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事業グローバル化における戦略と人はどうあるべきか? そのヒントとなるべき考察と事例集

クラウドコンピューティングは相対的(その1)

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イノベーションとは相対的なものである。

これは「イノベーションの神話」の著書である、Scott Berkun氏にて述べられた言葉です。そもそもイノベーションとは、新しい物事やプロセスを生み出し、実施することです。ただし誰にとって新しいのか、どこでイノベーションと認識されるかは、外部環境により大きく異なります。例えば日本国内で革新的な新製品を企画し販売しても、実は米国市場に既に発表されていたりもします。この製品は日本国内では、イノベーションにあたるかもしれませんが、米国市場では既存製品の焼き直しであり、イノベーションにはなりません。つまりイノベーションとは、相対的な位置づけにより左右されるものです。

最近のクラウドコンピューティングの概念も同様ではないでしょうか。

何をもってクラウドコンピューティングとし、また何がクラウドコンピューティングなのか、話す人によって、その意味合いや中身がバラバラなのです。ただしクラウドを捉えるいくつかの視点が存在します。一つはクラウドコンピューティングを提供するベンダーの視点であり、またはクラウドコンピューティングを利用するユーザーの視点です。

前者の視点では、自社の製品・サービスに基づいて、クラウドコンピューティングを捉える傾向にあります。例えばSalesforceは、自社のアプリケーションを軸に捉え、IBMはサーバーからアプリケーション、ミドルウェアを含めた全方位的に、シスコはネットワークを中心にクラウドコンピューティングを捉えます。故に自社の製品がどのようにクラウドコンピューティングに位置づけられるかによって、捉え方が全く異なるのです。対して、ユーザーの視点では、使い方について述べているため、クラウドコンピューティング内容にはタッチしていません。

ではどのように捉えたら良いのでしょうか。

小生が考えるのは、今までの業界の流れや背景を捉えることにより、クラウドコンピューティングの位置づけを明確にすることではないか。ということで、まずは業界の流れを、アプリケーションやデーターの集中度を縦軸に、時間を横軸に置いたポジショニングマップでまとめます。Cloud_computing_3

メインフレーム時代(-1980年代)、クライアントサーバー時代(1990年代)、またクラウドコンピューティング時代として時代毎に3分割します。1980年代以降、ナローバンドの遅いアクセスや、高いネットワーク費用、安価なPCの浸透により、アプリケーションやデータの集中度が高かったのです。しかし1990年代後半以降、ネットワークの大容量化と高速化、およびワイヤレス通信の発達により、データとアプリケーションの分散化から集中化へのゆり戻しになっている形をしめしました。ちょうどスマイルカーブのようになります。

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