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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「条件が整うのを待つ」のではなく「条件が整うように動き始める」

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先日、ある企業の部長とお話をしていたら、こんなことをおっしゃいました。(ってことはすでに書いたかもしれませんw)

「ボク、リーダーじゃないので、リーダーシップは発揮することも、発揮する必要もない、みたいなことを言う若手がいるんだけれど、じゃあ、リーダーになったらどうするんだ?と言うと、急に慌てふためくわけですね。”リーダーになってからリーダーシップを学び、発揮する”んじゃなくて、”リーダーシップを学び、発揮する”訓練・練習を続けているうちにリーダーになる”・・・なんというかなぁ、つまりね、”準備しておく”という発想が欲しいのですよ」

これ、ハゲシク首肯。首肯。首肯。

役割が人を作る、とは言うけれど、とはいえ、その役割になってからその役割で必要とされるあれこれを学び、身に着けるというのでは遅いわけですね。いや、もちろん、役割を得てからさらに修行することはできるけれど、やる人は、どういう役割でも準備しているもの。

「リーダーにしてくれたら勉強しますよ」ではいけないんですよね。「リーダーとして活躍できるよう準備しておくこと」が重要なんだとこの部長はおっしゃいました。ほんと、そうですね。


以前、びっくりするようなことを言われたことがあります。

紹介で、ある30代の方に会うこととなりました。

「ヒューマンスキル関連の人材育成に携わりたいので、田中さんのところで採用してないか? まずは会ってもらえないか?」とことでした。

来社されたのは35歳くらいの中堅というかベテラン。人材育成の講師をされてはいるのですが、IT系の研修を担当されていて、いわゆるヒューマンスキル(この場合は、コミュニケーションとかプレゼンテーションとかコーチングなどを指します)の講師は未経験とのこと。

経験者かどうかはあまり関係ないので、詳しく話を伺ってみることに。正式な面接というのではなく、あくまでも、半プライベートでお会いするような感じで。


「今、ヒューマンスキルの本でどんなものを読みましたか?」
「特に読んでいません」
「セミナーとか何か受講したことは?」
「勤務先ではそういう制度がないので、受講したことはないです」
「自腹で参加してみたものは?」
「忙しくて、それはしてないですね」
「ええっとぉぉぉ、どうしてIT講師からヒューマンスキルに?」
「息が長く活躍できるかなと思って」
「ふむ・・・・。で、今、そのための勉強はしていないと?」
「ええ、御社では研修を受けさせてくれるんですよね。いろいろ教えてもらえると思っているので、勉強は一生懸命します」
「中途採用といっても、明日から講師として登壇するってことはもちろんなくて、1か月とか2か月の準備というか勉強時間は確保しますけれども」
「そういう機会をもらえるなら大丈夫です」
「あの、よろしいですか? 一つアドバイスを差し上げたいのですが、本気でヒューマンスキルの人材育成に携わりたいなら、まず、何かの本を読む、好きな著者を見つけて徹底的に読む、その人のセミナーなどに参加してみる、など、動き出してみてはいかがでしょう? 本当に好きなのか、本当にその道を行きたいのか明確になったら、またお目にかかりませんか?」
「あ、そうですか・・・」

・・・「IT技術」を極めるよりは「ヒューマンスキル」の方が簡単、自分でもできる、と思われて、応募してくる方はいつでもいらっしゃいます。

それにしても、これほど何も「準備」なく、「やってみたい」と来られたのは初めてだったので、ちとびっくりしました。

キャリア論の一つに「計画された偶発性理論」というのがあります。「キャリアの80%は偶然の出来事に左右されている」というもの。ただし、これは、ただ手をこまねいて、というか、口を開けて餌が放り込まれるのを待つというのではなく、「計画された」と頭につくように、「偶然を引き起こすための行動を自分がすでに起こしている」ことが大事なんですよね。

たとえば、この応募してきた女性の場合、「これだけの本を読み、これだけの勉強をしてきて、私なりにこんな風に考えているんだ」がまとまっている状態で、さらに、その時、私の勤務先が人材を募集していたら、「採用!」となったかも知れません。

が、「勉強は入ってからします」(←これ相当極端な例だと思いますけれど)では「偶然」自体が起こらないんですよね。

よく「条件が整うのを待つ」タイプの人がいますけれど、「条件を整うように動く」人のほうが、あれこれを自分に引き寄せることができると思います。

私は最近、人とサシで飲む時は(もともと集団の宴会は苦手で、サシ呑みが多いのですが)、相手の方のキャリアというか人生を伺うことが増えました。人の人生ってとても面白いのです。学べることも多々ありますし。ほんと、人に歴史ありで。

どなたのキャリアを伺っても、人生の転機の前に必ず、ご自分がことを起こしているんです。

「誰かに会いに行った」
「勉強をし始めた」
「あるセミナーに参加した」
「文章を書き始めた」
「ブログをつづった」
「Facebookでつながってみた」
「ある道具を買って使い始めた」

など、何かしている。

「条件が整うのを待つ」のではなく、「条件が整うように動きはじめる」。

そこ、「何かをなしたい」と言うときに大切なポイントだと思うのです。

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