キャロル・ドゥエックさんの「Growthマインドセット」と「Fixedマインドセット」
心理学者キャロル・ドゥエックさんの「Growthマインドセット」と「Fixedマインドセット」についてのインタビュー記事が『人材教育』3月号に4ページもどどーんと載っていました。うれしい。
以前別のブログで書いたのですが、日本語されている本としては、『「やればできる!」の研究』があり、その中では、それぞれ「しなやかマインド」と「こちこちマインド」と訳されています。秀逸な訳語だと思ったものです。
「Growthマインドセット」(しなやかマインド)とは、自分の能力は、努力次第で伸ばせる、困難があっても、能力を身に着けていけば、乗り越えられると思うようなマインドセットをさします。
「Fixedマインドセット」(こちこちマインド)は、今ある能力で、「できる」「できない」を判断してしまうし、「できない」と判断したら、リスクを恐れ、挑戦をしない、といったマインドセットのことです。
「能力観」がものごとの取り組み方にとても大きな影響を及ぼすということなんです。
『「やればできる!」の研究』では、主に、子どもを対象にしていましたが、このインタビューでは、ビジネスパーソンについて言及していました。
で、面白かったのは、本人みずからのマインドセットだけでなく、マネージャがどちらのマインドセットを持っているか、によって、部下やチームのとらえ方が変わってくるという部分。
上司が、「努力を続けていれば、能力は伸びる」と信じて部下に接することが、部下の能力向上に役立つ、なぜならば、上司自らが部下のメンターになろうとするから。
上司が、Fixedマインドセットの持ち主だと、結局、「能力があるものだけが結果を出すんだ」「だからメンターなんて必要ない」という思考から抜け出ることができない、というのですね。
ああ、なるほど、なるほど。
部下を変えるためにも、上司の「マインドセット」を変える必要があるってことですよね。
もうひとつ、会社がもつマインドセットの影響も興味深いものがあります。
いわく、
・全体としてgrowthマインドセットが広まっている会社がチームワークを高く評価する
・fixedマインドセットに覆われている会社は、社員の中にスーパースターはいないかと常に探している
のだそうです。
そして、「会社全体にgrowthマインドセットが広がる」ためには、「社員が会社を信じていること」が大事だとのこと。
それによって、「リスク覚悟でチャレンジしても、会社がサポートしてくれるだろうと思う」と。
・・・
昨日(3月3日)、経産省主催のシンポジウムで、花田光世先生の講演を聞きました。
中高年のキャリアについてのお話でしたが、その中で印象的だったことが以下のくだり(自分のメモからの再現なので、正確な表現ではないかと思いますが)。
「企業が活性化していくためには、コミットメントしている従業員をどれだけ持っているかが重要。だけれど、今は、”会社なんてね””会社に忠誠心を持ってもね”と冷めた見方が広まっていて、企業へのコミットメントは悪みたいになっている。けれど、(別に生涯をささげるといった意味ではなく、)今、組織にコミットメントが持てる従業員がいればいるほど、実は企業は活性化するものなんだ。その点をちゃんと考えないといけない。ただし、この時、”個”の”成果”にフォーカスしすぎてしまうと問題。成果主義は、”成果””成果”と短期の成果ばかりいう。プロセス指標での評価も なければ、うまくいかない・・・」
・・・・こんな感じのことをおっしゃっていました。あくまでもこんな感じです。
高度経済成長期、男性(主に)は、会社に人生をささげ、宮脇檀さん(建築家)などは、「日本の男性は、会社に住んで、自宅にたまに通う」ほどだと述べていましたが、今は、その反動からか「公私は分ける」「会社に忠誠を誓っても」となり過ぎている。
けれど、忠誠はともなく、組織に所属する限り、「その組織へのコミットメント」があることが、活性化につながる、と花田先生はおっしゃる。
ドゥエックさんは、「会社を信じられる」時、Growthマインドセットが組織に広がる、結果的に、挑戦するよい組織になっていくとおっしゃる。
「個」と「組織」。
べったりではないけれど、「安心できる関係」というのが、やはり、長い目で見た場合、成果につながるのだろうなぁ・・・と思ったのでした。
でも、今の時代、「ではどうやって?」がとてつもなく難しいのだと思います。