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ビジネスモバイルITベンチャー実録【朝メール】から抜粋します

劇的変化を切望する人へ

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参考になる本があります。ビジネス構築の成功は地味な道のりをぶれずに続けることであることに納得できる本でした。

ビジョナリー・カンパニー 2
- 飛躍の法則 (単行本)
ジェームズ・C. コリンズ (著), 山岡 洋一 (翻訳)

★【朝メール】20070115より__

□□劇的な転換はゆっくり進む

「ビジョナリーカンパニー2」より引用==>

巨大で思い弾み車を思い浮かべてみよう。金属製の巨大な輪であり、水平に取り付けられていて中心には軸がある。直径は10メートルほど、厚さは60センチほど、重さは2トンほどある。この弾み車をできるだけ速く、できるだけ長期にわたって回しつづけるのが自分の仕事だと考えてみる。

必死になって推すと、弾み車が何センチか動く。動いているのかどうか、分からないほどゆっくりした回転だ。それでも押しつづけると二時間か三時間がたって、ようやく弾み車が一回転する。

押し続ける。回転が少し速くなる。力をだしつづける。ようやく二回転目が終わる。同じ方向に推し続ける。三回転、四回転、五回転、六回転。徐々に回転速度が速くなっていく。七回転、八回転。さらに押しつづける。九回転、十回転。勢いがついてくる。十一回転、十二回転、どんどん早くなる。二十回転、三十回転、五十回転、百回転。

そしてどこかで突破段階に入る。勢いが勢いを呼ぶようになり、回転はどんどん速くなる。弾み車の重さが逆に有利になる。一回転目より強い力で押しているわけではないのに、速さがどんどん増していく。どの回転もそれまでの努力によるものであり、努力の積み重ねによって加速度的に回転が速まっていく。一千回転、一万回転、十万回転になり、重量のある弾み車が飛ぶように回って、止めようがないほどの勢いになる。

ここでだれかがやってきて、こう質問したとしよう。「どんな一押しで、ここまで回転を速めたのか教えてくれないか。」

この質問には応えようがない。意味をなさない質問なのだ。一回目の押しだろうが。二回目の押しだろうか。五十回目の押しだろうか。百回目の押しだろうか。違う。どれかひとつの押しが重要だったわけではない。重要なのは、これまでのすべての押しであり、同じ方向への押しを積み重ねてきたことである。なかには強く押したときもあったかもしれないが、そのときにどれほど強く押していても、弾み車にくわえた力の全体に比べればごくごく一部にすぎない。

==(中略)==

弾み車の比喩は、飛躍に向かう動きが社内でどのように感じられたか、全体的な印象をとらえたものである。最終的な結果がどれほど劇的であろうと、飛躍は一気に達成されるものではない。たったひとつの決定的な動き、大がかりな取り組み、起死回生の技術革新、めったにない幸運、痛みを伴う大改革があったわけではない。飛躍の道は小さな努力の積み重ねによって開かれていく。一歩一歩、行動を積み重ね、決定を積み重ね、弾み車の回転を積み重ねていき、それらの積み重ねによって目覚しい業績が持続するようになる。

しかし、マスコミの報道を読むと、まったく違った結論に達するかもしれない。マスコミが取り上げるのは、弾み車が一分間に一千回転するようになってからであることが少なくない。このため、飛躍について受ける印象がまったく歪んでしまう。一夜にして変身を遂げ、一気に突破の段階に入ったかのように思える。

==(中略)==

卵があると考えてみよう。はじめはだれも興味をもたないが、ある日、殻が割れて中から雛(ひよこ)が出てくる。著名な新聞や雑誌がこの話題に飛びつき、「卵が雛に変身」「卵のおどろくべき革命」「卵の目覚しい転換」といった特集記事を掲載する。卵が一夜にして変容し、根本的な変化を遂げて雛になったかのようだ。

しかし、雛から見ればどうだろう。見え方がまったく違っている。眠ったように見える卵を世間が無視している間に、雛は少しずつ大きくなり、変化し、孵化したのである。雛の観点からは、卵を割るのは長い時間をかけてたどってきた過程をもう一歩進めたものに過ぎない。たしかに大きな一歩ではあるが、外部から眺めたときの印象とは違って、根本的な変化というわけではない。

この比喩が少々馬鹿げていることは認めよう。しかしこの比喩で、われわれの調査で得られたきわめて重要な結論が理解しやすくなるはずである。われわれは調査の課程でつねに、「決定打」や「奇跡の瞬間」を、転換の性格を示すものとして探し求めてきた。インタビューでは、それを明らかにするよう強く求めることすらしてきた。ところが。。

==(中略)==

こうして、徐々に事実が見えてきた。魔法の瞬間はなかったのだ。外部から眺めているものにとっては、一撃によって突破口を開いたようにみえるが、内部で転換を経験したものにとっては、印象がまったく違っている。考え抜かれた静かな課程であり、まず、将来に最高の業績を達成するために何が必要なのかを認識し、つぎに、各段階をひとつずつ順にとっていく。弾み車を一回ずつ回転させていくように。弾み車を同じ方向に、長期にわたって押しつづけていれば、いずれかならず突破の時点がくる。

<==以上引用終わり

この部分、読んでいてあまりにも実感どおりなので驚きました。

いま、e-Janではきっと五十回転/分に近づいたくらいでしょうか。一千回転、一万回転、十万回転とはなんとも想像も付かないような回転速度ですが、しゅるりしゅるりと着実に動いている感覚はすると思います。

今の五十回転を止めようとしても、そう簡単に止められるものではないことが実感できますよね。また、それを一挙に五百回転にしようとしても、物理的に無理があることも分かります。ただ、一方向に押し続けていれば必ずそこにたどりつくといういうことも実感として分かります。

弾み車を同じ方向に押し続けるというのは勇気がいります。なぜならば、「それは間違った方向なのではないだろうか」という疑問にさいなまされるからです。正しい方向なのか、間違った方向なのか、答えは無く、自分達が行きたい場所によってそれぞれ決めるしかないわけです。

多くの企業が、弾み車を押す方向を変えてしまい、ガタガタな悪循環に至る例も示されています。活動が弾み車効果に寄与している方向にあるのか、悪循環を示す方向にあるのか、いくつか箇条書きにまとめられています。

以下再び引用==>

弾み車:
・準備段階から突破段階へと進む。
  突破段階に到達するまでに、ひとつずつ段階を積み重ね、弾み車を
  一回転ずつ回転させていく。生物の成長の過程のようだと感じる。
悪循環:
・準備段階を飛ばして突破段階に進もうとする。
  大規模な企画、抜本的な変革、劇的な革命を実行し、リストラを繰り返す。
  つねに魔法の瞬間や救世主の登場を探し求める。


弾み車:
・厳しい現実を直視し、勢いをつけるために何をすべきかを明確に把握する。
悪循環:
・流行にのり、空騒ぎを起して、厳しい現実を直視しようとはしない


弾み車:
・明確な概念のもとで一貫性をもたせ、三つの円が重なる部分から決して
  離れない。(※三つの円とは、情熱をもてて、世界一になれて、明確な
  数字指標をもっていること)
悪循環:
・つねに一貫性を欠く行動をとり、前進と後退を繰り返して、三つの円の
  重なる部分から遠くさまよいでる。


弾み車:
・規律ある人材(最初に人を選ぶ)、規律ある考え、規律ある行動の順に
  進んでいく。
悪循環:
・ただちに行動を起こし、規律ある考えがなく、最初に適切な人たちを
  バスに乗せる方法もとらない。


弾み車:
・従業員の動機付けや力の結集のためにはほとんど力を使わず、弾み車の
  勢いをみて自然に適切な人たちが集まってくるようにする。
悪循環:
・従業員の動機付けや力の結集にエネルギーを使い、新しいビジョンへの
  指示を獲得しようとつとめる。


弾み車:
・実績によって説得する。
悪循環:
・将来像を売り込んで、実績の悪さを補おうとする。


弾み車:
・長期にわたって一貫性を保ち、各世代が前の世代の仕事を引き継いでいく。
  弾み車が勢いをつけていく。
悪循環:
・長期的に一貫性のない行動をとり、経営者が交代するたびに新しい進路を
  選ぶ。弾み車の回転が止まり、悪循環に陥っていく。

<==以上引用終わり

e-Janを創立してから色々と迷った理由が沢山書いてあります。猛反省させられます。

一方、なぜ、規律だとか、継続性だとか、安定性だとか、信頼性だとか、そういったことが重視するようになったのかも分かりました。これは今までは、自分たちの社会経験とか価値観とかからくる本能的直感的な選択だったのだと思います。

ただし、今後はそういった本能的直感的なことに頼っているのではなく、長期的に自分達が行きたい方向を確認する、そしてそこに向かっているのだということが論理的に理解できる必要があります。

「今押している一押しは、進もうとする方向に向かったものである」
そういった確信を持てるものにするということあります。

ところで、こういったことは、どういう場で話すといいのでしょうか?メンバー集めて企画会議をするのでしょうか。一人一人と膝を付け話すのがいいのでしょうか。お昼ごはんを食べながら雑談することなのでしょうか。それともノミュニケーションなのでしょうか。バスに乗ったメンバーで『夢を語る』場、そんな感じのものです。

何かいいアイディアありますか?そういったことも実現していきたいです。

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