何気ない朝。
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珍しく いつもより1時間早く部屋を出て、マンションのエレベーターに乗ると、すぐ下の階で停まり、7-8歳かと思われる少女が乗ってきた。手にはミッフィーの図柄の、黄色いビニールのバッグを提げている。こちらの様子をやや伺うようなそぶりをしたが、向き直ることはせず、所在無さげな背中を向け続けた。
1階に下りると、不意にその少女がこちらを向いて「先に降りていいですか?」と言う。
「どうぞ」と声をかけると、エレベーターを下りて、またカラダごとこちらに向き直って、一礼して「ありがとうございました」と言ったので、思わず顔をほころばしてしまった。
その後、少女は早足でマンションの外にでたが、子供の脚だから、後ろに歩く僕とあまり距離が変わらないまま、駅へと続く道を歩く。彼女はときどき足を速めてはなぜか振り向くのだが、僕をみているふうでもなく、何を気にしているのかは分からないが、とにかく数十秒ごとに後ろを向く。その度に、手にしているミッフィーのバッグがひらめいて、表の黄色と横側のオレンジが入れ替わるように光の中で踊る。
たまには朝早く家を出るのもいい。案外、愉しい光景に出会えるときもある。そう思った。
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