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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「ちょっとググればわかるのに」と言っていいのかな?ふと。

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ずいぶん前の話ですが、「メールにあった単語がわからない。それ、どういう意味ですか?」と返信してきた人に対して、「まったく、そんなのググってみたら、すぐわかるのに、調べもしないでなんでも尋ねるってどーなの?」と憤慨している人がいました。

確かに、あるワードを入力して検索すれば、山ほどの解説が出てきて、一発で「あ、そういう意味か」とわかるといえばわかる。

それを怠り、「どーゆう意味ですか?」と尋ね、相手に解説を求めていたら、相手は再度メールを返信するなり、口頭で説明するなりに時間を取られ、「それは他力本願だよ」と言われたらそうかも知れません。

ただ、このエピソードがなぜか長いこと妙に頭にひっかかっていました。

「わからないことがあったら、ググってみればいいのに」というのが、すべてにおいて正しい学び方だろうか、と。

この場合、「インターネットに書いてあることが必ずしも正確なわけではない」という部分にフォーカスしたいのではなく、「ギモンが湧いた時、相談する相手が”Google先生”でいいのだろうか?」という点でひっかかったのです。

というのは、OJTの支援を10年近く行ってきて、こういう声を聴くからです。

「新人君がいつまでも自席でうんうん悩んでいて、考えて、悩んでもわからないんだから、もっと質問にくればいいのに」
「社内用語なのに、ググってみているんだよ、載ってるわけないのに(笑)」

たしかに、30分悩もうが1時間考えようがわからないなら訊きに来ればいい。社内用語がインターネットに載っていないこともままある。
でも、なぜ、訊きにいかないのだろう?

新入社員はこんな風にも言われているのです。

「少しは自分で考えろ」
「自分で調べてみたの?」

・・・・

さあ、ここがムズカシイのですね。

「調べろ」「考えろ」と言われても、何をどう調べたらよいかわからないのが新入社員です。どのマニュアルを見ればいいのかも、そのマニュアルがどこにあるのかもわからない。

しょうがないので、学生時代からお世話になっていたGoogle先生に尋ねてみる。(グーグル先生というのは、あくまでも一例です。他の検索エンジンでもOK)

先輩に時間を取らせたら悪いし、とか、質問すると先輩が迷惑そうな顔をしたら怖いし、とか、色んな思いがぐるぐる頭を駆け巡り、まずは、検索してみる、という気持ちは十分にわかります。ネットに存在しない情報であっても、とりあえず、検索、けんさく、ケンサク。

見つけられることもあれば、見つけられないこともある。
わかることもあれば、わからないこともある。
でも、とにかく、まずは、ネットに尋ねてみるのです。

それでもわからない時、自席で悶々と悩んだり、途方に暮れたりする。

先輩は、そこを見て、「わからない時でも全然質問に来ないよなあ。あんなに考えても時間が無駄なだけなのに・・・」「こっちが声をかけなくても、わからないなら自分から質問に来てよ」と苦言を呈する。

新入社員は、「えー、どっちにすれば・・・。調べるべき?質問すべき?」この判断がつかない。だからとりあえず、ググっていたりもするのですが。


・・・

「ちょっとググればわかるのに」というのは、「オレに訊かずに、まずはネットに訊け」ということでもあり、そのことがただでさえ減っている「職場での対話」を減らしているのではないかとふと思いました。

インターネットで調べる、がまだ主流ではなかった頃、職場では、「わからなかったら、先輩に尋ねる」という行為はもうちょっと大目に見てもらっていたように思います。

私も、DECに入社した新人時代、OpenVMSというOSの講師をしていましたが、英語の分厚いマニュアルが何十冊とあるのを茫然と眺め、「どのマニュアルを当たればよいのでしょう?」とよく質問していました。そこから先は自分で調べますが、たいてい理解できないので、また、そのマニュアルを持って先輩の席にいき、話をする。教えていただく。そんな風にして、ちょっとずつ技術的なことを自分の中に取り込んでいった記憶があります。技術の話から発展し、色んなことを話し、学んだことも多々あります。

教え育てる場面に「対話」の存在は必然だったのです。

「ちょっとググればわかるのに」と言ってしまうことで、そういう対話の機会を断ち切っている可能性があります。

本当は対話の中で、ググっただけではわからない周辺情報や、先輩との対話で得られる、もっと無形の何か(考え方とか価値観とか)を手にする機会を後輩は逸しているのかもしれません。

直接の対話は、時間は取られるけれど、「大人の学び」に決して無駄なことではないのですよね。

ただ、これ、本当に難しい。

「なんでもかんでも、調べずに考えもせずに、全部訊こうとするなー」とも、「時間ももったいないし、いつまでも考えてないで、先輩をうまく利用しなよ」とも言える。その間のどこに線引きするの?と言われたら、「ケースバイケース」としか答えようがなかったりします。

効率と効果。

さらに、効果の中には、目に見える効果(たとえば、単語の意味を調べて理解するだけ)と目に見えない、じわじわくる効果(たとえば、その単語をどう使うのか、その単語が仕事とどう関係するか、それにまつわる考え方、価値観など)があるのだと思います。

若手を育てる時、効率と目に見える効果だけにフォーカスするのではなく、「じわじわくる効果」も見逃してはならないのですよね。それには、直接の対話、大事だと思うのです。

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