スタートアップに必要なモノ-1 : オフィス
オフィスは、店舗ではないので、そこにあまりお金をかけても直接お金を生み出すようなことはありません。だから、スタートアップとしては、できるだけ安くオフィスを借りる努力が必要だし、質素な内装を心がけることに越したことはありません。また、クラウド時代にあって、社員を自宅勤務にしてオンラインコラボレーションによる作業をさせることも十分可能な状況です。起業家の渡部薫氏が創業したジークラウドは iPhoneやAndroidのアプリ開発と、開発スキルの教育支援サービスを行っているベンチャーですが、オフィスもないし、正社員もいないのですが、全国各地に点在する契約パートナーをネットワーク化しているクラウド型企業です。このような企業の躍進をみれば、わざわざオフィスを構えたり、内装に凝る必要がどこにあるのか、という気分も理解できます。
とはいえ、前述のように、社員のモチベーションを高めたり、訪問してくれる顧客を快適にもてなすための最低限の工夫は必要です。自宅勤務をしようにも、常に在宅することに周囲からの視線や家族からの不審の視線に堪え難くなる人もいるといいます。技術は進化しても、社会常識が新しい就業形態を認知するまでには、まだ時間がかかるというところです。
実際、 GoogleやFacebookのようにクラウド時代を牽引する企業であっても、そのオフィスは相当にお金がかかっています。信じられないほど巨大な敷地にカラフルな内装と豪華なリクリエーション設備を備えた自社ビルを建てているのです。最近では、Facebookがカリフォルニア州メンロパーク市の東京ドーム5個分という広大な敷地に、新社屋を建てました。
Appleもまた、2015年完成する計画で、クパチーノに70万平方メートルの土地を購入し、総建築面積26万平方メートルもの広さを誇る新社屋を建設することになっています。その外観はまるでUFOのようです。世界でも最先端のテクノロジー企業たちがオフィスという器にそれだけこだわるからには、やはり社員のモチベーションやロイヤルティーを高め、生産効率を上げるとメリットを考慮してのことでしょう。
ちなみに、モディファイは2012年2月から、港区西麻布にオフィスを移しました。Yahoo! JAPANをはじめ、取引先のオフィスの多くが周辺にあるので、徒歩で行けるというのがメリットです。
実際、多くのネットベンチャーは渋谷か六本木近辺にオフィスを構えることが多く(GREE、Googleは六本木ヒルズ、Yahoo!は六本木ミッドタウン、mixiとGrouponは渋谷の同じビルにいます)、その例にならったとも言えます。オフィスの所在地にブランド価値を求めることはナンセンスだとは思いますが、逆に期待されるイメージを守るということもスタートアップには重要に思います。東大出身者の多いチームラボは本郷にオフィスを置くことで、東大ゆかりのベンチャーの印象を保っていますし、サイバーエージェントも頑に渋谷に拠点を置き続けています。
スタートアップにとっては、小さなオフィスであっても、良い場所におくことはメリットが多いと思います。顧客にアクセスしやすいということは交通費をセーブできますし、社員にとっても、通勤しやすいほうがよいでしょう。利便性のよい場所であれば、社員の採用計画にも役立つというものです。
このように都心にオフィスを持つことは、営業上のアクセスがしやすいという利点もありますが、これとは逆に、鎌倉に拠点を置くカヤックのようなベンチャーもあります。いずれにしてもロケーションをどこにおくかは自社のカルチャーの表現方法の一つとして慎重に検討するべきことです。求職者側も、働きたい場所、というものがあるわけですから。