部下には「自分で考えろ」「答えを求めるな」と言うけれど、そういう上司はどうなのか?
ある方とお話していたら、管理職のことに話題が及びました。
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以前、自社の管理職向けの研修を企画し、外部講師を招いて(←私どもではありませぬ)実施した。グループディスカッションで非常に濃い対話をしているので、「おお、いい感じ、いい感じ」と傍で見ていて感じていたが、事後、感想を聴いてみると、「答えが示されなかった」「答えがなかった」というような反応が案外多かった。
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というのです。
「普段、部下に主体的に、とか、自分で考えて判断しなさい、とか、答えをすぐ求めるな、と言っている立場の管理職が、いざ自分が学び手になると、自分もまた答えを求めてしまうんですよね。あんなに濃い議論していて、そこに気づきや仮説、たくさんあったはずなのにね」と。
こういうこと、よく経験します。
たとえば、新入社員が配属される直前に行うOJT担当者研修。
「どのような1年目社員になってほしいですか?」という問いかけを行い、「期待する人材像」を言葉にしていただくワークを取り入れることがあります。
次のような言葉が続々上がります。
「そりゃー、自分で考えて、自分から動いてくれる人がいいよね」
「いちいち細かい指示をしなくても、自分のあたまで考えて、意図を汲み取ってほしいよね」
「目的意識を常に持って、自分なりの考えを仕事の中にも入れてほしいよね」
「自分から行動を起こす人が必要だよね」
・・・・なるほど。おっしゃる通りです。
その後、「そういう風に育てるにはどうしたらいいでしょうね?」ということを体験とかディスカッションとか講義とかいろいろなアプローチで学んでいきます。
OJT開始後数か月経って、OJT担当者向けのフォローアップ研修を開催することがあります。
その時点ではすでに新入社員の育成指導に当たって、現場であれこれ経験しているので、「成功事例」や「お困り事例」を共有するワークを行います。
すると、こんな言葉が出てくるのです。
「上司や先輩も交えて新人との呑み会を開きたいんだけど、そういうの、先輩から言ってくれればいいのに」
「上司からもっと新人に話しかけてほしいんだけど、見ていると全然話しかけてくれないんだよね」
・・・・
私が
「呑み会を企画するので、参加してください、って上司や先輩におっしゃってるのですか?」
「”新人に話しかけてくださいよー”と上司に言ってみました?」
と尋ねてみると、
「いいえ」
「上司が気づいてやってくれればいいのに」
といった答えが戻ってくることも多いのです。
あれ?
「自分で考えて、自分から動いてくれる人を育てたいんでしたよね?」
「指導にあたるみなさん自身はどうなんですか?」
とちょっと笑いながら突っ込んでみると、とたんに、「えへへ」と苦笑いになってしまう。
ホントにこーゆうこと多いんです。
人は、
他者の「できていないこと」には敏感なのだけれど、
自分の「できていないこと」には鈍感です。
人は、
他者の「できていること」には鈍感なのだけれど、
自分の「できていること」には敏感です。
だから、
●部下・後輩がこうなればいいのに
と不満を感じたり、注文を付けたりする
一方で、
●自分はこれもあれもやっているのに褒めてもらえない
とこれまた不満を感じたりします。
また、
●部下・後輩に対して褒めるところを見つけるのに苦労する
一方で、
●自分のできていないことを見つけるのにまた苦労します。
まあ、そのくらい自己肯定的でないと、この世の中生きていけないので、それはそれで「いい」と思っているのですが、(自分に甘いというのは必ずしも悪くない)
たまに、「あれ?私って人には言ってるけど、自分はどうなんだ?」と自問自答することが大事なのかな、と最近、自身のことを考えてみても、思うようになりました。