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自動車が売れない理由に関する私的考察6~いつまで日本で生産させてもらえますか?

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もう一年経ったのか・・・この時期になるといつもそう思います。

11月の第二週目の月曜日は「自動車が売れない理由に関する私的考察」と称して独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書かせて頂いてます。

2007年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察~それは「デザイン」と「塗料」
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2007/11/1_514b.html

2008年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察2~自動車メーカー自ら”単なる移動手段”として商品づくりをしてきたから
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2008/11/post-e85a.html

2009年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察3~【番外編】先日のエントリーへの補足および未だに感じる「電気自動車による市場参入」への違和感
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2009/11/post-7a8c.html

2010年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察4~「エコカー補助金」という”麻薬”の副作用?
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2010/11/post-f140.html

2011年のエントリー
自動車が売れない理由に関する私的考察5~いや、そもそもメーカーが車を製造できないなんて・・・。
http://blogs.itmedia.co.jp/usrtodev/2011/11/post-fee2.html

昨年のエントリーにも書きましたが、自分の中で「毎年独自の観点から自動車業界に関することを勝手気ままに書く」というルールを作ることによって、一年に一回、自分が自動車業界に身を置く者の一人として、その時考えていることを棚卸ししても良いな、というのがこのエントリーの目的です。

そして昨年も書きましたが、こうやって振り返りもしない限り、案外、一年前に書いたことなんて忘れてしまっており(苦笑)そして、その年、自分がどんな事柄に、何に関心を持ってたか、というのも自分自身で振り返る目的もあります。

なので、「売れない理由に関する」、という表題は既に適切でない状態にもなっています(苦笑)が、そこはもう”枕詞”のようなものだとご理解下さい。

よろしければ、またお付き合い下さい。

ずっと円高が続いてますね。この一年で振り返っても84円を超える円安になったことが無い・・・というかこの二年で振り返っても無いようです。

自動車製造、という事業も、原料を手に入れて加工することにより付加価値を付けて販売することにより利益を上げるビジネスであり、またそれが日本のマーケットだけだと販売可能な量に限りがありますからどうしても世界へ輸出して外貨を獲得することにより成り立ってた部分も多分にある訳であって、円高=得られる利幅の”実質的”減少は非常に痛い訳です。

さて、日本国内にどれぐらい日本車メーカー向けの自動車製造工場があるかご存知でしょうか。”自動車製造”と言うと、エンジンだってエンジンの部品だって、タイヤだってそれに入る、と言い出すとキリが無いので、とりあえず、最終製品である「自動車」として出来上がる工場、ということで数えましょうか。

日本車のメーカーの数に、それぞれ3~4ぐらい掛けた数なんじゃないの?

という推測をされた方は、あながち誤りではない。

ただ、みんなが認知しているブランド名に比べて、さらに多くの傘下企業もしくは供給体制があるんです。

よく「業界地図」的なことが書かれている本には、メーカー同士の資本・業務提携図がありますが、傘下企業や工場単位での製品供給図、というのをあまり見かけることが無かったので、各社のホームページ等記載の内容を参考に作ってみました。

※パワポ(しかもOffice 2000(苦笑))で作成したので表現に限界があります。わかりづらくてすみません。

1211_2

色分けした色に特に意味はありません。

メーカーブランド名の枠の中に、他のメーカーブランドの工場名が入っているのは、「受託車」生産を行っていることを表現してみました。

「受託車」というのはあまり耳馴染みの無い言葉かもしれません。「OEM車」という言葉もあります。社内の人間と話をしていても、意外と混同している方が居たり、そもそも「受託車」という言葉を知らなかったりする方も居たりするので、説明しておきます。ただし、Wikipediaなどに書いてある言葉を読むと、どちらも”OEM”と定義されそうなので、やや独自の解釈もいれつつのご説明になります。概ね間違ってないはずです。

「OEM車」・・・自社がその車両を「商品」として販売している車を、一部供給先の希望等も踏まえての変更をしたりしつつ、相手先ブランドの「商品」として供給している車

「受託車」・・・相手先が生産すべき車を、自社がその生産一環についてを”事業”として受託して生産している車

トヨタ自動車の例で見てみましょう。

例えば、「アクア」という車はトヨタ自動車東日本で生産されているようです。

■トヨタ自動車東日本 製品紹介
http://www.toyota-ej.co.jp/products/car.html

この時、「トヨタ自動車東日本」自身は製造メーカーではありますが、現在、「トヨタ自動車東日本」自身のブランドとしての商品がある訳ではありません。あくまで「トヨタ自動車」の商品生産を受託しているだけです。自分の認識が確かなら、いくら「トヨタ自動車東日本」で製造された、としても、「完成検査終了証」の発行は「トヨタ自動車」として行う必要があります。

ま、トヨタ自動車東日本の場合は、元々トヨタ自動車の生産受託を請け負っていた「セントラル自動車」「関東自動車工業」「トヨタ自動車東北」が2012年7月に合併してできた企業ですから、それ程「OEM車」「受託車」を意識することはありません。

ダイハツ工業の例で見てみると、もう少し、事情がはっきりしてきます。

本社(池田)工場のプロフィールを見てみます。

■本社・本社(池田)工場 [会社概要] 【ダイハツ 企業情報】
http://www.daihatsu.co.jp/company/outline/facilities/ikeda.htm

第2地区の生産品目に、

コペン
ブーン/パッソ※2
クー/bB※2
ビーゴ/ラッシュ※3
※2:受託車 ※3:OEM車

とあります。

そもそも、軽自動車以外のラインナップがダイハツに存在することを知らない人も多いようですが(自分の周辺調べ)(※ダイハツの方には大変失礼ながら)、

<参考>ダイハツの乗用車ラインナップ(軽自動車以外)2012年11月現在4車種あります。

この中で、BOON/Passo、COO/bBは受託車、Be-go/RushはOEM車、とのことですから、Be-goに関してはトヨタへ「Rush」という商品名で”OEM”供給していることになりますが、BOON、COOに関しては、受託車=すなわち生産ラインそのものはトヨタからの”受託事業”なので、ダイハツとしては、自社の工場で作っているにも関わらず、言葉の定義上は、トヨタから”OEM”供給を”受けて”いることになります。

余談が過ぎました。それらの前提を持って整理したのが前掲の図になります。

注1:86とBRZの関係ははっきりしなかったので、86を主・・・すなわちスバルがトヨタから受託している、という前提で書いてます。実際は違うかもしれません。

注2:大型車も入れると更に図が複雑になるので、小型商用車の範囲までで止めました。

注3:前述の説明から、本来は、ダイハツ工業での生産においては、受託してOEM供給を受けるパターンが存在しますが、その線は省略しました。

注4:それぞれの生産規模や従業員数等異なるため、工場の名前を並べたところで単純比較にはならないことは当然認識しております。

注5:見落とし、勘違いあるかもしれません。予めお詫び申し上げます。
(2012年11月13日午後11時追記:早速、三菱の「プラウディア」「ディグニティ」としてOEM車供給している、日産自動車栃木工場からの矢印が抜けていることに本日気づきました。図は修正してません。予めご了承願います。)

「OEM車」として供給の線、多くなりましたね、と改めて思いました。各社、OEM車として供給されているのは軽自動車や商用車です。車両そのものの特徴が出難い、もしくは、より利益を確保するためには生産台数を増やして効率を上げる必要があるからかもしれません。

こうして生産された、トヨタ、日産、三菱、マツダ、ホンダ、スズキ、ダイハツ、富士重工の2012年4月~9月の生産累計が、合計で、約466万台になります(日本自動車工業会のサイトより)。

また、自動車販売協会連合会および全国軽自動車協会連合会が発表している同時期における、前述のメーカーの新車販売台数合計は、約237万台になります。このうち、日産のマーチはタイ製です。販売ランキング30位以内に入ってるおかげで(?)、公表数値があります。4月~9月で約1.9万台、だそうですから、それを引くと、約235万台が”国産”車となります。

約半分強は国内で販売できている訳ですが、半分弱は輸出でまかなっている、とも言えます。ただし、この円高基調が続く中、再度、円安に振れる、ということはなかなか想像し難く、輸出にはいよいよ頼れない、と思っていた方が賢明だと思います。よくこういう統計数値を語る時に、前年と比べて、というのがあるのですが、昨年は震災やタイの洪水影響等もあり、純粋比較ができません。

前掲の図のように、この狭い日本にたくさんの自動車生産工場が立地している中、それぞれの工場が、いつまで稼動し続けられるのか、そもそも自動車の生産を日本の中でし続けられるのか、ということを悲観シナリオとして考えておく必要があるでしょう。一方、雇用の確保・維持の観点から、簡単に規模の態様の変化ができない時、どうしたら良いのか、どうしていくべきか、ということも考えておかざるを得ません。

業界に居る身の人は、立場の違いを問わず、そういうことを常に意識しておく必要があるんじゃないか?と個人的には思っています。なので、自分は自分なりに、答えを考え続けようと思っています。

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