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モバイルシフトとソーシャル化によって変化するネットの世界を、読者と一緒に探検するBlogです。

サービス・プロダクトにおけるUI/UXに加える”遊び”について

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実は少し前に、友人のポルシェ911を、わずかな時間ではあるが、軽く運転させてもらう機会があった。車好きなら(特にスポーツカー好きなら)911は、一つの頂点の車であり、憧れの車の一つだろう。今回初めて公道で実車に触れる機会を得たわけだが、その剛性というか、まるでカラダにぴったりと仕立てられた鎧を着るような感覚に驚かされた。

いわゆるスポーツカーを運転した経験はいくらかあるが、どちらかというとライトウェイトスポーツカーだったり、ラグジュアリーカーに近いものだったのかもしれない。何が違うかと言えば乗った瞬間に分かるほどのもので、上述のようにものすごく硬いものを身にまとったような感覚がいきなり訪れるのが911だとすれば、僕のその他の経験ではもっと緩いと言うか、柔らかい。ステアリングやアクセル類の重さも、911は電子制御によるアシストがあまりなく、自分の力で操作する感じ。

他の車が、多少ラフな扱いをしても車側が吸収して、勝手にずれを修正してくれるとすれば、911はドライバーの操作をそのまま走りに反映するので、上手な人ならとても速いが、下手に運転すれば事故につながりかねないというリスクがあるように感じた。つまり、運転者の操作がダイレクトに車に伝わる。

まあ、実際にはそんなにシビアなものではなく、普通に運転すれば、汎用的な乗用車と変わらない安全なドライブが可能なことは言うまでもないのだが、設計思想として、ゆったり快適なドライブよりも、速く走ることを優先して造ってあるという感覚が瞬時にして分かる作りに、感動したのだ。

逆に言えば、普通の車というのは、適当なハンドル操作やラフなアクセルワークに対して、車が過度に敏感な挙動をしないように、マージンというかだいぶ多くの”遊び”を入れているのだなと改めて思う。その遊びが、多少の操作ミスを吸収する。鈍感であるからこそ、平均的な運転技術のドライバーに対して安全なドライブを提供できているのだろう。

僕はクリエイターとして、ついつい911のようにシビアで、どこまでの使う人のニーズの進化についていけるような高機能なサービス、製品を造りたがる癖がある。僕だけでなく、そういう人は多いのではないだろうか?
しかし、911が選ばれた人に乗られてこそ真価をみせるように、多くの一般的なユーザーにとってみれば、どんなことをしても取り返しのつかなくならないような、緩めのサービスのほうが使いやすいということかもしれないのだ。バッファやマージン、つまり”遊び”が適度にあることが、とっつきやすさを作り出す。
911の素晴らしさを垣間みたがゆえに、逆に自分たちのサービスには、剛性を少し緩めて、柔らかさや遊びをいれていかなければならないなという思いを強くしたのだ。

その意味で、とてもよい経験をいただいた夏だったかもしれない。その経験を残しておくための雑感・雑記である。

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