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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「問いかけても反応がないんですよね」の対処法

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(講師のプロではない)現場の社員(たとえば、エンジニア)が講師をする場合のお話し(続き)。

一方通行の「ただひたすら話しっぱなし」という状況に陥ることがあります。ひたすら、技術について、相手の前提知識のレベルを超えて、「ああ、あれも」「これも!」「そういえば、こんな話も」とてんこ盛りにしてしまうことがあるのです。

話しているうちに自分の経験が頭の中にぼわーっと広がってきて、「これも知っていたほうがいいよね」「こんなTIPSもあるんだよね」「あと、裏話だけど」「マニュアルにはちゃんと書いてないけど」といったようにわらわらと思い出したことを話してしまう。

途中で受講者は、もう飽和状態になってきて、頭の中にあるものは、「?」マークだけ。きょと~ん。

でも、同じ社内の先輩が講師をしているので、「マナー上」、うなずく。うん、うん。うん。うん。(全然わかんねぇな、と思いつつ)

さて、こんな状況を避けるために「問いかけ」を取り入れて、双方向に進めようとします。

(「問いかけ」というのは、教育の世界では「発問」などとも言われますが、あまり一般用語ではないので、「問いかけ」として続けます)

●「もし、○○が××になったら、みなさんだったらどうしますか?」
●「これまでに、○○でプロミングをしたことがある方はいらっしゃいますか?」
●「○○という言葉を知っている方は? では、知らない方は?」

たんに「挙手で反応してもらいたい」場合もあれば、「答えを言ってもらいたい」場合もある。

けれど、問いかけてみても、無反応なことも多い。その上、受講者は一斉に目をそらす!

講師は、「問いかけて、双方向に進めたいのに、みんなが反応してくれないなぁ」と心が折れて、仕方ないので、「では、私から答えを言いますが」とQ&Aを一人で完結してしまったり、問いかける度に押し寄せる沈黙が怖くて、また、元通りの一方通行に戻してしまったり・・・。

「問いかけて双方向に進めましょう!」というのは簡単ですが、実際、やってみると、相手の反応を引き出すのが難しいものなのです。

とりあえず、これをまずは試してみては?というコツをいくつか。

1. 突然問いかけない。「問いかけますよぉ~」という”予告”を必ずする。

たとえば、「みなさんは、これまでにJavaで何か書いたことありますか?」と問いかけられても、受講者は、問いかけに反応することを求められていると気づかなかったり、「えっとぉぉぉ、どうやって反応すれば?」と反応の仕方がわからなかったりして、そのうち、「どなたもいらっしゃらない?」などと講師が続けてしまうので、つい「反応」し損ねることがあります。

そんな時、問いかけの前に予告をしておくのです。

「今から、Javaでプログラムを書いた経験があるかないかお尋ねしますよぉ。手を挙げてくださいね」・・。こういう”予告”一つ追加するだけでも、反応が返ってきやすくなります。

2. 手を挙げていただきたい場合は、講師自らが手を挙げて示す

「挙手をお願いします」といって棒立ちしているよりも、「手を挙げていただけますかぁ?」と講師自身が手を挙げて、会場全体を見渡すとそれにつられて手を挙げる人は出てきます。人数が少ないな、と思ったら、「ちゃんと手を挙げていただいてもいいですか?」と再度促す。そして、ここが肝心ですが、手を挙げている人数について何かコメントします。「だいたい半分くらいの方が手を挙げていますね。半分が経験者ということですね」などと、前に立っている講師しか把握できない状況を伝えるのです。

3. 答えやすいように問いかける

問いかけられているのはわかるが、何を(何に)答えればよいのかわからない、という問いかけばあります。

たとえば、「みなさんは、Javaって知ってますか?」と問いかけられたとき、「その言葉を聞いたことがある」というレベルでもOKなのか、「何かを説明できるほどの知識」が必要なのか、あるいは、「実際に実務でプログラミングしたことがあり、肌感覚でわかる」状態を求められているのか、という回答する際のスタンスが不明確です。こうなると、誰もが反応を躊躇しやすい。

だから、「Javaという言語があることは聞いたことがありますか?」「それでプログラムを書いたことがありますか?」などとレベルを変えて問いかけていくと、受講者の反応はよくなります。

・・・・・ ほかにもコツはありますが、長くなってしまうので、今日は3つまで。


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