オルタナティブ・ブログ > あなたが持つカウンセリングのイメージは間違っている!! …可能性が高いですよ >

カウンセリングによくある誤解や質問、また、カウンセリングとはどういうものなのかなどについて執筆します。カウンセリングルームと契約したい、または相談室を作りたいと考えている、もしくは既に契約しているけど実はよく分かっていない企業の方だけでなく、一般の方にも幅広く見ていただけたら幸いです。

「『(不健康な感情)に対処する○つの方法』とか知ってたら、カウンセリングとか要らないんじゃない?」

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 要らないと思います・・・と、今回の表題では書けません。
 それは一体、なぜでしょう?

 表題の『(不健康な感情)に対処する○つの方法』。
 多くの場合、

『怒りに対処する9つの方法』

 ・・・のように書かれていると思います。
 内容は、自分の体験から得たもの、もしくは(広義の)認知行動療法という心理療法の技法を特定の感情に対して当てはめ、一般化、ルール化したものが多いのではないでしょうか?

 明文化されたルールは理解しやすく、「なるほど、こうすればいいんだ!」と大いに共感できることでしょう。
 複数のルールがあることも、様々な場面に対応可能なように思えます。
 また、いくつかのルールに首をかしげることがあったとしても、その他の項目には賛同できる自分に合ったものものがあるかもしれません。

 どうやら特に問題はないようですし心理療法も使用しているのに、なぜそれでもカウンセリングは必要なのでしょうか?

 まず考えていただきたいのが、不健康な感情というのは一体どのくらいあるのかということです。
 挙げていくと、

  • 激怒
  • 不安
  • (健康な範囲を逸脱した)酷い悲しみ
  • うつ
  • 自己嫌悪

 ・・・など。

 上に挙げている感情は代表的な例で、上記以外にも不健康な感情は存在します。 その不健康な感情全て、カウンセリングの対象となり得るものです。

 1つの感情につき9つのルールとしても、上に挙げただけで45のルールになります。
 全ての不健康な感情をルール化したとして、果たしてどの程度実践できるでしょう?

 次に、このルールは少なすぎても多すぎても、読者の共感を得られません。

 たとえば表題が、『怒りに対処する、たった1つの方法』だったとしたら・・・。 恐らくは、「こういう場合は対処できないんじゃない?」とか考えてしまうのではないでしょうか?

 逆に、『怒りに対処する20の方法』では、なかなか読者に覚えてもらえないでしょう。

 つまり、このルールの数は、実際に起きる可能性のある事象の数ではなく、読者に上手く読んでもらうための数と言い換えることが出来ます。 ルール全てを覚えて実践したからといって、その感情を抱えたときの全てに対処できるとは限らないのです。
 さらに、もしルールで対応できる類の事象が起きたとしても、そのルールを実践したからといって全てが全て上手く行くと限ったわけでもありません

 また、これらのルールを覚えるときに起こりやすく、注意しなければいけないのが「認知のゆがみ」です。

 上でも述べたように、『(不健康な感情)に対処する○つの方法』で全てに対処出来るわけではありません。
「ルールを過度に一般化し、事象に当てはまりきらないルールを適用してしまう」「ルールを適用したら上手く対処できなければならない、と強く思い込む」などしてしまうと、今度は別の問題が起こってしまいます。

 結局、何をどうしたところで万能なルールなどはなく、ルールを実践さえすればカウンセラーが必要ないというおもしろ結論に至ることもないのです。 そもそも、カウンセリングの適用範囲が感情問題のみに限定されている訳でもありませんし・・・。

 ただ、勘違いしないで頂きたいのは、『(不健康な感情)に対処する○つの方法』を覚えていても全く以って無駄だと言っているわけではないということです。 普段から「怒りやすいかな?」などと思っている人が、ちょっと気をつけてみようと覚えて実践する分には、なんら問題ないと思いますし、きわめて多くの場合に有効な実践的ルールが存在するかもしれません。

 忘れて欲しくないのは、全ての事象に対応できるわけではないし、不健康な感情を持ったら、必ずルールを適用しなければならないなどとはどこにも書かれてはいないということです。

『(不健康な感情)に対処する○つの方法』を実践しているのに、なんだか上手く行っていない、または、ルールを当てはめるだけではなく、もっと細かく話を聞いて欲しい・・・と思ったら、カウンセリングを受けるなり、他の人に相談するなりしてみる方が良いのではないでしょうか?

 ・・・勿論、カウンセリングも万能ではありませんが。

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