モバイルウェブと情報共有とガングリオン
先日の1月29日、グランドデザイン&カンパニー(小川和也社長)との共催で、『モバイルビジネスラボ2009』と称したビジネスセミナーを行ったところ、多くの方々にお集りいただくことができた。内容的には手探りであり、入門編と位置づけたことで比較的簡単な、さわりの部分で終わったこともあって十分にご満足いただけたのかは分からない。
今回の我々のイベントが多少ユニークなところを上げるとすると、従来型?のケータイのサイドであるグランドデザインと、(iPhoneに代表される)PCからの流れを汲むモバイルサイドであるモディファイの共催であることだろう。
つまりテーマは、今まで隔絶されていたPCとケータイの融合としての「次世代のモバイルウェブ」を語ることだった。
今後もこのイベントを続けて、「次世代のモバイルウェブ」の認知と理解の啓蒙を行いたいと思う。
さて。本題に入る。
現在ダボス会議が行われているが、そこでFacebookのマーク・ザッカーバーグやYouTubeのチャド・ハーリーをはじめとする米国ネット業界のそうそうたるメンバーが座談会を行い、モバイルウェブのあり方について語ったという(動画参照)
(日本からの参加者がいない、というところが日本のモバイルウェブが無視されている証拠だ、とは言わない。)
かいつまんでいうと、
・モバイルウェブはインターネットの主流になりつつあり、それは世界的な潮流である
・モバイルウェブはユーザーが自分のプレゼンスをいつでもどこでも誰かとシェアできる点が、PCを遥かに超える利点だ。
・モバイルウェブは情報共有を効率的に行える。
・セキュリティやプライバシー問題は重要であるが、それよりも統一された利用プラットフォームの整備が急務だろう
という内容だ。
話している内容自体は、日本のケータイのユーザーであれば「当たり前じゃないか」「日本ははるかに進んでいる」という感想をもたれるようなものだろう。
しかし、日本のこれまでのインターネットサービスは、ケータイとPCとで隔絶されており(実際業者も分かれている場合が多いし)非常に特殊な状態にあった。そのせいもあってか、ケータイのWebは一般的に若年層向けのサービスに終始していることが多い。
ダボス会議での会話は、社会インフラとしてPCのWebがモバイル化していくことを議論している。日本と違って(妙な形に)成熟したモバイルウェブはまだなく、PCのWebがそのままモバイルのWebへと新たな進化を見せていく。それが世界の新たな潮流としてのモバイルウェブである。
僕から言わせれば、日本のケータイウェブにしがみつくのは、丁髷に帯刀を捨てたくないと言っているようなもので、世界で広がりつつある新しいモバイルウェブにいち早く最適化しないことには、海外にうって出ることは不可能になる。
ちょっと検索してみるといい。日本のケータイウェブのベンチャーの経営者達はほぼ100%海外進出の野望を口にしていることに気づくだろう。口を揃えて、日本のネットベンチャーで世界に通じるのはモバイル側だけだ、と言っているはずだ。
しかし、僕は常にそれに疑問を唱えてきた(無理だといっているわけではなく、有利であるというのは違う、と言っている)。それは日本の特殊な環境でのモバイルビジネスは通じない、という予測であり、現にいまや大きく動き始めた海外のモバイルウェブ市場は、日本のものとは違う性質のものだ。
日本のケータイビジネスが進んでいるのは間違いない、しかし、いまやその進化の方向は世界の潮流とは違う向きにあることに誰もが気づくべきなのである。軌道修正するならいましかないはずだ。
さて、余談だが、Facebookのマークがこんなことを言っている「ダボスに来る前にニューヨークにいたんですが、友だちの誕生日だったことをうっかり忘れていたのを教えてもらいました。この種の情報共有は非常に便利で、社会を効率的にするものです(Techcrunch Japaneseから引用)」
同じようなことを一つ僕も挙げておこう。
僕たちモディファイが運営しているiPhone専用マイクロメッセージングサービスのSMARTを見ていたとき、ある女性ユーザーが「腱鞘炎とガングリオンに悩んでいる」という書き込みをしていた。
ガングリオンってなに?と思った僕は、その場でそれを検索したところ、それは主に手首にできるちょっとした腫瘍のようなもので、一般には軟骨が飛び出てしまった、と表現されているような症例であることが分かった。
実は僕の右手首にもこれがある。空手の試合で強打して以来 でてしまったのだが、それをガングリオンということは知らなかった。SMARTでは気になるキーワードを(人と同じように)フォローできるので早速フォローしたところ、その女性ユーザーもガングリオンをフォローした。
同じキーワードをフォローすることで、僕とそのユーザーを関連づけるフックが発生し、あらたな人間関係も発生することになった。
これがソーシャルウェブ、マイクロメッセージングの情報共有の典型的なあり方であり、さらにこれがPCの前だけではなく、時間や場所に縛られずに発生するということに、大きな可能性を見いだすことは難しくないだろう。