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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

海の向こうではHadoop関連への投資が花盛り

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オープンデータの周辺からビッグデータの周辺に移ってきまして色々と動向を調べています。C社にいた頃はエンタープライズITが主務だったので(守秘義務等あるためブログには書けませんでしたが)、それなりに土地勘はあって何とかキャッチアップしたかなというところ。

Hadoopをキーワードに色々と見てきましたが、SparkとかYARNなどの次世代技術も頭の中に入って、色々と咀嚼をしているところです。 頭の整理のために役立ったのが、オライリーが公開している"Big Data Now"の2013年版。これは同社がデータ系専門ブログで更新してきた内容をトピック別に編集したもので、まあブログ投稿集なわけですが、キャッチアップするのにはすごく都合がいい。

Ben Loricaという人が先端技術やツールの目利きのようで、とにかくまあ詳しいです。

また、ビッグデータの先端動向の”匂い”を知るには、やはりオライリーが主催しているビッグデータ関連カンファランスの"Strata"の各イベントの講師のプレゼンPDFが役立ちます。私はテクニカル面ですべてカバーできる訳ではないので、ビジネスユーザーの目線でチェックしています。

現在ある課題は、以下のようなところでしょうか?

  • HadoopをAWSなどに展開して目的のデータに適当な分析をかけることができるのは大変な作業だが、それを自動化するツールがかなり出始めている。とは言うものの、構造化データと非構造化データを掛け合わせて適当なデータモデルを作るのは依然として大変。
  • ビジネスユーザーがビッグデータ分析がもたらす意味にまだ慣れていない。ビッグデータを経営に生かしている企業は、Google、Yahoo、Facebookなどのウェブ系企業(日本では楽天、クックパッドなど)か、クレジットカード不正利用を検知することで大きな損失を防げるクレジットカードブランド会社などの特殊な企業に限られる。
  • 今あるデータソースをどう分析すればどういう便益があるのか、見当がつかない(会社の中にデータ分析を意思決定に生かすカルチャーがない)。

まだまだ過渡期だと思います。

■TechCrunchで検索してみたHadoop関連の投資

とは言え、海の向こうを見ればすごいことになっています。 TechCrunchの英語版では、どこのスタートアップにどのVCがいくら投資したというニュースが、おそらくは細大漏らさず伝えられています。

試みに、Hadoop関連の投資の動きを検索してみたところ、たくさんの記事が出てきました。

ビッグデータのマネジメントとセキュリティを主領域とするZettasetがシリーズBラウンドで10億円を調達(2013年1月) 

YahooからのスピンオフでHadoopインフラに強いHortonworksが50億円を調達(2013年6月)

既存のRDBMS、ERPから先端的なNoSQL製品までを統一したプラットフォームに仕立て上げるTalendが40億円を調達(2013年12月) 

ビッグデータ分析をビジネスユーザー寄りで提供するDatameerが19億円を調達(2013年12月)

Yahooの元CTOがCEOを務めるHadoop as a Service企業Altiscaleがセコイヤキャピタルなどから資金を得て誕生(2014年1月) 

RDBMSおよびNoSQLのデータ分析をビジネスユーザー向けの簡易な操作で視覚化するClearStory DataがシリーズBラウンドで21億円を調達(2014年3月)。 

インテルがClouderaに740億円を投資。同社の調達額は約1,000億円に(2014年3月)。 

ビッグデータのビジネスインテリジェンスを主領域とするPlatforaが38億円を調達(2014年3月)

AWSやGoogleなどのクラウド間でアプリケーションを移動しやすくする技術のElasticBoxがシリーズAラウンドで9億円を調達(2014年4月) 

■インドにもビッグデータ関連スタートアップが

シリコンバレーのようにVCのネットワークが発達している場所(業界)では、将来において何が起こるかは、投資動向を見ていればわかります(同様の視点は、先日取り上げたKnight Foundationの投資レポートにも窺えました)。  

Hadoopの登場によって、大規模データの取り回しが破格のコストでできるようになって以来、ビジネスインテリジェンス、データベース(NoSQL)、クラウド、データ分析などの分野で、新しい商品やサービスの創出が可能になり、それが一斉に立ち上がろうとしているということが、これらの投資動向からわかります。

上述のオライリーの資料によれば、現在は不可欠であるデータサイエンティストが行っている領域の作業も、徐々に自動化、簡易化されて、非専門家が自分のデスクトップでビッグデータ分析ができるような流れになっている(全部が全部ではないでしょうけれども)とのことです。上で資金調達を行っている企業も、現在あるHadoop技術を企業ユーザーに使いやすくして事業の基盤を作ってすでに売上を上げている企業と、次世代系の方に足がかりがある企業とに分かれるようです。投資家から見れば、すでにキャッシュフローが安定して伸びが見える企業の方に惹かれるのでしょうが(Clouderaが典型)、この分野は猛烈な勢いで進化しているので何がどうなるかはわからない。投資動向が指し示しているのは、この領域全体である種の地殻変動が起こっているということで、個別企業のどこが勝者かまではわかりません。

今回インドのスタートアップも10社ぐらい確かめてみましたが、インドでもビッグデータ系の優れた企業が生まれています。元々シリコンバレーのIT企業にはインドの優秀なエンジニアや経営者が少なくなく、シリコンバレーとインド(バンガロール)とは地続きのようなところがありますから、シリコンバレーに見られるビッグデータ関連のにぎやかさは、バンガロールにも遅滞なく伝わっています。

個人的には、CRMにおけるSalesforceのような、登場時には破格の値段で誰もが驚いたサービスに近いものを、ビッグデータ領域で仕掛けてくる企業がたくさんのユーザーを獲得していくことになるだろうと思っています。

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