企業は早く「ソーシャルファースト」と「ファストWeb」の流れに乗るべきだ!
僕は最近二つのコンセプトを重要視している。
それは「ソーシャルファースト(Social First)」と「ファストWeb(FastWeb)」だ。
まず前者を説明する。
ソーシャルファーストとは、モバイルファーストと語義は近い。モバイルファーストとは、単にスマートフォンやタブレットのWebサイトから作っていくという順番の話ではなく、いまやアプリだろうがブラウザー経由だろうが消費者のネット利用がモバイルに完全にシフトしていることを念頭に置いて、デザインもコンテンツも利用シーンもまずモバイルを中心に設計し、そのうえでPCなど他のデバイスへと対応させていく考え方だ。
同じように、ソーシャルファーストとは、2010年代の消費者がモバイルを中心に最も利用しているのがソーシャルメディアであり、ソーシャルメディアからの影響を受けることでトラフィックの発生や実際の消費行動を起こしていることを理解したうえで、サービスやプロダクトの設計を行なうという意味になる。つまり、ソーシャルファーストとは前提としてモバイルファーストを包含していく考え方だ。
PCのインターネット利用をモバイルのインターネット利用が追い越している現状であるのに、大企業であってもいまだに自社のWebサイト群をスマートフォンに対応させていない企業は多い。いや、大企業どころか、モバイルやソーシャルを事業としているようなベンチャー企業でさえ、そうだから僕からすれば失笑ものだ。
オウンドメディアに対してスマートフォンやタブレットに最適化されたデザインやコンテンツを考え、さらに、来訪者のほとんどがソーシャルメディアの利用者であることを意識することで、オウンドメディア自体をソーシャル化することが重要なのだ。このことを無視してはならない。
次のコンセプトが「ファストWeb」だ。
ファストWebとは、ファストフード、ファストファッションと同じ文脈だ。ファスト=Fastとは速い、という意味であることは言うまでもない。ファストフードとは文字通り「注文したらすぐに出てきて、比較的安い食事や食品のこと」を指す。ファストファッションとは「最新の流行を採り入れながら低価格に抑えた衣料品を、短いサイクルで世界的に大量生産・販売するファッションブランドやその業態」のことだ。ファストファッションはファストフードから派生してできた後付けの用語だが、意味としては本家を凌駕している。つまり、安かろう悪かろうの商品が安いのは当たり前だが、ファストファッションではそれなりの品質の商品ながら、ラグジュアリーブランドやハイファッションの最先端のトレンドをいち早くキャッチし、流行がはじまると同時に市場に商品を出し、流行が終わる前に在庫を売り切るというビジネスモデルになっている。ファストフードが意味するところは店頭での商品の回転速度に重きを置いているのに対して、ファストファッションでは数ヶ月単位での商品の回転速度が重要だ。
ターゲット消費者である若者(10-20代)は、ファッション雑誌で見るようなスタイルの服飾を安く買えるので飛びつく。どうせそうした流行の服は流行が終われば着なくなるから、ひとシーズン保つ品質であればいい、という割り切りがある。
僕が提唱したいファストWebとは、ファストファッション企業達が行なっているビジネスモデルに近い。Webを軸としたさまざまなネットサービスにもトレンドがあり、はやり廃りがある。例えばスマートフォン全盛の2013年にあっては、UIはカードデザイン(画像やサムネイルやテキストなどの情報をフラットなカード型の領域で表現。Pinterestや最近のFacebookが好例)とフラットデザイン(iOS7でも採用された凹凸を廃した陰影や奥行きのないシンプルで二次元的なデザイン)が台頭してきている。同時にマルチデバイス対応のため、レスポンシブWebデザイン(PC、タブレット、スマートフォンなど、あらゆるデバイスに最適化したWebサイトを、単一のHTMLで実現する制作手法)も急速に普及しつつある。あるいは、モバイルの世界ではWebサイトよりも、ネイティブアプリのほうが利用頻度は遥かに高くなっているから、極力サービスのアプリ化は必要になっている。
こうしたトレンドをいち早く取り入れて、自社のサービスやサイトに取り入れていくには、いちいち巨額の予算を使ってスクラッチで作っていてはきりがない。だから、SaaSでこうしたサイトやサービスをOEMで提供してくれるような企業とタイアップしたほうがよい。つまり、それらの企業のことを僕はファストWeb企業と呼ぶのだ。
企業のWebサイトやネットサービスにも流行があり、その流行を無視して大きな予算を割いてサイト構築やアプリ制作を行なっても、すぐに陳腐化する。だからできるだけ低価格でこうしたサービスを提供してくれる企業と組むことで、速度を上げていくのである。
例えば、最近話題になっているBASEやStores.jpなどの無料もしくは廉価版ECのOEMサービスは、ECという機能を低価格で提供するファストWeb企業だと僕は考える。
また、最近上場したWixや、Weebly、Strikinglyなどの簡易Webサイトの構築サービスをクラウドで提供する企業たちもまた、ファストWeb企業だ。もちろんコミュニティサイトを簡単に構築するためのサービスを提供するリボルバーはコミュニティサイトのファストWeb企業である。
このように、ソーシャルファーストとファストWebの二つのコンセプトがいまキテいることを理解し、それらをうまく活用することで、大企業はもちろん中小企業も、予算を抑えつつもネットのトラフィックを最大化し、O2OにせよECにせよ、自社のビジネスチャンスをより大きくすることができると考えるのである。