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Feed の普及について

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ITに限らず、ベストの技術が結果的にデファクトになれないことは、本当によくあることだ。

古くはVHSとベータマックス。画質やテープ自体のサイズなどを比較すればベータが勝利すると思った人は多かったはずだ。あるいはインターネット・エクスプローラーとネットスケープ、WindowsとMac、Outlookのメール仕様とW3C準拠のメール仕様。
技術的に正しい、もしくは優れていたほうが勝つわけではなく、政治的な要因で決することのほうが遥かに多いのである。

別の例ではQWERTYがある。これはキーボードのQから右に並ぶ、現行の配列を指す言葉である。
現在のキーボードの配列は、タイプライターの時代から変わっていないのだが、この「QWERTY」の配列が、タイピングでの最高効率を考えて作られているかというと実は真逆。タイプのスピードを下げるために考えられた配列なのだ。
これは、昔のタイプライターが、早くキーを叩くとしょっちゅうインクリボンが絡まってしまうという故障を起こしていたため、誰かがタイプスピードをわざと落とすためにこの配列を考えだしたものだ。既にどんなに早くタイプしてもコンピューターがハングすることはないし、実際これまでに何度もいろいろなメーカーが新しいキーの配列を考案してはQWERTYに挑戦したが、結局そのままに落ち着いている。多分、キーボードに代わる入力インターフェイスが台頭するまで、QWERTYは生き続けるだろう。QWERTYはむしろ偶然の賜物であるが、優れているかどうかではなく、クリティカルマスを先にクリアしたほうが勝つ、という良い証左となっているのだ。

RSS/Atom Feedの普及については、僕自身は大きな希望を持っているが、クリティカルマスに達するまでには、さまざまな形、さまざまなメンターによる支援が必要であると思う。これはあらゆる技術や商品に共通することではあるけれど。セマンティックWeb、とまではまだ言えなくても、よりシンプルな情報伝達フォーマットしてのFeedの普及によって、個人や企業におけるコミュニケーションのあり方は大きく変わると信じている。しかし、なんらかの偶発的競合もしくは確信犯的侵攻によって(部分的であるか全体的であるかは関係なく結果として)それが阻害されないとは残念ながら言えない。

それがYahoo! Widget のようなサービスによってなのか、特定企業の独自拡張によるものなのか、それは今のところ全く分からない。むしろ、そうした存在がFeedの普及を促進するのかもしれない、とも思う、こともあるのである。

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