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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

話をただ聴くだけで相手の問題解決の糸口を相手が見つけてしまうことがある

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夕べ、遠い親戚のおばから自宅にTELがありました。年賀状を送ったことへの返礼を兼ねた近況報告というか近況交換の電話です。

新年の挨拶も終え、雑談に移ったところ、おばが「五十肩で高血圧にもなって、つらい」という話を始めました。 腕が痛くて上がらない、曲がらないうえに、高血圧のため、毎日病院に行って血圧を測るのだが、その血圧測定器に上を入れるのがまた痛くてたまらない、というのです。

一つの不調でもこたえるのに、ダブルで不調が襲ってくるというのはどれほど辛かろうと、ただじっと話を聴いていました。おばは、時折「ごめんね、ぐちっぽくて」と謝るのですが、私は「いえいえ。それにしても、つらそうですね。」などと応じていました。

頭の中に、「こうしたら?」「ああしたら?」と多少のアドバイスは思い浮かんだ(たとえば、ほかの病院に行ってみては?とか他の病院も試してみた?とか)ものの、言っても仕方ないし、私が思いついたことなどとっくに試している可能性もあるし、これは聴き手に徹するのが大事、おばは、聴いてほしいのだ、辛さを共有してほしいのだろうと、ひたすら、うんうん、それは大変・・・と相槌を打チ続けていました。

こういう時、話は少しループするもので、腕が痛い、血圧が高い、血圧計測で腕の痛さが増す・・・。これを何度か聴いた後、「両腕とも上がらないのですか?」と尋ねると、「右が痛かったの、それは治ったの、そしたら、今度は左が。」と。

「両手同時ではなくて、せめてもの・・・」などと言葉濁しつつ返事していたら、突然、おばが、こういいました。

「私、今、淳子ちゃんに話していたら、気づいたわ! 血圧、右手で測ればいいんじゃないねー。なんで、痛い左手で毎日測っていたのかしら? ねぇ? 右手でもいいのよね? みんな左手で測っているからそうするものだと思って、痛いのを堪えていたけど・・・。そうよ、血圧計が左手で測るような場所に置いてあるから、そう思い込んだけど・・・。右手で測ったら、腕は痛くないのよねー。 淳子ちゃんと話していて、気づいちゃったわー」

「あ、そうですねっ! それはいいアイディアかも!」

「明日はそうするわー。長電話で愚痴っぽくてごめんなさいねー。今年もよろしくねー」

・・・・

最後は、元気に電話が切れました。

ほとんどご自分の話だけして電話は切れたのですが、なんだかちょっと嬉しくなって。

この会話で、やはり「徹底的に傾聴する」って大事なんだなあ、と思いました。

コーチングというのは、「答えは相手の中にある」と信じてコミュニケーションするものですが、仕事において上下関係でコーチングをするというのは、実は難しいのですね。かなり訓練を積んだマネージャではないと、部下に適切な「コーチング」はできない。

「コーチングもどき」ならできる。「もどき」とは、いきなり自分の考えを伝え、指示命令やアドバイスをするのではなく、とりあえず「まずは聴いてみる」、これならできる。

けれど、上司も忙しいし、たいていの部下の相談ごと、部下の悩みなど、自分はかつて経験し、乗り越えてきたものが多く、部下の話を聴きつつ、頭の片隅で、「こういう場合、自分だったらどうするか?」「自分はかつて同じ状況でどう対応したか」と考え始めてしまう。考えていくうちにいくつかの答え(らしきもの)やアドバイスが頭に浮かんでしまう。そうなると、もう言いたくて、言いたくてたまらなくなる。

だから、コーチングもどきの果てには「○○を試してみた?」「○○をしてみたらいいんじゃないの?」「オレ・ワタシだったらこーする」と何か言ってしまうのです。

そうなってくると、もはや、コーチングではなく、アドバイスタイムとなり、部下は上司の考え、アドバイスを拝聴せざるを得なくなり、自らは思考停止。結果的には、上司の考えや意見、アドバイスを頂き、会話は終了です。

では、その上司のアドバイスを受け入れて実行に移すか、というと、これは微妙で、やるときもあるけど、やらないこともある。 なぜならば、自分が考えて、自分が心から「こうしよう!」と思ったことではない場合が多いから。

部下の話を徹底的に聴き、どうしたら「今ここ」にある課題を解決できるか、上司の支援によって部下自らが考え、そして、何かの答えに至った場合、実行に移される可能性はうんと高くなります。自分で見つけた答えは、きっと自分でやりたい、できそうと思ったものだからです。

おばは、多くの患者がそうしているのと同じように、自分も痛む左手を血圧計に毎日入れていた。それがまた辛さを倍増させていた。 私と話しているうちに、痛いのは左手であって、右手は元気になっている。あれ?右手で血圧測ればいいんじゃないの?と自分で気づいた。

その間、私はただ聴いていて、共感していた。ただたった一つの質問。「両手が痛いの?」これだけを投げかけただけ。

上下関係、先輩と後輩。そういう間柄で、問題解決の支援をしようと思った時、「ひたすら傾聴する」「相手の気づきを促す効果的な質問をする」。これだけでも、うまくいくケースがあるのではないかと思った夕べの出来事でした。

おばには、一日も早く状況が改善し、日常生活が楽になりますように祈るばかりです。

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