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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

関空リニアはゴールドコースト式のPPP国際競争入札で

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先日成立した関空・伊丹統合法に関して、大阪府の橋下知事は大阪市中心部と関空とを結ぶ「関空リニア」など高速アクセスのフィージビリティスタディ(FS)を国が行うことを条件に賛成したと伝えられています。

■梅田と関空を最短8分で結ぶリニア

関空リニアとは、橋下知事が提唱した構想で、梅田と関空の間を8〜10分で結ぶリニアモーター路線の新設計画のことです。

関空の利用者数が低迷しているのは、伊丹空港には1時間以内で移動できる京阪神の人口が約1,500万人であるのに対して、関空が約400万人に留まるというアクセスの悪さが原因だという考えがあります。大阪の中心部と関空とがリニアで10分程度で結ばれればこの問題が解消し、関空の利用者数が増えるのではないかというのが橋下知事の考え。それに基づき、関空・伊丹統合法に賛成する代わりに、リニアなど高速アクセス路線新設に関するFSを国交省で行うように要請しています。

国交省ではこの要請に対して、調査費を計上する見通しであると、昨年12月中旬の報道では伝えています。

■自治体主導のPFI案件にするメリット

これに関して、諸外国のPPPの動きを見てみると、国に頼らずとも、自治体側の意欲さえあれば、あとは官民連携手法を駆使して、どんどん進めてしまうことが可能なのではないかと考えます。

まず、計画の推進に欠かせないFSについては、この規模だと1〜2億円程度の費用だと思いますが、いったんは地方自治体の予算で実施しておいて、その後、PPP案件として競争入札にかける。その後、落札したコンソーシアムが営業権(コンセッション)獲得の見返りに支払うフィーの中にFS実費を含める、というやり方があります。これに近い手法をインドネシアが採用しています。

新路線の建設と営業に関しては、現在、国会にかけられている改正PFI法の枠組みにおいて認められる「コンセッション方式のPFI」により、新路線の保有権は自治体が保持したままで、営業権を民間事業者に譲り渡す官民連携案件とすることができます。これは、先般、落札先が決まったオーストラリアのゴールドコースト市のライトレールPPPプロジェクト、および、カリフォルニア州政府が進めている高速鉄道PPPプロジェクトがそのお手本となります。

この官民連携手法がいいのは、自治体側のコントロールでプロジェクトを推進することができるため、スケジュール面でも自治体の意向を反映させることができるからです。通例、FS+案件準備の1年を経て、競争入札案件情報公開から落札者決定まで1年、ファイナンスがまとまるまで1年、建設開始から完工まで用地買収の期間がないとして3〜5年程度。早ければ6年程度で完成するのではないでしょうか。完成を急ぐのであれば、こうした自治体主導によるコンセッション方式のPFIがいいのではないかと思います。

■国際競争入札にするメリット

さらにこれを国際的にオープンな案件とすることにより、海外の注目度も高まります。ゴールドコーストのライトレール案件も、カリフォルニア州の高速鉄道案件も、国際プレイヤーにオープンになっていることで、世界各国の経済誌などで動きが逐一報道されました。これは大阪や関空への世界の注目を集めるのに大きな効果がありそうです。開業後の利用増大に貢献する事前PRとなります。

試算によれば、関空リニアの総事業費は複線の場合で6,500億円、単線の場合で3,000億円。ゴールドコーストのライトレールが10億ドル=1,000億円とすると複線の場合で6.5倍の規模、単線の場合で3倍の規模ですから、PPP案件として巨大すぎるということはないと思います。FSでしっかりとした需要が想定されれば、十分に成立するのではないでしょうか。
また、これだけ大きなプロジェクトになると、まず間違いなく、世界各国のすべての受注可能なプレイヤーが競争入札に参画してきます。提案内容面でも経済効率面でも競争がかなり活発になるでしょう。よいリニア新線ができると思います。

日本では未だ大型インフラ案件の国際競争入札事例がありません。一方で諸外国を見ると、大型案件のオープン化が積極的に行われており、これが広い意味での経済活性化に役立っています。巨額の資金を国外から調達する道も開かれます。大きな可能性を秘めている選択肢だと思います。

通例、海外のプレイヤーに受注の道を開く場合でも、そのプロジェクトによって発生する雇用は、ホスト国が享受できるメリットとなります。ゴールドコースト案件でもカリフォルニア高速鉄道案件でも、地元の雇用創出が何名であるかということが常に強調されています。海外プレイヤーに収益機会を与えるだけではなく、地元にも種々の見返りがあるということを当初から周知徹底していけば、誤解による反対運動なども防げるでしょう。

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