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マーケティングの本質が戦争と同じであることを理解しない理由はなぜか?

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マーケティングの本質は戦争だ。それ以上に的確なメタファはない。
もちろん武力を使うことはない。ただ、国家間の実際の戦争も、基本的には経済的な利害対立の果てにある。武力行使を避けるために行う平和的な戦争こそが外交だ。逆に言えば、マーケティングによる企業間の公正な戦いは、武力衝突を避けることにもつながるのである。
(ドラマ『不毛地帯』では、太平洋戦争は石油の利権の奪い合いから起こしてしまったのであり、だからこそ商社マンに転じた主人公は油田権益の確保こそ国益につながると信じている)

戦争の比喩を嫌う理由は分かる。しかし戦争映画(例えばスターウォーズでもいい)を楽しみ、戦闘ゲームに興じるのに、なぜマーケティングが戦争と同じく競合相手との戦いに勝つための戦略と戦術であることを直視するのを嫌がるのだろうか。


多くの国際企業がマネージメントの研修に最古の軍事書である『孫子』を採用するのはなぜか。ランチェスターの法則という軍事方程式が経営手法に応用されているのはなぜか。そもそもマーケティングにおいて戦略と戦術という言葉が応用されているのはなぜか。

戦争が、対立する敵がいなければ発生しないように、市場に競合他社がいなければマーケティングを行う必要はない。商品を作り、それを売ればいい。孤絶された街に歯科医院が一件しかなければマーケティングを行う必要はないが、複数の歯科医院が存在すれば、必ず患者の奪い合いになる。(実際に国内には7万近くの歯科医院が存在し、今や深刻な競合状態が起きている)
歯科医として生き残るには、患者に選ばれることだ。技術の良し悪しよりも、患者の評判を得なければならないし、その評判をより多くの人に広めなければならない。つまり、それがマーケティングだ。いい歯科医、では足りない。他の歯科医よりもイイ、という評判が必要だ。つまり、Good ではなく Better(もちろんthe Bestが望ましいわけだが)と言わせる、比較級での評価が必要なのである。


マーケティング=「顧客との対話」であるか。答えはYesでありNoでもある。対話は方法の一つであって本質ではない。
本質的な答えは、マーケティング=「顧客に、競合他社ではなく自社を選んでもらうこと」。もっと簡単に言えば「競合他社に勝つ」ことだ。
そのために顧客と対話をしなければならないし、顧客の要望に耳を傾けなければならない。しかし、それはあくまでも本質ではなく手段なのである。


起業家であれば、少なくともビジネスプランを書いたことがある人間であれば、
・どの市場に参入するか
・競合他社はどこか
・彼らにどうやって勝つか
・勝利によって得られる利益はどのくらいか
・敗北した場合どうするか
というシミュレーションを必ず行っているはずだ。
これらはマーケティングの基本中の基本だからだ。

例えば、OSを開発する会社で起業しようと考える友人がいたら、よほどのことがない限り止めるだろう。なぜならその市場は既に成熟しており、新規参入を阻む勢力が多いからだ。マイクロソフトもAppleも、そして今ではGoogleでさえも、彼の試みを徹底して排除にかかる(独占禁止法に抵触しない範囲で)。勝てる可能性がない市場に参入するのは理屈に合わない暴挙だ。つまり、マーケティングとは、まず勝てる可能性のある市場を考えることから始まる。そこに既存の競合相手がいなければパイオニアになれるし、存在するならばどうやって勝つかを考えなければならない。マーケティングとは、そうした一連の戦略と戦術なのである。


例えば、Googleとマイクロソフトは利害衝突を起こしている。コンピューティング市場はクライアントソフトウェアからクラウドへとパワーシフトが進んでいる。マイクロソフトがコンピューティング市場での絶対的な神通力を失いつつあるのは、Googleが勢力を伸ばしているからだ。Googleのコンピューティングに対する考え方は、マイクロソフトのそれと相克するものだ。だからGoogleの力が強まればマイクロソフトは力を失う。Googleはいまや(Webを起点とした)OSを作り、(OSに頼らない)ビジネスOfficeスイートを提供している。Googleとマイクロソフトは明らかに利害衝突を起こし、戦っている。

AppleとGoogleは開戦前夜にあるかもしれない。
iPhoneとNexus Oneは明らかに利害衝突している。AndroidはオープンなOSとして、iPhone OSとの競合よりも、むしろWindows Mobile(つまりマイクロソフト)との競合にあった。しかしNexus Oneはハードウェアだ、 OSの勝負ではない。ジョブズが激高したのも無理はない。


自動車業界は、主要エネルギーが石炭から石油に変わり始めた時代の近代国家のような緊張状態にある。低燃費ディーゼルとハイブリッド(HV)の戦いはHVが勝利し、欧米メーカー各社の中にはHV開発に資金を投入するところもあるが、既に電気自動車(EV)へのシフトは時間の問題だ。だから、HVのパワートレイン(バッテリーやモーター類)自体の開発を自社開発するか、OEM供給を受けるかの選択をしなくてはならない。

サイバーエージェントはTwitterを迎撃するためにアメーバなうを投入した。
JINSが低価格眼鏡で旋風を起こせば眼鏡市場も愛眼も低価格を強調したCM展開を行って対抗する。
トヨタが子ども店長ならVWは少女報道官だ。


繰り返すが、マーケティングは、企業間の利害衝突によって起きる戦いであり、それに勝つための戦略と戦術だ。
ありとあらゆる業界で、市場で、さまざまな商品、ブランド、企業が戦っている。




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