイントなどで3-4枚程度、他の参加者に15分程度で説明できるような分量にして準備します。
Step2 振り返り会当日、誰かの自宅に集まり、そこにあるテーブルを4人で囲んで座ります。これは、こたつのようなものでも、ダイニングテーブルでも、なんでもOKです。
※参加人数は、全部で4人がお勧めです。あるいは3人もあり、というところでしょうか。
Step3 そのテーブルの上に、用意しておいた大きな模造紙を貼付けます。これは、A1とかA0とかいう大きさの模造紙となります。
Step4 最初に、参加者全員で、順番を決めずに一人一人、この会で達成したい目的&現時点での素直な気持ちを1分程度で簡単に話します。お互いに質疑応答などはせず、いいっぱなしです。このプロセスを「チェックイン」と呼ぶこともありますが、これは「この振り返りの場に踏み込んで参加する」という意味となります。
Step5 時間割を、仮決めします(※どんな順番で誰が発表するかを決めるわけではありません。あくまで、1人1人が発表する時間割の切りを決めるだけです)。通常、1人あたり質疑応答を含めて60分~90分、ですので4人であれば、合計で4~6時間となります。
Step6 自分が発表したい、という気持ちになった人から、順番に発表を行います。各人の持ち時間は60分~90分なわけですが、その時間をどのように使うのかは、基本的に1人1人にゆだねられます。ただ、基本的には、まず自分の近況について、イベントなどを交えながら簡単に紹介し、そこで「何をどう思ってこうしたか」ということを特にシェアしていきます。
そして、そのシェアの途中、またはシェアが終わったあとに、他の参加者は、内容でより知りたいと思ったことや、なぜその場面でそう判断したか?など、発表者の行動や思考の背景にあるものを問いかけていきます(特に特別なスキルを使うわけでなく、思うがままに質問していきます)。テーブルに貼ってある模造紙は、状況を説明するミニメモを書き込んでもOKですし、自分が思いついたことや、備忘録的なもの、なんでもOK、自由に参加者全員が記入をすることができます。
Step7 上記のStep6を、参加者全員分実施します。
Step8 全員が終わったら、振り返り会当日は終了。最後に、そこで記入した模造紙やメモなどをデジカメで記録しておきます。
Step9 後日、互いにメールで、「どんなことが気付きだったか」「次の3ヶ月、ざっくりとどんなことを目指してみるか」を、交換します。このやりとりにより、次の振り返り会のときに、比較する「当初の目論見」が残るため、より振り返りが効果的になります。

■振り返り会で得られるメリット
振り返り会を実施することで、主に下記の4つのメリットが得られます。

1:自分の過去の営みが再構築される

2:同じ事実に全く違う観点が入り、過去への解釈ががらっと変わる

3:参考となる姿勢や考え方、知識などが多数獲得できる

4:そしてなにより、様々なストーリーと会話の繰り返しにより、新たなものが生まれる

1:自分の過去の営みが再構築される
これは、他の参加者に自分の過去数ヶ月の営みを口頭で説明する段階にて発生します。人に何かを説明しようとすると、過去に起きた事柄を、1つの物語/ストーリーとしてつなげていくことになるわけですが、こうして再構成し、つなげるという作業を、他の人に見られているという刺激を受けながら進めていくと、内心「なるほど、こうだからこうしてこうしたんだなあ。。。」という体験を、多々することになります。すると、今まで一見、関連性のなさそうだったイベントとイベントが、突然大きなつながりにあることが分かったり、なぜ自分がそこまでして特定のことに取り組んでいたのかなどが、整理されていきます。

例えば、今回の私の例でいくと、フェースブックについての調査/研究をこの4月頃から短期集中で行ってきたことが、実はその直後の情報発信の増加につながり、そこから多くの出会いがあって一気に学習が深まっている反面、それによる外部での会合や飲み会の増加によって、子供の世話時間が減少し、妻に負担をかけていて、それによって妻が不機嫌なのもわかるなあ、といったつながりが見えてきたりします。

2:同じ事実に全く違う観点が入り、過去への解釈ががらっと変わる
自分で自分の過去数ヶ月をストーリーとして説明すると、その内容に対して他の参加者が「なぜそう行動したの?」「あれ、本当は違う因果関係があるんじゃない?」など、様々に違う解釈を投げかけてくれます。特に、自分のストーリーに違和感があったり、自分が無意識のうちにとっている考え方などについては、異なる価値観や分野出身の人である程、異なった解釈を投げかけてくれるため、ストーリーに付随している自分の暗黙裏の価値観や、ある種の思い込みに気づくことができます。

例えばですが、以前のある振り返り会で、友人の一人が「自分は企画の仕事がしたくて会社内で異動をしてみたが、どうしても他の人の発言や発想を見ていると、自分にはクリエイティビティが足りないように思える。自分は、企画に向いてないんじゃないかなあ。。。」と嘆いていたときに、別の企画分野で仕事をしている友人が「企画の仕事って、そういう稲妻のように突拍子のないアイデアが出るというような前提でやるわけじゃないよ。それに、君がインパクトを受けている、他のメンバーの意見は、営業での現場経験に基づいた事例だったりするから、そのファクトに驚いているだけで、その人のクリエイティビティが、きみより遥かに優れている、ってわけではないと思うな」というような投げかけをし、それによってその友人は「自分には根本的にクリエイティビティが欠けているから、今の仕事は辞めた方がいい」というような考えから脱却することができました。

3:参考となる姿勢や考え方、知識などが多数獲得できる
自分ではなく、他の人の振り返りストーリーを聞いていると、要所要所で、その人がその期間、あるいはもっと翻って過去から大切にしてきた「考え方」や、新たな情報/知識、などが出てくる場面が多々あります。そして、こうした内容は、そのときに話されるストーリーとセットになっているので、聞き手からしても、とても位置づけや意味合いが理解しやすく、翻って自分自身の参考になります。

例えば、今回の振り返りの中では、ある友人が「過去から自分はプリンシパル(=原則)ベースで意思決定をしてきた。それは、学生の頃にアルバイトをしていた企業でのアルバイト対象トレーニングで、マニュアルを使わず、”楽しむ””親切”といった4-5つのフレーズを掲げ、それに合致する行動かどうかを、様々な状況を想定して、確認し、すりあわせていくものだった。この原体験もあり、自分が進路を決めるときには必ず”それは、自分にとってより多くの出会いをもたらすものか?”という原則を打ち立て、それに合致するところに進むという風にしてきた」という話をしてくれました。
この、プリンシパルベースでの行動は、自分にとっても目から鱗で、自分自身を考えてみても、毎回毎回、行動の指針として実は持っていたなあ、と痛感。自分の場合は「より未知のものに出会える可能性が高く、想像もつかないような結果が待っているものを選ぶ」というのがプリンシパルだなと認識することができました。

4:そして新たな何かが生まれる
ここまで1~3のところで、ロジカルにどのようなメリットがあるかを記述しましたが、最後にして最大の振り返りの魅力、それは「会話を通して新たなものが生まれる」という感覚です。ここについては、語るに落ちるので実際に経験してもらえればなと思うのですが、参加者それぞれの多彩なバックグラウンド、そしてこの直近に取り組んできた様々なことの経験がベースになり、様々な角度から会話が折り重なることによって、圧倒的に創造的なことが起きます。
この興奮があるからこそ、「振り返り会」はやめられないんですよね。。。

■よりよい振り返り会を実施するための5つのポイント
さて、この「振り返り会」ですが、ぜひとも多くのみなさんにその楽しさを経験していただきたく、よりよい会にするためのポイントを5つ程紹介したいと思います。

ポイント1:日常の遠慮や配慮から解放されるメンバー構成とする 振り返りでは、直接的に仕事で関係している人や、日常を持ち込むことになる人を呼びません。こうすることで、完全フリー・リラックスした視点でお互いにやりとりができるようになるのに加え、いつもとは全く違った視点でインプットをもらえる、というメリット、さらには、他の仕事や業態での参考になる知見を得やすくなる、というメリットがあります。
ポイント2:1人1人の持ち時間を決め、自由な運営に任せる 各人の振り返り方法は、各人に委ねます。こうすることで、その人その人が自分の状況の共有を、オーナーシップを持って実施できるようになり、かつ、人に聞かせることを自分で考えることで、改めて自分の過去数ヶ月を振り返る効果があります。テンプレートなどが決まってしまっていると、「そこにはめ込む」だけで流せてしまうわけです。
ポイント3:持ち時間のうち、発表時間は30%ー40%程度に留め、会話を楽しむ 新たな発見や、示唆などは、参加している他の人たちとの会話の中から生まれてきます。これは、脳科学的にも、会話を通して互いの右脳が刺激試合、シンクロすることで生まれることが分かっていますので、一方的に自分の話ばかりするということは避け、意図的に○○分で発表は終わり、というふうにするのがおすすめです。
但し、初対面のメンバー同士である場合は、どうしても過去の経緯を長めに話す必要がでてきますので、そうした場合は、ある程度発表が長くなるのは、止むを得ません。その場合は、なるべく過去についても、会話調でやりとりをしながら紹介することを心がけるのがお勧めです。
ポイント4:「何が正しいか?」ではなく「どんな見方が出来るか?」にフォーカスする 振り返り会は、多彩な観点があることで、お互いに学びあう場ですので、いわゆる「アドバイス合戦」にならないように注意したいところです。この2つの違いは、「質問を通して深堀りしていく」のか、「結論を一方的に提示していく」のかの違いとも言えるかもしれません。
ポイント5:終わったあとのメモは、即日電子にして共有する 当日色々な会話をしていると、自分の番、それから他の人の番を通して、とてつもなく色々な学びがあります。その際、これらの学びを個人的に手元にポストイットでどんどん書いていくのですが、このメモを、振り返り会が終わって帰宅したら、すぐにフェースブックのノートなどに転記して、そこに解釈を加え、参加者に共有するのがお勧めです。
実際にやってみると分かるのですが、気持ちの面でのインパクトや、詳細なニュアンスは、数時間もたっていくと、どんどん失われていきます。そこで、そのメモリーが残っているうちに、テキストにがーっと落としておくことを、強くお勧めします。

暑さも和らぐこの季節、振り返り会をお試しになられてみてはいかがでしょうか?

それでは

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