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ソフトウェア製品開発現場の視点

オフィスワーカーを助けるシステムへの回帰

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約10年前に WWW (World Wide Web) が市民権を得て以来、ソフトウェアの Web 化の流れは止まることがなかった。ブラウザーが PC に無償で入るようになったことが Internet の普及に拍車をかけて、あっという間に世界中を席巻し、オフィス業務にまで進出してくるようになった。

オフィスの Intranet 化の最大の推進力は、最初から個人の PC にインストールされているブラウザを使うことによる、業務で使うソフトウェアの配布や管理のしやすさであり、また社内ポータルなどによって、社内の情報を情報発信者の論理で伝達する仕組みを構築することであった。しかし、オフィスの Intranet 化が進んでいく中で、オフィスワーカーの生産性についての議論は消え去ってしまった。

社内システム運用のコスト削減という目的自体は正しいが、それによって、どう見ても使いにくい Web 上のアプリケーションを社内のオフィスワーカーに使わせることによる生産性の低下は、残念ながら無視されてきた。ブラウザを間違って閉じてしまったために、それまでの作業が無駄になった経験がある人も多いことと思う。それまでの PC 上のアプリケーションならば、編集中にアプリケーションを終了するボタンが押されたら警告を出すことくらい当然だったが、Web のアプリケーションはブラウザに支配されているために、そういった基本的なフェイルセーフさえもなくなっている。

こういった問題に対応して、Web 上でも比較的高機能な使いやすさを提供するアプリケーションが出てきたのは、非常にうれしい。AJAX などの技術によって、編集途中の状態を自動的に保存するソフトウェアも出てきている。

しかし、やはり今後の流れは Rich Client であると思う。Web 技術で作られた仕組みは、表面上の進歩はすばらしいが、開発側に大きな負担になるなどの問題も残されている。Rich Client にもいろいろな種類があるが、どれもソフトウェアの配布の問題や、プラットフォームの違いの問題を解決した上で、ユーザに優しい機能が提供されるようになってきている。

Web 技術の高機能化は、今後も進み、個人レベルで使う場合などには非常に有効であるが、企業内ではオフィスワーカーの生産性向上も考慮に入れたシステムが、Rich Client を中心に構築されていくのではないかと思う。ソフトウェア製品を作る側としても、Rich Client には注目している。

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