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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

時代が変われば商売も変わり、それにはきっと抗えない

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少し前、「AIが普及することで人間が職を奪われる」というのが話題になりましたね。こんなのとかこんなのとか。発端は2016年に発表された論文だ、といわれています。最近はあまり聞かなくなりましたが、それは世界が「AIが普及しても仕事は奪われない」と気づいたからではなく、「コロナ禍でそれどころではない」からかもしれませんが。

時代の変化で需要が変わる

時代の変化は、何もAIに限ったことではありません。

実は弊社では、研修時に「紙のテキスト」にこだわっています。紙のテキストは半永久的に受講者の手元に残り、いつでも見返すことができます。自由にメモを残すこともできますし、その気になればスクラップにすることもできます。もちろんデジタル書籍でもある程度は可能です。デジタル書籍は かさばらない、劣化しない、持ち運びが楽、といったメリットがあります。しかし弊社では「読みやすさ」や「メモのとりやすさ」、そしてなにより「物理的に受講者の手元に残る」ことを重視して、紙のテキストを配り続けています。

それがコロナ禍で研修のほとんどがリモートになったことで、劇的に変わりました。

弊社の御客様は 100% 法人で、B2B です。弊社では B2C はやっていません。また、オープンの研修も今は扱っておらず、これまた 100% 1社向け研修です。となると、普段はテキストをお客様の教育担当者の方宛にお送りして、研修当日受講者に配布します。

しかしコロナ禍で研修がオンラインになった上に、受講者の大半はご自宅からご受講になります。全受講者のご自宅にテキストを郵送するのはコスト的にも労力的にも現実的ではない、ということで、お客様からは「テキストをデジタルデータで配布してほしい」というご要望をよく戴くようになりました。

そこで弊社では、テキストを Webブラウザ上で参照いただける仕組みを突貫で作りました。で、お客様に「紙のテキストはどうしましょう?」と聞いたら、昨年は「紙のテキストもお願いします」というお客様が多かったのに対し、今年に入ってからは「紙のテキストはいりません」というお客様が増えてきました。

需要が変われば仕事も変わる

さて、先日あるお客様から、「新入社員研修用にテキストを700冊売ってほしい」というお問い合わせがありました。弊社としては非常に嬉しいお仕事です。もちろん OK ですよ、ボリュームディスカウントもしますよ、と話はとんとん拍子に進みました。一方、700冊のテキストともなると、A4用紙が3万2千枚は必要です。さっそく印刷業者さんに紙を調達しておいてください、と連絡しました。

しかし、その後でお客様から「新入社員研修がリモートで実施されることになったから、紙のテキストではなく、デジタルデータの形式でください」というリクエストがありました。上記のWebブラウザ上で参照するやつです。お客様からテキスト代は頂戴できるのでそれはありがたいのですが、そうなると紙のテキストを印刷する必要がなくなります。印刷業者さんに紙を調達していただいても無駄になってしまいます。すぐに印刷業者さんにストップをかけ、申し訳ありません、と謝りました。

さて・・・この時私はふと考えました。コロナ禍でなくても、最近は印刷された本の売れ行きが落ちています。たくさんの雑誌が休刊という名の廃刊に見舞われています。そしてこのコロナ禍です。「紙屋さん」とか「印刷業者さん」とか、これまで出版の根幹を支えてきた方々は、ここにきて一気に職を失う可能性が出てきているなぁ、と気づきました(いまさらかよ)。様々なフェアや展示会も中止や規模縮小になっていますから、ポスターやチラシの印刷も激減していることでしょう。もしかしたら、卒業アルバムや学会の論文なんてのもデジタル化していくかもしれません。印刷業は、かつてフィルムカメラからデジタルカメラへの以降が進んだ頃のフィルムメーカーのようになっていくのでしょうか・・・

AIに限らず、時代が変われば職が変わる

ひと昔前は「タイピスト」とか「キーパンチャー」とかって呼ばれる仕事があり、事務系の花形でした。しかし今では誰でもパソコンが使えるようになり、タイピストは一部の特殊な業界を除いて職を奪われました。

昔は運転免許を取得するための書類が複雑で、運転免許センターの近くには必ず「代筆屋」がいました。運転免許を取る人はなくならないから、安定の仕事だと思われていました。しかしこれも書類が簡略化されたことで、代筆屋は職を失いました。

時代が変われば求められる仕事も変わります。明らかに奪われる職も出てきます。逆に、増える仕事もあります。あとは、その時代の変化に抗うのではなく、どう追随していくかがカギなのでしょうね。

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