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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

文章力を高めるための5つのステップ・その1

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最近、「若手の文章力を高める研修をしてくれ」というご依頼をよくいただきます。これはコロナ禍になる前からもそうだったんですが、対面での仕事が少なくなってきた今だから余計にニーズが増えてきたような気がします。

もっとも、文章力を高める必要があるのは、若手ばかりではないんですが・・・(スミマセン)

さて、仕事の成果のひとつとして、地味に大切な要素を占める「文書(ドキュメント)」。それが報告書であれ、会議開催通知であれ、プレスリリースであれ、クレームに対するお詫びの文書であれ、設計書の中に書く説明であれ、メールであれ、「文書」の品質は仕事の成果に強く影響します。しかも我々は物心ついたころから何かと文書を書き続けているにも関わらず、意外と「文書の品質を高めるためのプロセス」は学んでないんですよねぇ。しかもチマタに溢れるのは「小綺麗に文書をまとめるための文例集」ばかりで、文書を作成するためのプロセスをきちんと説明している本は意外と少ないんです。

そこで、テクノファイブ流「文章力を高めるためのステップ」を、これから5回に分けてご紹介します。しかも、ちょっとだけIT技術者向け。

文書作成のプロセス・全体像

まずは、プロセスの全体像をご紹介しましょう。

論理的でわかりやすい文書を作成するためには、そのプロセス(手順、手法)が重要です。手当たり次第に書くだけでは、読み手に知ってほしい内容を確実に届けることはできません。

文書作成の流れは、おおむね次のようなステップで進みます。

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これは、プログラム開発の工程に似ています。

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重要なことは、いきなり書き始めようとしない、ということです。プログラムも、よほど小さなものでない限りいきなり書き始めるということはありません。必ず設計から入ります。それと同じです。急がば回れ。この プランニング~構造設計 のプロセスを踏むかどうかで、その文書の品質は驚くほど変わります。

プランニング

プランニングとは、文書を作成する方向性を決める段階です。ここでの方向性には、5つの要素が存在します。

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どのような文書であれ、ビジネス文書を作成する際には、これら5つの要素を強く意識しなければなりません。では、ひとつずつ説明しましょう。

目的(問い)

目的とは、「成し遂げようと目指す事柄(広辞苑)」のことです。すべての文書には、必ず目的があります。「何のためにその文書を作成するか」ということが明確でなければ、良い文書は書けません。

例えば、こんなシナリオで考えましょう。

新規プロジェクトを遂行するためには既存の開発環境では間に合わず、新しい開発環境を調達・購入しなければならない、とします。しかしそのためにはお金が必要で、その予算は当初のプロジェクト予算には組み込まれてなかった、としましょう。そのためにあなたは、この新しい開発環境を手に入れるために、上司を納得させ、追加の予算を引き出さなければなりません。あなたは、そのための文書を作成する必要に迫られました。

「なぜその文書を作成する必要があるのか?」ということを明確にしたものが目的です。このシナリオでは、文書を作成する目的は、次のようなものになるでしょう。

プロジェクトで用いる新規開発環境の調達・購入に関して、上司の承認を得、追加の予算を獲得する。

目的は必ず文で表します。箇条書きや体言止めの形式(例:追加予算の確保)では、どうしても文書の方向性があいまいになります。方向性があいまいなままでは、どのような内容をどの程度深く掘り下げて書けばいいかわからなくなってしまいます。文書の方向性を定め、書き手であるあなたが迷子にならないためにも、目的は必ず文で書きましょう。

文書を作成する際は、必ず目的を「主語+述語+?」という形式のイシューにまで深掘りする必要があります。イシューを直訳すると「課題」や「論点」という意味になりますが、ここでは「何を論じ、何のために書くべきか」という、目的をさらに具体化した問いという意味で扱います。目的をどのような「問い」に置き換えられるかということが、文書に対して「何をどのように書くべきか」ということを明確にするために必要なことです。

さきほどの目的をより具体化したイシューの例は、次のようなものになるでしょう。

本プロジェクトで必要な開発環境に求められているものは何か?
自分達が今持っている開発環境に足りないものは何か?
新しい開発環境を調達するのに、どの程度のコストがかかるのか?
それがないとどのような困ったことが起きるのか?

これらのイシュー(問い)に対する答えを書くことが、文書の内容を考えることだ、といえるでしょう。

1つの目的から、複数のイシュー(問い)が生まれることもあります。このような場合は、1つの文書の中で複数のイシュー(問い)に対する「答え」を書いていく必要があります。重要なのは、文書に「何を書くか」を考えることではなく、文書を用いて「どのような『問い』に答えるか」を明らかにすることです。

ああ、かなり長くなってきました。続きは次の投稿で。

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