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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

Mooreの法則の「18ヶ月で2倍」はやはり間違い(2)

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★12/12の土曜日に発信した『Mooreの法則は「1年で2倍」であり、「18ヶ月で2倍」は間違いです』について、「ま。」さんよりコメントをいただきました。それを読み、タイトルを含め、内容に若干修正がいることがわかりました。なので、今朝はそれについて。

2009/12/12 06:17
オリジナルの論文では「1年で2倍」とあったのですが、後に2年で2倍に訂正してるそうですよ。
ftp://download.intel.com/museum/Moores_Law/Video-Transcripts/Excepts_A_Conversation_with_Gordon_Moore.pdf 

リンクをみてみると、Moore氏へのインタビューが記載されているIntel博物館の資料のPDFが出てきました。ポイントをまとめると次のようなことが書いてあります。

■1965年に出した論文がきっかけ。 “Electronic Magazine”という雑誌の35周年企画での、「次の10年に何が起きるのか」の問いから。

■当時出ていた回路に載っているトランジスターが30個、研究所にあったものが60個、そして、1959年の最初の平面トランジスターからすると、何とちょうど「1年間で2倍」になっていることに気がついた。

■それなので10年後の1975年には、6万個になっているだろうと記載した。狙いは、コストダウンが劇的に進むという発言のつもりではあったが。

■実際にその後、10年間のうち9年は、ほぼぴったりと集積度が2倍ずつに上がっていた。

■カリフォルニア工科大学のDr. Carver Meadが、これを Moore's Law と名付けた。

■1975年に、その後の実績を考えてみた。そこまでの革新的スピードに貢献していた一つの要素が無くなっていることから、今後は「2年間で2倍になる」という予測を立てた。(※さて、いったい何の要素でしょうかね。)

■実際にMoore氏が予測したものとして出したのは、「1年間で2倍」「2年間で2倍」の二つだけ。

■よく引用されている18ヶ月という数字は、インテル社に当時いた、たぶん Dave Houseという人が、「半導体の集積度が2年で2倍になっていて、半導体のスピードが速くなっていることから、コンピューターの処理速度が18ヶ月で2倍になっている」と言ったことが、誤用されているもの。

■"I never said 18 months that's the way it often gets quoted."(18ヶ月というよく引用されているような言い方は一度もしたことがない) ※少なくともMoore氏ご本人は、あまり快く思っていないニュアンスが発言から感じ取れました。

■その後の実績をみてみると、2年で2倍の集積度よりも若干良好な成績で推移してきている。

★ということでした。やはりMooreの法則を語るときにおいては、18ヶ月という数字を使ってはいけないということがクリアになりました。とても勉強になりました。ありがとうございます。

★「姫」さんのコメントから、念のために英語版のWilipediaをみてみたら、次のようにありました。やはり、「2年で2倍」というのが正しい引用なのでしょう。

"Moore's Law describes a long-term trend in the history of computing hardware, in which the number of transistors that can be placed inexpensively on an integrated circuit has doubled approximately every two years."

★ご本人も  just a lucky  guess  という表現をしていましたが、こういった歴史の転換期に思い切った予測を立てて、それが「当たる」というダイナミックさに妙な感動を覚えます。”It was just a lucky guess, I guess on my part... lucky extrapolation.” (extrapolation:外挿する推定)

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