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資生堂のFOG BARにみるマーケティング戦略について

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最近僕は整髪料としてFOGBARを使っていて、それは小栗旬になりたいからでも三浦春馬になりたいからでもないんだけど(なれるもんならなりたいね^^)、まずは新しモノ好きで新製品はとりあえず試すという性格から購入したんだ。
髪にスプレーしたあとで軽く手で揉み込まなくてはならないので、ワックス同様結局手を洗うことになるんだけど、石鹸をつけなくても軽く洗えば落ちるので便利。だからいまのところ継続して使っている。

いまが旬の若手俳優を四人もCMに起用しているだけあって、メーカーである資生堂が相当にお金をかけてプロモーションしていることは分かる。それだけのコストをかけて何をしようとしているかというと、それは「さよならWAX」という彼らのブランドメッセージから分かる。つまり、ワックス市場からシェアを刈り取る戦法なわけだ。

残念ながらワックス市場がどのくらいのものなのかは知らないが、整髪料市場全体の中で、多分一番でかい市場規模であることは間違いないと思う。少なくとも若者向けにはそうだろう。
さらに、僕の推測があっているのであれば、ワックス市場のトップシェアはマンダム(こっちはキムタクをCMに起用)だ。そして資生堂は二位なのだ、と僕は思う。
敢えて数字をチェックしないままに言うのは、TV CMを中心とした資生堂のFOGBARへのプロモーションコストの大規模投入と、それに対するマンダムの動きから、両者あるいは整髪料市場におけるマーケットシェア争いの、マーケティングの攻防から、それぞれの企業のポジショニングを僕が言い当ててみたいという理由からだ。


僕がそう考える根拠は、この両者の動きが、僕たちが『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ)で著しているマーケティング戦略の基本通りに資生堂とマンダムが動いているからだ。
具体的に言うと、資生堂のFOGBARは僕たちが指摘する、二番手、三番手企業が市場リーダーのシェアを切り取りにかかる「直接対決戦」(CHAPTER-4 P110)そのものであり、マンダムの動きは逆に市場リーダーの戦略である「防衛戦」(CHAPTER-3 P96)そのものだからだ。


僕の推測では、
  • 資生堂はマンダムにワックス市場のシェアで遅れを取っている。
  • マンダムはワックス市場の市場リーダー。
  • 資生堂はワックス市場そのものを”あきらめて”、その市場自体を弱めてしまい相手の強みを削る作戦にでた。
  • それが「さよならWAX」というメッセージである。
  • つまりFOGBARは乱立する整髪料市場の区分(ヘアクリーム、ヘアリキッド、ヘアスプレー、ヘアジェル等)の一つを新たに提案しているが、それはワックスの代替品としてのポジショニングである。
  • 整髪料は機能や目的によって使い分けることがあるが、FOGBARはワックスとの併用ではなく、ワックスの代わりに使うものであるとしている。
  • 従って、FOGBARが売れればワックスの売上は落ちる。
  • 資生堂は自社のワックスの売上も同時に落ちるかもしれないが、マンダムのシェアを落とせば相対的に勝ちにつながると考えている

となる。

対してマンダムは、即座に反応した。市場リーダーが採択すべき「防衛戦」では、剣呑な言い方だが、やられたらやりかえさなくてはならない。対抗商品が価格を下げてきたならば、市場リーダーは対抗して値下げしなくてはならないし(トヨタはインサイトの登場時、なりふりかまわずプリウスの値下げを敢行した。これは戦略としては正しい)、自社のトップシェア商品に対抗する商品が出たときには即座に対抗商品を出さねばならない。
そう、マンダムはこの理屈を理解しているから、すぐにギャツビーミストクールモーションという、ほぼFOGBARと同じカテゴリーの商品を売り出したのだ。

マンダム側としてはワックスの代わり、というメッセージングはしない。ワックスも売れてほしいからだ。ギャツビーミストクールモーションの役割はFOGBARの侵攻を止める事だけなのである。


このように、マーケティングの実際を見ると、企業はそのポジショニングに従った基本戦略を踏襲していることが分かる。

競合商品のない市場を作り、顧客の新しいニーズを作り上げる事は確かに最上のマーケティングの在り方ではある。しかし、現実にはその市場が素晴らしいものだとすれば、即座に競合企業が競合商品をひっさげて参入してくる。
つまり競合は、ほぼ不可避であり、常にそれに備えなくてはならないのだ。

競合商品のない市場に新たな商品を持ち込むための作戦を、僕たちは「革命戦」と呼んでいる(CHAPTER-6 P142)。
大手企業の参入が少ない小さな市場(セグメント)にこもるニッチ戦略を僕たちは「ゲリラ戦」と呼ぶ(CHARTER-5 P122)。
革命戦がうまくいけば、市場は大きくなる。大きくなった市場には必ず競合相手が参入してくる。そのときには「防衛戦」や「直接対決戦」の考え方が必要になる。

ソーシャルメディアマーケティングの時代が叫ばれており、僕たちもそれを書名に関した書籍を刊行しているが、マーケティングは企業の事業推進上の戦略であり、基本的な考え方は不変だ。ソーシャルメディアマーケティングとは、狭義にはソーシャルメディアを使ったマーケティングだが、広義にはソーシャルメディアの存在を十分に意識したマーケティングのことだと考える。


グランドデザイン&カンパニーの小川社長とのユニット「オガワカズヒロ」では、こうした認識に基づいた、企業やブランドのポジショニングに即した戦略の立案をさせていただいている。
そして、モディファイは、その戦略を低コストかつ素早く実行に移せるためのWebベースのテクノロジープラットフォームの開発と、それらのご提供をしている。


一つ一つの市場を冷静に眺めてみれば、必ず企業間には利害衝突があり、市場シェアを争っている。競争が見えない市場は、市場シェアを図るまでもない未成熟な市場あるいは非常に小さい市場のためだ(例えば生態系自体の変化が生まれないガラパゴス島は、生息地域の大きさと生態系のバランス・数が静的にフィットしたために、ああいう形で進化が止まっていた。オーストラリアも昔はそうだったが、白人(と犬)が入ってきたことによって生態系が激変した)。

その事実をふまえたマーケティング戦略。その必要性を改めて認識する必要がある、と思う。
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