クリエイティブ・ディレクター論:新型BMW Z4の試乗会に行くかどうか迷いながら思うこと
いよいよ新型Z4が国内でも登場する。
現行車のオーナーである僕にも試乗しませんか、と連絡がきているのだが、もちろん買い替えることはしない(今のZ4が好きだし)。ちょっと乗ってみたいことは否定しないけど。
ところで、少し古いニュースになるが、BMWのチーフ・デザイナーであるクリス・バングルは今年の2月に退任している。後任はエイドリアン・ファン・ホーイドンという人で、バングルとは長期にわたって一緒に仕事をしているので、今後も大きな路線の変更はないかもしれない(いや、大抵は路線継承する人は少なくて、必ず自己主張で前任者のデザインを大きく変えたがるものだ)
そして今回のニューZ4はバングルのデザインではない。どこかの雑誌で流し読みした記憶ではホーイドンの直接のデザインでもなくて、担当は女性デザイナーだった気がする。
いずれにしても、僕はバングルのデザインが好きでZ4を選んだので、新しいZ4にそそられない。少なくとも、バングルの持つ鋭いエッジの効いたテイストが影を潜め、無難に、保守的にまとめた感が強いからだ。
もちろん今後のBMW全体のデザイン戦略がどう変わっていくかはこれから明確になっていくはずで、本当の評価と好き嫌いはそれからの話ではある。
・・・ここからが本題。
僕はデザインあるいはクリエイティブという分野の専門家ではないが、これまでの自分たちの製品、サービスのUIやブランディングへのディレクションは全て自分で行っている。見た目だけではなく、ネーミングやコピー、コミュニケーションプラン全体を含む。クリエイティブ・ディレクターとは、自分たちの製品をどう見せたいか、どうみられているかを常に気にして把握し続ける人のことだ。
デザインとは見た目だけの話じゃない、ネーミングや音感など、ブランドのイメージを決定づける、五感に関わる全ての情報化である。
だから製品自体のデザインはもちろん、それをどう機能させるか、どう売るか、どう広告するかまで、クリエイティブ・ディレクターは全ての事項に関わらねばならない。
従ってクリエイティブ・ディレクターという職種が本当に機能するには、経営者から一任されるか、経営者が兼任するしかない。そして、クリエイティブ・ディレクションの真の意味や価値を理解する経営者は少ないうえに、販売戦略にまで関われるクリエイターは滅多にいないという事情から、なかなか本当に機能するクリエイティブ・ディレクターは産まれないというジレンマとなる。(特に日本の大企業ではまず無理だ・・・)
ところが、世界を見渡すと、90年代後半から現代にいたるまでの十数年はクリエイティブ・ディレクターが次から次へと産まれていた(ある意味、Googleの創業者二人もそうだ)。
その中でも 僕は元グッチのトム・フォード、Appleのスティーブ・ジョブズ、そしてBMWのクリス・バングルをアイコンとして尊敬してきた。しかし、もはやトム・フォードはグッチを離れ、バングルもBMW(どころか自動車業界)を離れた。ジョブズは現在長期療養中である(順調な回復とは聞くが)。ロールモデルを失いつつあり、非常に残念である。
優れたクリエイティブ・ディレクターの手腕によって企業戦略をリードする時代は終わるのだろうか。
いや、そうではない、と思いたい。
今後、改めて、このクリエイティブ・ディレクターのあり方や機能について、少しずつ深堀していきたい。